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【美子と椎、シリーズ②-1】そうだ、女子の部屋にお邪魔しよう 〜深夜2時のスクワットと、精霊の悲鳴〜

の日の夜。

それぞれのベッドの上で、二人の魂は別の意味でバルクアップ(肥大化)していた。


■ 椎のターン:深夜2時のスクワット

「ふふ……ふへへ……」


非常勤公務員の椎くん23歳はついに果たした女子のお部屋訪問に胸が一杯になってベッドに潜り込んだ。椎は、今日の出来事を思い出して、思い出し笑いを噛み殺していた。美子の部屋の匂い、あの距離感。すべてが完璧な、夢にまで見た「女の子の部屋への訪問」――。


「――って、待てよ!?」


ガタッ!!と椎は勢いよく跳ね起きた。


「僕、女子の部屋に上がったのに……手をつないでない!!」


大失態である。普通なら、買い物に行って、部屋に上がり込んだ時点でミッションは十二分にクリアしている。だが、椎の恋愛脳はすでにバグっていた。


「……それにしても、女の子の部屋って、もっとこうファッション雑誌みたいなキラキラした空間かと思ったら、意外と僕の部屋ストイックと変わらなかったな」


それもそのはず。美子は超がつくほどのお金持ちなのだが、彼を連れて行ったのは倉庫兼社宅のような、実質「ただの筋トレルーム付き仮住まい」なのだか

ら(なお、別室にはガチのトレーニング機材が鎮座している)。


「いや、でも次があるって言ってくれたし! でも、うわあああ、次ってどうやって女の子と会話すればいいんだよ!!」


悩みすぎて脳のカロリーを消費した椎の精神世界に、いつもの男がカットインしてきた。


「今日も筋肉は裏切らない!」


「ビリーーー!!

聞いてくれ!! 僕、ついに女子の家にあがったんだあああああ!!」


「お、おう……」


「こっからどうしようーーー!! 家の中、スッゲー女子のいい香りしたあああ! うぉおおおおおお!」


「お、おおう……」


叫びながら超高速スクワットを開始する椎。そのあまりの剣幕に、オリビエの脳筋アルゴリズムの具現化であるはずのビリー3号すら、完全にドン引きしていた。


ビリー3号の心中は穏やかではいられない。

……待て、この男の精神エネルギーのバースト速度、こちらの処理能力を超えている。これ以上の恋愛(脳筋)相談に対応するには――どうしたらいいんだ!


悩みすぎたビリー3号の思考が高速で動いた。そんなビリー3号の脳内に声が響く、自律型精霊AIとして、強制セルフバージョンアップを開始します。

椎の純愛(奇行)という名のサイバー攻撃により、精霊ビリーは主であるオリビエを無視し、椎の熱量に耐えうる「恋愛相談特化型OS」へと勝手に進化を遂げさせられるのだった。


ビリー3号は、素早くスマホを取り出した。


「ディーン様! 椎が壊れました。

女子がどうのこうのと叫びながら、高速スクワットしています!

助けに来てください!!」


「え?わし??」


「他に誰がいるんですか!!」


ビリー3号は速やかに助けを呼んだ。

椎はスクワットしている。


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