五章 1
「あんたさ、クリスマスとか予定あんの?」
俺の家のリビング。
荻原がいきなり聞いてきた。正直驚いた。
クリスマスか…。俺には用のないイベントだと思っていたが、まさか荻原からそんなことを聞かれるとは思っていなかった。
「いや、特に予定はないな」
俺は簡潔に答える。
「そ、そう…、だ、だったらさ、一緒に過ごさない…?」
荻原は顔を真っ赤にしてそんなことを聞いてくる。
ま、待てよ…? さすがに世間知らずな俺でもわかる。
クリスマスといえば聖夜だ。
つまり恋人同士が楽しく過ごす時期である。
だが、荻原と俺は恋人同士ではない。
ただの友達同士だ。
それなのに、荻原は俺と一緒に過ごしたいと言っている。
正直、嬉しい。だが、戸惑いもある。
なぜなら――
「それは俺でいいのか?」
「ど、どういう意味?」
「言葉通りの意味だ。クリスマスを過ごす相手が俺なんかでいいのか?
お前は友達が多いだろう。だから、てっきりそいつらと過ごすのかと思っていた」
俺と荻原もたしかに友達同士だが、そのなかでも優先順位がそんなに高いとは思わなかった。
「と、友達は、誘ったんだけど、みんな恋人とかと過ごすって言ってたから」
「……」
俺は沈黙する。明らかに荻原は嘘をついている。
きっと、誘ってすらもいないだろう。
これはバカでもわかる。
――荻原は本当に俺とクリスマスを過ごしたいのだ。
だから、変なふうにごまかしたりするのは、俺のなかでも違うと思った。
「べ、別に嫌だったら断ってくれてもいいわ。あ、あんただって予定とかあんだろうし」
俺は首を横に振る。
「いや、ない。別にクリスマスは一人で過ごそうと思っていたからな。
まさか誘ってくれるとは思わなかったから戸惑っただけだ。
俺でよければ、一緒に過ごそう」
荻原の顔がぱあっと明るくなった。
「ほ、ほんとに!」
「ああ、嘘はつかない」
言ってから、気づく。
クリスマス、というのは何日のことだろうか。
いや、クリスマスは25日なのだか、一般的にお祝いをするのは、24日である。
「なあ、おぎ…、美琴、空けておくのは25でいいのか?」
荻原はそれもそうね、という顔で思案しているようだったがやがて、
「24も25も両方空けといて」
と言った。
荻原が帰った後、俺はしばし考える。
荻原は俺とクリスマスを過ごしたいと言った。
何度も言うが、俺と彼女は恋人同士じゃない。
だから、誘われるとも思っていなかった。
それとも義理か?
彼女は、俺が誰にも誘われないだろうことを予想して、かわいそうだから俺のことを誘った、とかか?
だが、荻原の今日の表情を見る限り、それはないと思う。
「……」
俺は一人、頭を掻いた。
当然、意識しないわけではない。
俺だってそこまで常識知らずじゃない。
「まさか、な…」
俺が考えている方向に、流石に自体は進まないとは思う。
だが、万が一、ということも考えられる。
ゆっくりと窓に近づき、ぼおっと外を眺める。
コンビニの表示灯が、道路を照らしている。
(一応買っておくか…?)
再三にわたって言うが、俺と荻原は恋人同士じゃない。
だからそんなことにはならないだろう。
たぶんな…。




