それは終わりと始まりの戦い3
5月20日(土)雨のち曇り
前田先生に呼び出され案内された場所は誰もいない校舎裏だった。なるほど告白するときはここを使おうと決意をしたがロリコンの俺には使うときはないだろうと自分にツッコミを入れた。
「前田っち、話って何ですか?」どうやら授業をまともに聞いてなかったから説教というわけではなさそうだ。別に何か悪いことをしたわけでもない。そうなれば…
「先生…もしかしてですけど。戦争始まるんすか?」
うちにはテレビはないがさすがに知っている。今全世界が緊迫している状態であることくらい。何人かのテロリストが日本に潜んでいることも…。
「そうだよ。戦争が始まるの。」
前田先生はここに来て初めて話した。後ろ姿で顔は見えないがおそらく笑顔ではない。いつになく真剣な顔。
「マジな口調っすね。俺に赤紙きました?国から。」
「そうね…私があなたに私に来たの。赤紙。」
どんな権限持ってる先生か知らないが、とてもあの可愛らしい先生の口調ではなかった。
「それはあなたが勝手に決めることではないのでは?」
「あなたは親もいなければ、親戚と呼べる人もいないでしょ?こちらとしては都合がいいの」
学校の先生としては失格ですね。これは…。PTA会長に報告しよう。
「先生の頼みは聞けません。痛いの嫌なので。」
「これは先生の頼みではありませんよ。国の秘密機関SOR(shadow of revolutionary)からのお願い。あなたに拒否権は存在しない。」
これは…言葉の暴力…。もし俺じゃなければここで泣くか、あっち系の趣味の方ならよだれ垂らしてる。
「その、中二病臭い国家機関は名の通り影で革命を起こすんですの?」
こんな簡単な単語の意味くらいは分かる。影の革命者 どこかのライトノベルのタイトルみたい。
「今までの歴史上一番大きな革命の中心に立てるのよ。光栄でしょ?」
前田先生は俺のほうを向いて笑顔を見せた。脅威を感じる。
「先生。はじめっから俺あんたの事正直嫌いだったけど。きっと…」
これからも嫌いだ。
あえて言わなかった。この人はただものじゃない。只野先生よりただの人じゃない。
「私の名前は前田クリア。偽名だけど。先生として本当に馬鹿そうに見えて、それなりに行動力があって、死んでも誰も悲しまないそんな人を探してたの。」
ちょっと嘘ついてるのは分かった。意外と鬼にはなれない人なんだと俺は感じた。
「悲しむ人ねぇ…いないかもねぇ。で、俺を戦争に巻き込みたいってわけですな?」
「あなたは直接テロリスト集団の中に紛れ込み、トリスタン・ドリーという男と一緒に逃げてくる。簡単な仕事。戦争に巻き込むつもりはないわ。」
「いやいや、紛れ込む時点で無理やがな。あとめちゃくちゃ戦争に巻き込まれるパターンよそれ。」ちゃんとツッコミは入れておいた。
「ユートピア内にあなたを入国される。そのあとのことは別のところで話しましょ。お友達に聞かせられるのはここまで。」
前田先生は去っていこうとした。俺が止めようとしたとき突然仁が現れた。
「意味が全く分かんないんだが、どうしてカズなんだよ!」仁がめちゃくちゃ怒ってる。
「南仁…。」先生と仁がにらみ合っている。元不良と秘密機関の人間のにらみ合いは迫力がありますなぁと感動していた。
「じゃあ、どうする?国の…世界の命運をかける人間をあなたが背負う?誰かがやらないといけないことなのよ?この仕事は。」
「国の奴らですればいいだろ?その秘密機関の奴らで。」
「情報を持ってないほうがいいの。ボロが出ないほうが好都合だから。」
なるほど。秘密機関にも信用できない奴らがいっぱいいるってわけだ。
「いいよ。俺それ引き受ける。」
仁は驚いた顔で俺のほうを向いていた。
「先生、戦争する前に止めることできんの?」
きっと誰かがこの革命的戦争で死ぬ。間違いなく。
「できるとは。断言できない。」
国のために死ねる人間ではない。日本国のために死んでいった人と同じにはなれない。
「おい…カズ?」
ただ、面白そうじゃん。命懸けの人生ほど楽しいものはない。
「冗談じゃなく、本気で、世界滅亡阻止しに行ってくるわ。仁。」
だけどさ…。
ひとりは…恐ぇわ…。
俺の足はガクガクで倒れそうなくらい震えが止まらなかった。なんというか。恐怖で震える。だけじゃない。なんかあらゆる感情がミックスされてなんというか…。
「ところてん…。食べたいね。」
仁と前田先生の顔はごみを見る顔でこちらを見ていた。




