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燕華の天女 河岸の覇  作者: 一集
第二章 呉編

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13話 孫呉の女






「曹操は今、袁紹(えんしょう)から手が離せない」


北の名門、袁家の長。

曹魏より更に北に、魏より遥かに大きな領土と軍力と名声を持つ袁紹。


あやが最初から知っていたのは魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備。

やがて天下を三分する三人の皇帝。


けれど彼らは最初から天下に名を轟かせていたわけではなかった。


彼らも初めは無数にいる天下に覇を唱える群雄の一人だった。

今、やっと、彼らがそこに至るまでに歩いた長い道程を知る。


「曹操の留守を突いて、許昌を攻める。」


北伐の趣旨を述べ、これから詳細を詰めていこうという会議。


そこに席を許されたあやは孫策の声をどこか遠くに感じながら少し不思議に思う。

あやにとって、最初から曹操は魏の王だった。

たった三人の天下人の一人。

本人に出会う以前に、あやの知識は当然のように彼はそういう者だと断じていたから。


――だけど、この世界の人にとってはそうじゃないのね。


もしもあやにとっての曹操の認識を、この世界の人たちに当てはめれば、それはきっと袁紹になるのだろう。

群雄から一つ飛び出して、天下に最も近い男。


二人の戦いの、大方の予想は袁紹の勝利。

そう、今はまだ曹操も、力はあるがただの群雄の一人。


皆わかっている。

これが今後の歴史を左右する戦いだということ。


日本でいう関ケ原だろうか。

北で、天下分け目の戦いが続いていた。


袁紹と曹操。

かつて友だった彼らが、今、命を賭けて戦うその心を知ることはできない。


「許昌を速やかに制圧。それを以って呉は天下に名乗りを上げる」


時は西暦200年。

正しく変化の時代。


遂に、天下取りに呉が参加する。


まだあやだけが知る本当の英雄たちが、次々と表舞台に姿を見せようとしていた。






「官渡(かんと)での戦いは熾烈を極めているという」

「曹操はよく耐えている」

「だが、それも時間の問題だ」

「曹操が負けてしまえば、天下は袁紹の下に転がり込んだも同然」

「北に袁紹を押さえられる者はもういない」

「魏の土地と軍を吸収した袁紹の勢いは誰にも止められないだろう」

「その前に我々が。」

「ああ、曹操に成り代わる」

「曹操の力を貰ってな。」

「元より袁紹のものになる予定の力。宿敵に奪われるよりは我々が貰った方が曹操にとってもよいだろう」


声を上げて笑う幹部連中をちらりと見て、あやはまた無表情に戻る。

随分と自分勝手な理屈だ。


要約すればこんな話。

黙っていれば魏を飲み込むだろう袁紹。

それを素直にくれてやる謂れはないのだから、呉が貰っても構わないだろう。

魏を取り込みさえすれば、袁紹にも引けを取らない力を得られるはずだ。


孫策は壇上で同じように無表情で片肘を付き、彼らの話をじっと聞いている。

その隣に立つ周喩はきっちりと背筋を伸ばし、しかし目を瞑ったまま動かない。


きっと話し合っている官たちもかなり居心地が悪いのだろう。

笑い声はどこか無理があって渇いた響きがある。

彼らのわざとらしいやり取りも致し方がないのかもしれない。


「あや」


呼びかけられて壇上に目をやる。


「何、孫策」


突然声を発した孫策に官はぴたりと黙った。

やっと何らかの示唆が君主から与えられるのか。

空回った会議もようやく終息を迎えられそうだと、ほっと二人の会話に耳を傾ける。


「どっちが勝つと思う」


だが、孫策の言葉に皆が怪訝な顔をした。

今更何をおっしゃるのか。

会議はずっと、袁紹の勝利が前提で話し合われてきたというのに。

それは決められた勝敗だと、確認の必要もなく、議論に上がる余地もなく、流された話。


「そうだね…周喩、君はどう思う?」


あやは少し考えてから石像のように動かない周喩に目を留めて聞いた。


「…多分、お前と同じだ」

「孫策、君は?」

「曹操は負けない。そんな気がする」


二人が共に、明確な言い回しを避けてそう言った。

が、示す言葉は明白。


天下への道を歩く覚悟を決めただけあって、その目は確かだ。

遠く、見通す眼差しは曇っちゃいない。


そう、曹操は負けない。


官渡の戦いの勝者は曹操。

それが歴史となった未来が示す事実。


その事実を知らなくても、あやは思った筈だ。

曹操が負けるはずがないと。

だって、彼は曹操孟徳なのだから。


「何を…孫策様、周喩様。」


官たちがざわりと揺れる。


「群雄割拠の時代が始まるな…」


孫策がここではないどこかを見て、ぽつりと呟いた。

その言葉に、官たちはごくりと唾を飲んだ。


袁紹が勝つなら袁紹の天下が始まり。

曹操が勝つなら、飛び抜けた者のない最後の群雄割拠の時代が始まる。


この二十年で粗方の有象無象は既に淘汰されている。


そして今、残っているのはその戦いを生き抜き、時勢を読み、強かに雌伏していた者ばかり。

そう、この呉の孫策のように。


袁紹と曹操と一体どちらが生き残った状況がマシなのか。


何にしても呉が動く時は、今しかない。

北の動乱が終わってしまえば、どちらが勝ったにせよ次に彼らの目が向くのはこの豊かな江南に他ならないからだ。


もはや呉に、静観出来る時は過ぎた。


「出撃準備を整えておけ!」


官たちは背筋を伸ばし、孫策の声に応えた。

笑いの絶えなかった呉の日常は、その日姿を消した。







「あや」

「…祁央」


あやはこの頃、部屋にいることが多い。

孫策と周喩からの呼び出しが多いからだ。


諸官の反対を押し切って孫策はあやを軍議に参加させている。

だが、あやは決して口を挟まず意見を提示することもなかったから、官たちは渋々とあやの参加を承諾しつつある。


孫策もまた、あやを無理やり参加させた割にはあやに意見を求めるわけでもなく、不干渉を保っていた。


それが破られたのは先の会議のただ一度だけである。


そのことを官たちは安堵しながらも不思議に思っていた。

呉のご意見番の周喩も何も言わない。


それどころか、孫策も周喩も、何かある度にあやを呼び出し傍に置く。

重要な決定をするときも些細な問題でも、何をさせられる訳でもなく、あやはそこにいた。


では、一体何のためにあやはそこにいるのか。

官たちは首を捻るばかりだ。


あやにはわからなくはない。


表面は取り繕えても、内面のさざ波までなくなったりはしない。

彼らは今、懸命なのだろう。

出来ることを、必死に、もがいているのだろう。

それを知っているのはきっと、自分だけ。


だからあやは彼らの呼び出しに応じる。

いつ何時でも。


「大丈夫か」

「うん、別にあたしが何をするでもないからね。辛いのは、あたしじゃないもの」

「…眉間に皺が寄ってるぞ」


嘘つき、と言外に言われた。

あら?

あやは苦笑して自分の眉間を揉む。


何もせずに、ただ傍にいるというのは、本当はとても辛い。

でも彼らはあやにそれを求めている。


彼らの中にあった変化と信念と。

全てを知って尚、あやは何も言わないから。

見届ける者として、信念が揺らがぬための支えとして、彼らはあやを選んだ。


あやと二人だけの時。

彼らはそれぞれにふと昔の自分を取り戻す。

ほんの少し前の、当たり前の日常を。


そういう彼らがとても愛しくて、その方がいいと言いたくなるときもある。

元に戻ってくれと、そう言えば、彼らは戻ってくれるかもしれない。


でも言えない。


彼らが何も言わないことを望んでいるから言わないのではなく。


「何も、言えないの」


彼らに。

言ってやることができない。

掛ける言葉をあやは持たない。


天下への道を選んで、決意しても、変化は急速過ぎて。

苦しくないはずはない。


「あいつらの人生はあいつらのものだ。お前がどうこうするものじゃない」


祁央のその言葉はとても慰めになる。

でも、そうじゃない。


それはただの言い訳。


あやは無言で首を振った。


だって、あたしは。

本当は。


「あの人たちの人生まで背負えない」


だから、背を押すことは出来ないのだ。


本音は、もっと酷い。


『もう背負いたくない』


もし彼らの人生を左右してしまったら、それを背負わなければならなくなる。

あやには無理だ。

重すぎて、これ以上は無理だ。


魏を去る時に決めたことがある。

曹操の手を離しても、曹操が望まなくても、彼に続くこの絆は決して切らないと。


曹操の罪を、自分一人で背負う覚悟を決めてしまった彼と共に、勝手に、負わせて貰うと決めた。


だけど、何故かな。

最近肩が重くて仕方がない。


曹操が人を殺して、その死を背負って、毎日毎日、肩が重くなっていく。


自分で決めたはずなのに、恐くて。

だって、天下を目指す彼らも曹操と同じようにきっと多くの命を奪う。


そう考えたら、動けなくなる。

何も、言えなくなった。


そんな身勝手な理由で、孫策たちの心を軽くすることを躊躇う自分はとても卑しい。


「ねえ、祁央」

「何だ、あや」

「ん、…何でもない」


あやは何かを言いかけて、しかし結局口を噤み、窓の外の空に目を向けた。


右近が死んで、悲しくて哀しくて。

残された者は喪失感に苦しんで、誰かがこの世に存在しなくなるという意味を知る。

だから人の命は奪われざるものなのだと、改めて感じた。


やがて夢を見るようになった。

遠い場所でその命を奪われた人の夢だ。


彼らはその死を知らされて嘆く家族を、透けた体でじっと見つめている。

ただそれだけの夢。


だけど、あやはいつも息が出来なくて目が覚める。


曹操に奪われた命。

彼らはきっと、帰りたかった。

故郷に、家族の下に生きて帰りたかった。


ハルが、あやが、あの世界を想うように。


家族はきっと悲しかった。

多分、あやが右近を失ったときのように。


それがわかるから。

もたげた疑問がある。


死者は何も言わない。

でもあやは自問する。


奪われていい命なんてどこにもない。

だけどあたしは失われる命があることを知っていて、何もしようとしなかった。


曹操が作り出した地獄。

無数の悲劇が生まれることをわかっていて、曹操を一人で往かせた。


それでよかったの?


あの死者特有の虚ろな目が言っているような気がする。

何故、曹操を止めてくれなかった。

何故、逃げた。


それはきっと死者ではなくあや自身の心の糾弾だ。


だって、曹操は止めて止まるような人間じゃない。

だからあたしは逃げたわけじゃない。

反論する声は日に日に小さくなっていく。


祁央が、眉間の皺をなくして、それでもまだどこか苦しそうなあやに口を開く。


「あや、お前が望むなら」


何でもする。

お前が苦しまなくて済むというのなら。


――お前を曹操の下に。


あやは祁央が最後まで言い終わる前に首を振った。


曹操にはもう感傷はない。

今、姿を見せたなら。

曹操はきっとあたしを殺すだろう。

天下を阻む障害として切って捨てる。


それを曹操に選択させたのはあや。

この存在だ。

自分の身を抱いて、あやは外を見たまま静かに呟く。


「遅いの、もう。」


本当は最初から、遅かった。


どうやっても曹操との距離は近づかない。

どんな選択をしても、二人が共にいられる道など存在しなかった。


過去をやり直しても、この関係だけは変えられないものだ。

ただ一つ、出会わないことが、もしかしたら救いとなったかもしれないなど、笑えない話。


あたしはどうしたいのかな。


迷いが渦巻いて、今ならハルの苦しみがわかるのにと、関係ないことを思った。

悩んで、悩んで、最後まで流され続けたハル。


今、あなたがここにいたらいいのに。







「暗い、暗いわ!!」

「しょ、尚香様。声が大きいです」

「だって、やってられないわよ、そうでしょう、小喬!?」

「そうですねぇ。この頃周喩さまもずっと変ですから」

「出征を前にしてこの雰囲気!どうなってるのよ!!」


これでは勝てる戦も勝てない。

尚香が回廊の真ん中で拳を振り上げて叫ぶ。


「それもこれも!…全部、あんたのせいよ!!」


回廊を曲がって来た途端、びしっと指を突きつけられてあやは目を丸くした。

話が見えない。


「えっと?」

「あら、あや。丁度よかった」

「大喬!何がよかったの!?まさかこんな奴を誘う気じゃないでしょうね!」

「あ、それいいですね!姉さま、そうしましょう」

「え?は?」


一体何がどうなっているのか。

目の前で言い争っている女性三人。


あやは目を白黒させて事の成り行きを見守るしかない。


傍から見ると他国まで鳴り響く美貌を持つ三人の美女と中性的な美少年姿のあや。

かなり華やかな光景だった。


四人は注目を浴びていることにも気がつかず、話を続ける。


「これからわたしの部屋でお茶でもと思っていたの。貴方もどうかしら?」

「一緒に行きましょうよ、あや!」

「私は嫌よ!」


何だか、学生時代を思い出す。

寄って集って好きなことを話して、笑い合って。


「尚香様ったら、わがままが過ぎますよ?」

「私のどこがわがままだってのよ!大体、本当にそうだとしても許されるのよ、私は呉の姫ですからね!」

「うわあ、尚香さま、それ物語で悪役が言う台詞ですよ」

「誰が悪役よ!」

「「尚香さま」」


軽快な掛け合いに、あやは小さく笑ってしまった。

途端にぴたりと三人が話を止める。


「えっと、…どうしたの?」


もう少し聞いていたかったやり取りが唐突に止まってしまったから、あやは戸惑いながら三人の顔を順番に見た。


「…あ・ん・た・ね~!だから嫌いなのよ!!」

「周喩さまに謝らなきゃ。これは浮気じゃない、ときめいてなんていない!」

「あら、困ったわ」


困ったのはこちらだ。

状況がよくわからない。


「とにかく、一緒に行きましょう。きっと楽しいと思うから!」

「無理強いは駄目よ、小喬。あや、もしかして孫策さまか周喩さまに呼ばれているのでは?」


大喬の問いにあやは曖昧に笑った。

答えはイエスだ。


「っ!あーもう!!行くわよ、あや!!」


途端に今までぐずっていたはずの尚香があやの手を掴む。


「尚香様?」


戸惑って、あやが尚香を呼ぶ。

あやには珍しく「様」付けだ。

いつものあやなら何を言われたって、構わずに呼びたいように呼んだだろうが、今はちょっと弱っているから、以前尚香が望んだようにそう呼んだ。


「あんな馬鹿兄貴たちの言いなりになることないわよ!」

「あら?尚香さま、もしかしてあやじゃなくて、孫策さまたちに怒っていたのですか?」

「素直じゃない…」

「う、うるさい!!」


顔を赤くしながら尚香が大喬の小さな呟きに反応して怒鳴る。

それが久しぶりに対等な友人関係を思い出させた。


あやにも尚香に似た親友がいた。


何でも言い合えて、喧嘩をして、大っ嫌いだと叫んでも彼女が親友であることに変わりはなかった。

突然、日常が失われてしまったあの日まで。


「さあ、着いたわ!大喬今日の茶菓子は何?」


部屋の主より先に堂々と大喬の部屋の扉を開いて、尚香があやの手を引いたまま振り返る。

尚香の目には自然あやが映りこんで。


尚香は少し驚いて、それから怒ったようにあやを睨んだ。


「…っ、だから!あんたは!」

「え?」


当のあやは突然尚香が怒りを顕わにした意味がわからない。


「私はね、あんたみたいなのが嫌い!」

「え、はい」


それは最初から知っている。

悲しいけど、どうしようもない。

人の感情はどうすることも出来ないし、してはいけないものだと思うから。


「あー、もう!あんた分かったみたいな返事したけど、絶対にわかってないからね!何言われてもそうやって肯定して、受け入れて、疲れるだけじゃない。いい子ぶるんじゃないわよ!」


大喬と小喬は黙って尚香の言葉を聞いている。

大喬など、少し笑ってすらいた。

それはきっと尚香の心根を知っているから。


「一人で抱え込んで何が楽しいの!?」


何だか。

涙が出そうだ。


尚香は真実孫策の妹だ。

誠実で、素直で優しくて。


尚香の言葉に、返すべき言葉はきっと一つ。


「…ありがとう」


心が零れ落ちたような声になった。


「だから!ここまで言われて何で怒らないのよ!」

「だって、嬉しかったから」

「…あんた、本当に怒っていいのよ?」


こんな暴言を吐く自分にも、自分勝手にあやを押し潰そうとしている兄達にも。

あやは尚香が言わなかった言葉も正確に理解して尚香に答える。


「皆、優しいから」


怒ることなど何もない。

時々ズルい自分に落胆はするけど、それだけだ。


「はあ。…あなた本当に変わってる。『優しい』なんて。…本当、あの馬鹿兄貴たちには勿体無い」


尚香はため息をついて、怒っていた肩をすとんと落とした。


八つ当たりは止めだ。

呉の何かがおかしくなり出してから、ずっとあやを見ていた。


だからわかる。

この事態にあやは関係ない。


自分の問題は自分の中で処理しようとする性質を持つ孫策と、いつも孫策の監視役を自称しているくせに結局は孫策に引き摺られる周喩。

それから、一番厄介な頑固者の孫権。


馬鹿をやっているのは身内同然の彼ら。


尚香は認めた。

あやは悪くない。


むしろ巻き込まれている側だ。


北伐に向け、士気を上げなければならないのに、皆難しい顔をして忙しそうに回廊を行き来している。

何より、あやの声が最近は聞こえない。

馬鹿みたいに伝播していく、あの笑い声が。


そして尚香は気付いた。

あやはそういう人間だ。


全然違うのに、変な所だけ似ている。

孫策がそうだった。


いつも笑って、なのに一番大事なことは何も言わず、一人で背負おうとする。

愛すべき兄の、それだけが尚香は大嫌いだった。


そして、あやはその孫策よりはるかに真面目なのだ、誠実であろうとする人間なのだ。

ぺちゃんこになるまで、何も言わず誰も頼らず、耐える人だ。


「ほんと、男どもは頼りにならないったら」


尚香はあやの手を掴んだまま笑いかけた。

仕方がない人だと、あやに。


あやはつい先日、孫権に言った事を思い出す。


『きっと今、一番よく呉が見えているのは孫権だ。』


間違えた。

即撤回する。


それは彼女だ。


「あや、辛かったら言ってください。わたし孫策さまを引っぱたく覚悟はありますから」

「あたしも。あやは仲間だもの、いくら周喩さまでも許せないことはあります」


相変わらず優しく笑う大喬と、ガッツポーズの小喬。


尚香だけじゃない。

彼女たちもだ。


「…何だか、目が覚めた」

「は?」

「…女ってすごい」


ずっと男の中にいたから、考えもしなかった。

女の強さってやつ。


知らず、視界が狭まって井の中の蛙になっていたのかもしれない。


「ありがとう。…すごく、すごく、安心した」


孫策たちには彼女たちがいる。

まるで自分が揺らいだら彼らまで崩れ落ちてしまうような錯覚を起こしていたけど。


なんだ、大丈夫なんじゃない。

あたし一人で、支えてたわけじゃないんじゃない。


強張っていた身体から余計な力が抜ける。

随分と久しぶりな気がした。


「尚香様、あなたみたいな友達が欲しかった」


昔みたいに、あの故郷のように、あやを諭してくれる友人はここにはいない。


もしも尚香みたいな友がいたらと、少し思った。

そうしたらこんな風に独りよがりで愚かな思い込みをせずに済んだかもしれない。


「…何で過去形なのよ」

「いや、だって」

「尚香でいいわ。あや」


呉の女は強く、賢く、優しく、曇りのない目を持っている。

呉には強い武器があった。






呉の女性陣好き。清涼剤。

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この小説は更新無期限停止中です。
続きがどうしても気になる!と仰る奇特な方はHPの方からどうぞ。

完結済ですので、最後まで読めます。
ただし、夢小説(二次創作)サイトなのでご注意を。
なろう版は二次部分を誤魔化しています。

原版がどうしても無理っ!という方も多いと思いますので、あくまで自己責任でお願いします。
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*管理パスを紛失しているのでHPから送られたメールは読めません。申し訳ございません。
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