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【美子と椎、シリーズ②-2】そうだ、女子力を発揮しよう 〜鶏ハムと、栄養の神の正体〜

美子のターン:女子力という名の筋肉料理


一方、アラサーにして初めてのガチ恋に突入した美子もまた、胸のキュンキュンが限界突破して布団の上をのたうち回っていた。


「あああああ! しまったあああ!!」


ガバッと起きて頭を抱える。


「あの部屋、駅近の倉庫(仮住まい)だから、女子感がマイナス100パーセントだったわ!! 自分で恋の予感の芽をへし折ってどうするのよ私!!」


いや、生カボチャをへし折った時よりはマシかもしれない。

だが、美子は焦っていた。


「……でも、椎くんはすごくストイックそうだったし、あのシンプルな空間(実質ジム)の方がウケがいいかしら? 違うわ! 次こそ女子力が試されるのよ!

女子力といえば……筋肉料理よ!!! うぉおおおお!」


興奮のあまりそのままローリング就寝した美子の精神世界にも、当然「彼」が現れる。


「はっはー! 今日も筋ト……」


「あああああああああ!!!」


「えっ!? なに?!」


絶叫しながら精神世界を転がる美子を見て、ビリー2号が完全に引いていた。声をかけても「恋の予感があああ」としか返ってこない。バグを起こしたAI精霊は、ついに上司オリビエではなく、あの「常識人の神」へ通信を繋いだ。


「助けてください、ディーン(豚汁)様!!」


「……え、また?」


「いいからいますぐ来てください!!」


「………。ナニコレ」


召喚された栄養の神・豚汁ディーンは、床を転がる美子を見て点目になった。


「いや、恋の予感とか言って転がってるんです。女子力って言うんですけど、俺は筋肉特化型の精霊なので理解不能です」


「……まぁ、彼女は女子だけどな」


「プレデターのまちがいでは?

とにかく女子力ってスマホによると、料理とか整理整頓ですよね?」


「う、うーん、たぶん……?」


「あああああ! 次の料理何にすればいいのぉおおお!!」


豚汁はため息をつき、転がる美子をがっしりと捕まえた。


「わかった、わかったから落ち着け。……筋肉が一番喜ぶ、『鶏ハム』、作るか?」


「鶏ハム!!

ぜひ!! 彼氏できそうなんです、ジムで出会って!!」


「ああ、分かった、話は聞いてやるから。美味しい鶏ハムの作り方から教えてやる!」


「ふ、ふふふ。豚汁様から直伝の鶏ハムまさしくVICTORY!」


「えー、どのへんでVICTORY??

と言うか、ディーン様料理できるんですか?」


「わし、豚汁の神じゃない。豚汁しか作ってないけど、栄養の神や。なんでも基本作れる」


「え゛!!」


誰も知らなかった衝撃の事実にビリーが固まった。驚きを隠せないまま、たくましいその体を見つめる。

………、どう贔屓目に見ても自分の知っている栄養の神とはかけ離れている。野獣とか筋肉とか、戦いとかのほうが似合っている。

わからないものだとビリーはまた一つ学びを得た。


「わかったから、美子落ち着け。そしてまず座れ、片腕立て伏せとか、あとでできるから、な。

ビリー逃げるな、お前も座れ」


「あー、はい」


こうして、二人の担当精霊たちは、担当たちが「イエスマッスル!」と叫びながら露出の高い服で筋トレし、手すら繋がないまま鉄人へと迷走していく未来を、セルフバージョンアップしたAI機能で必死にサポートしていくことになるのであった。


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