それは終わりと始まりの戦い4
5月20日(土)曇りのち晴れ 2-A教室 16:00
カズは国の秘密機関とやらに入ることを決めた。
あれから前田先生は普通に生活をしている。ただこのことは誰にも言ってはならない。と口止めだけされた。もちろん話せば面倒なことになるだろうし、なにより命が危ない気がする。冗談には見えなかった。
前田クリアは何者なのか。俺はあれからそればかり気にしてる。
「仁。」
和輝が話しかけてきたが今は話す気になれない。
「今日は帰るわ。なんか話す気になんねぇ。」
とにかくカズから離れたかった。今はイライラしていたい。止めておきたくない。だがカズは話しかけてくる。
「せめて家まで俺の話聞きながら帰れよ。なんかいい曲に聞こえるかもしんないだろ?」
本当に馬鹿なんだこいつは。俺は無言で歩き始める。教室を出ても、校舎から出てもカズはついてくる。そして話し始めた。
「前田先生がこの学校来た時からなんとなくだけどこの人先生以外に別のでかい仕事してそうだなぁって思ってたんだよ」
俺は返答はしなかった。歩幅も緩めない。
「なんか、毎日に刺激がほしいとかそんなんじゃなくて、こんなの誰にでもできる話じゃないし、教科書に載るかもしんないじゃん?」
カズが言ってる意味がいまいち理解できなかった。
「なにかこの人生の中で、やってやった!ってものをもって自信をつけたいんだ。蟻の一穴でいいから空けたいんだよ。世界に。」
だんだん理解してきた。世界の中の1つになりたいんだと思う。だがそんなことはどうでもよかった。俺の中では何の問題もない。
「理解してくれよ。わかってくれって。そんなに怒んなよ。勝手に行くって言ったのは悪かったよ。」
俺は足を止めた。何もわかっていなかった。こいつは。
「…っげえよ」
言葉に出そうとすると出ない。思いが詰まって出ない。
「えっ、なんて?」
「違うって言ってんだよっ!」
久々に怒鳴って頭が痛い。だが、そんな痛みに負けることなく怒鳴り続けた。
「俺は、お前の勝手に俺に話しかけて、勝手に友達になってて、勝手に遊びに来て、勝手に人の飯食って。そんな日々が楽しくて仕方なかった…。だけど、ひとりでどっか消えるようなことを勝手に決めんなよ。」
「仁?お前そんな気持ち悪い台詞いえるようになったのか?」
「うるせえ!」俺は和輝の胸倉をつかんだ。
「俺もつれていけよ…。」
俺は俺を助けてくれた奴を見殺しにしたくはない。だから。せめて、、、
「えっ。聞いてないのか…?」
和輝はばつの悪そうな顔をした。
「さっき。お前もつれていくって…いったばっかりなんだよねぇ…。前田先生から聞いて怒ってんのかと思った…。」
和輝はなぜかほっとした顔をしていた。
和輝は俺が想像した以上にクソ野郎だった。こいつは死ぬかもしれない場所に無断で俺に行かせようと思っていたのだから…。
「お前がいなきゃ面白くない気がしたんだよ。つまんなさそうな案件だからせめてお前を道連れにさせてくれ。」
和輝の瞳に俺の顔がしっかりと映っている。
これからどんなことが待ち受けているのかわからないが、きっとただでは済まないのであろう。
オレンジ色の空がきれいに見えるのはこれが最後かもしれない。




