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五章 2

 とはいえまずは用意するのはプレゼントだろう。


 さすがにクリスマスに何も渡さないのはまずいことくらいは俺にだってわかる。


 荻原の誕生日にはイルカのぬいぐるみとマカロンを渡した。


 だから当然、今回渡すものは別のものがいいだろう。


 ということで俺は、再びショッピングセンターにやってきた。


 ここなら、何かしらいいものが見つかるだろうという安易な考えだ。


 しかし、いったい何を渡せばいいのだろうか。


 荻原が気に入りそうなものか…。


 あいつのことだから、調理器具とか、そっち系のものは渡さないほうがいいかもしれない。


 料理系の道具は、本人にとってこだわりが強そうだからだ。


 だから、俺が安易に選ばない方がいい。


 同様な理由で、ファッション系統のものもやめといたほうがいい。


 化粧品とか服とかは、俺の美的センスで選ばない方が無難だろう。


 女性のファッションは俺にはようわからんからな…。


 というか、男性のファッションもよく理解できてないまである。


 閑話休題、色々な店を回ってみるが、なかなかいいものが見つからない。


 本屋にも立ち寄ってみた。


 荻原はそもそも本を読まなさそうなので、ここはあまり見るものがないかな、と思っていたが、意外と小物類も売ってたりして、なるほどこれも悪くないな、と思わせるものばかりだった。


 ブックカバーとか、ルーペとかもある。


 だが、あくまで俺基準で見ていいなと思えるものだった。荻原がこれで喜んでくれるかどうかはわからない。


 うーん、悩ましいな。


 そうか、文房具とかはどうだ?


 それなら、そこまで重くならないし、使い勝手もいいだろう。


 なかなかの名案だな。


 クリスマスプレゼントに文房具というのも味気ない気がするが、確実に使えるものを渡す、という考え方をすれば、ここが妥協案だと思う。


 俺はすぐさま文房具売り場に向かう。


 色々な文房具が置いてある。果たしてどれがいいだろうか。


 かなり悩んだ末、


「……まあ、無難にシャーペンとかにするか」


 俺はシャーペンコーナーを物色する。


 安いものから高いものまで色々ある。


 シャーペンの芯がクルクル回るやつもある。


 荻原はどれが好みだろうか?


 俺は悩んだ末、一つのシャーペンを手に取った。


 書きやすさを追求した、持ち手が太くなっているタイプのシャーペンだ。


 これなんかがいいだろう。色も色々あるが(色だけに)、俺は悩んだ末ピンクにした。


 これで荻原は喜んでくれるだろうか。


 まあ、シャーペンの中でも安い方ではないし、使い勝手もいいから、嬉しくないなんてことはないだろう。


 俺は商品をレジまで持っていった。


「すみません、包装してもらえますか?」


「あ、はい、大丈夫ですよ。少々お待ちくださいね」


 若い店員が慣れない手つきで包装してくれる。そんな包装でいいのか、と突っ込みたくなるが、言葉に出せない。さすがに失礼に当たりそうだからだ。


「はい、どうぞ、九百五十円になります」


「……」


 俺は少しもやもやしながらも、お金を渡した。


「ありがとうございましたー」


 俺の手のなかには、多少下手くそにラッピングされたシャーペンがある。 


 これを見て、荻原が怒り出さないことを祈るばかりだった。





 帰り道にコンビニエンスストアがあるので寄ることにした。


 俺の心臓は、今にもはち切れんばかりに鼓動している。


 俺はそそくさとソレを購入した。もちろん、お菓子や、パンに紛れ込ませている。


 万が一、だ。荻原とそういう展開になってしまったときのために買う。


 俺はコンビニを出て、家に帰ると、ソレを袋から引っ張り出した。


 オカモトの0.02ミリのスタンダードである。


 俺は買ってから激しく後悔した。なんでこんなものを買ってしまったんだろうか。


 頭を抱える。


 俺と荻原は友達同士だ。まかり間違っても、そういう展開になってはいけない。


 もし、そういう展開になったとして、どういう手順を踏めばいいのかすらわからん。


 じゃあ、なぜ買ったんだ、と自分を深く追い込みたくなる。


 思う。俺から誘うことは絶対にあり得ない。だが、荻原が誘ってきたら?


 俺は断れるのだろうか?


 俺はそれに、答えていいのだろうか。


 そういう行為は、恋人同士になってからするべきだろう。


 もちろん、そんな考えに至ること自体がおこがましいとはわかっているのだが。


「……俺は荻原と恋人になりたいのか?」


 言ってから、深く考える。自分が今言葉にした、その意味を。


 俺は、荻原と付き合いたいのか?


 俺は、荻原のことが好きなのか?


 今までは、荻原は恋愛対象にはならないと思っていた。


 だが、今はどうだ。


 荻原から触れられるたびに、ドキッとしていた自分がいた。


 もう一度、自分に問う。俺は荻原のことが好きなのか?


 …どちらかといえば、イエスである。嫌いではないし、居心地がいいとすら思っている。だが、付き合いたいのかどうか、わからない。


 むしろ、自分なんかが付き合っていいのかとすら思える。


 容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能。


 まさにパーフェクトヒロイン。


「ばかばかしい…考えるだけ無駄だ」


 荻原は引く手あまただろう。そんな彼女が、俺に見向きするはずがない。


 …………。


 いや、本当にないのか?


 だとしたら、クリスマスに予定空けといて、なんて言うだろうか。


 俺には、今の荻原の気持ちはわからない。


 だからもう一度、こうつぶやくことにした。


「考えるだけ無駄だ」

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