その19
長らくお待たせしました!
きっと馬鹿騒ぎになっている…はず!
「……さん。…おさん。」
……なんかうるさいです。そしてお腹に圧迫感が…何故?
わたしは布団をぐいっと頭までかけようと手を伸ばした。
すると、ぱしっと手を捕まれた。そして
「お嬢さん」
「うぎっ…!!…もごっ!?」
うわああああぁぁあ!!
わたしの頭は綺麗さっぱり覚醒しました。
「おはよう」
彼はそう言ってわたしの鼻にちゅっと口をつけた。
「んんっ!!!」
うぎゃああああっ!
やだ、やだよ、この人おかしい!
……奇声を上げてばかりでごめんなさい。
取り敢えず状況を整理します。
恐らく昼間に会った濃紺サラサラヘアーさんが、わたしのベットに腰かけて、胴体のみわたしのお腹にもたれかかっており、片手でわたしの口を塞いでます。
わたしが何故この人がサラサラヘアーさんだと断定出来ないのかと言われますと、部屋が真っ暗だからです。月明かりのみでの判断でしか無いのですが、この口調と変態行為は濃紺サラサラヘアーさんで確定でしょう。そして全くもっておはようじゃありません。こんばんはです!
というか!まさかこれはかの有名な夜這いというやつですかね…!?
そういえばまた口説きに来ますーとかいってましたよねこの人!
やばい、ピンチです、対処法知りません!!
とりあえずユフィさんを呼ばなくては!
「…もごーごっ!」
「んー…話すとお嬢さんの唇が当たってくすぐったいからやめて?」
「~!」
「ありがと。静かにしててくれれば嫌なことしないから」
この体勢が既に嫌なことです。とは言えません。
というか鼻に…鼻に…!
くっ、不覚でした。2度もこんなことされるなんてっ!
…というか彼は何故ここに来たのでしょう?
不法侵入って捕まったりしないんでしょうか?捕まればいいのに。
「何でここに居るのかって顔してるね」
こくりとわたしは頷きました。
「俺はねお嬢さんを保護しに来たんだ」
「…」
……………保護?
拉致ではなくて?
「なんか変なこと考えてるでしょ」
わたしは冷や汗を垂らしながらぶんぶんと横に顔を振ります。…さっきから何でわたしの考えてることが分かるのでしょう。こわいですよ。
「はっきり言ってね、お嬢さんは狙われてるんだ」
「!?」
「あぁ、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ、命は狙われてないから」
そそそそそ、そういう、ももも問題ではななないとおお思うのはきききき気のせいでしょうか
「お嬢さんこの世界の人じゃないでしょ?」
「……!?」
ええっ!バレてる!?
「隠さなくていいよバレてるから。…まぁその話は置いといて。だからこんな警備が緩い所に居たら直ぐに拘束されちゃうよ?……だから俺が守ってあげる」
するといきなりわたしの視界がピンク色に染まりました。
「…!?」
なんか甘い香りがして…くらくらして…あたまがふわふわー
するとグレンはかれんを押さえていた指を外した。
そしてグレンはかれんにこう繰り返した。
「かれんは俺に付いていく。かれんは俺に付いていく」
「かれんは…おれについていく…?」
「…かれんはグレンに付いていく」
「かれんは…グレンについていく…?」
「そうだ」
因みにグレンがかれんにかけたのは相手の意思をこちらが握れる魔法で禁忌魔法とされるものの一種だ。
ユフィに魔法を使っても咎められないと言われたからには、最大限に使おう。そう思いグレンは行動に移したのだ。
グレンは素早くかれんを横抱きにして外に出る準備を整えた。もう脱出すれば任務完了だ。
……だが、そこまで運良く事が運ぶわけがない。
「ХХХ」
――バキャ
その瞬間、一瞬呪文が聞こえたかと思うとかれんの部屋の扉は貫通していた。
そして大量の白い煙が部屋中を包み込んだ
「けほっ」
かれんは咳き込んだためグレンは背中を優しくさすった。その姿まるで親子。
そして徐々に煙が捌けていき、鼠色のシルエットが見えてきた
「おやこんばんは、ローランド様」
「…わかっているのなら、どうなっても文句は言えませんよね?」
ユフィの言葉が合図になったかのように二人は自身の剣で打ち合いを始めた。
「ここまで聞き分けが無いのは恥ですよ」
「先程も言いましたが、事情があるんですよ」
「例え事情があろうと関係ありません」
「…!」
スパンとユフィはグレンの上着を切った。幸いと言うべきか血は出ていない。
「…はぁ服が破れてしまいました」
「服の心配より自身の心配が必要なのでは?」
「心配いりません」
グレンは体勢を立て直すと直ぐにユフィに切り込みにかかった。…ように見せかけて、ユフィのすねにグレンのブーツの爪先がヒットした。
「…っ」
「侮らないで頂きたい」
ふぅ…と一段落したと思ったら背後から殺気がした。
「ふはっ!次は副団長が相手ですよ…っとぉ!」
そしてゴンっと鈍い音。…そう、ハルヴェストの木刀がグレンの頭に当たったのだ。グレンはあまりの痛さに悶絶した。
「っしゃあ!クリティカルヒットぉお!」
「…ライフ?なにをしている…かれんは?」
「あいつ何か魔法かけられてるみたいです。ってことで俺じゃ対処できません」
「……ちっ」
そしてユフィは悶絶しているグレンを尻目にかれんの方へと向かった。
時は遡ること数分前……
ユフィがグレンと打ち合いをしている隙にユフィの後ろに隠れていたハルヴェストはかれんの回収に向かっていた。
そこでかれんは無惨にもベットの上で放置されていた。
少し怪訝に思ったが、ハルヴェストはかれんを俵担ぎにしようと脇の下を持ち上げた。すると
「は、離して下さい!この変態!」
「は?」
かれんは身をよじってハルヴェストの腕から逃げる。
「いっ!いやです!…離して!この女好きめ!」
「…んだとこら」
全くもって女好きではないハルヴェストはかれんの言葉にプチンと切れたものの、異変に気付いた。
かれんの目にはピンクのもやがかかっていた。
「っお前…」
「いやだーいやだーたすけてー!」
この魔法は魔法をかけた張本人の言うことしか言うことを聞かない、そしてそれ以外のものを不審者だと思い込んでしまうという効果がある。
これを無効果させる方法はあるにはあるが、どれもハルヴェストの気が進まない方法だらけだ。
そこでハルヴェストは思った。
こんなめんどくさい事よりももっと楽しいことが目の前で繰り広げられているではないか
…そう、その名は『戦闘』
「…ふはっ!…副団長相手なんて腕がなるぜ…!」
そして彼はかれんを放置して戦闘に加わったのであった。
閲覧頂きありがとうございます!
突然なのですが、この話とは全く関係ない短編小説をこの前仕上げました!
魔女(前世魔王)と王子(前世勇者)の恋愛もの(…?)になっております。
息抜きに書いたのでかなりご都合主義ですが、もしお暇があったら閲覧よろしくお願いします!
タイトルは『前略勇者様。わたくし魔王は反省して貴方の侍女となります』です!




