その13
「……ところで、その髪と瞳はどうしたの?」
「……………はっ!」
ユフィさんは不自然な位にこにこと微笑みながらわたしに問いかけてきます。
ユフィさんの衝撃発言で頭の中から軽く飛んでましたけども、そういえばわたし髪の毛黒くなってましたよ
「知ってると思うけど、この魔法をとくには条件があったよね?覚えてる?」
「はい!」
こ、これは怒っているのでしょうか?笑顔が黒いです、怖いです!
長いものには巻かれろ主義のわたしは激しく頷いておきます
「…どんな内容だったっけ?」
「わ、わたしの半径5センチ以内に入っており尚且つ目を合わせていることです!」
「…ということはだよ。かれんはさっきあの男とそのような状況に陥ったと考えていいんだよね?」
口に出すと少々恥ずかしいので、わたしはこくこくと激しく頷きます。
「…なに?口で言ってくれないとわからない」
ひいぃぃ!ユフィさんが怖いです、いや、ほんとに!怖いとしか言葉に表せません!
…これじゃわたしが悪いことしたみたいです……あ、そういえばこれ、わたしが悪いんでした
「ねぇ?」
おおう、脳内で独り言してたらユフィさんの話を無視する形になってしまいました。やばいです、これ以上彼の怒りを増殖させないためにもはっきりすっぱり言って参りましょうとも!
「お、陥りました!」
「どんな状況に」
「魔法がとけるような状況です!」
わたしの奮闘を誉めてください。これ以上は無理です、恥ずかしくて言えないのです
…え?はっきりすっぱり言ってないじゃないかですって?……聞こえません。
「……はぁ。質問を変えようか。魔法がとけるような状況に陥るその前後の行動を細かく教えて」
「えぇ!?…や、それはちょっと」
「………」
「………え、ええと、その」
「………」
「あー、えっと…」
「………」
小心者のわたしにはこの沈黙は耐えられませんでした。
「~っ!わ、わかりました、言います!」
「ん、いいこいいこ」
ユフィさんがにこにこ微笑んで頭を撫でてくれるので、まぁいっかという気持ちになってきてます
そうしてわたしはその後あったことを説明しました。すると、途中から気分が悪くなったのでしょうか?ユフィさんの顔が青くなっていきました。
不安に思いはじめた瞬間
ユフィさんが消えました
「……………ええええぇ、またですか!?」
そうなのです、先程のサラサラヘアーイケメンさんと同じように消えたのです!
し、心臓に悪いですから、居なくなるときは知らせてくれませんかね!?
はぁ…と胸を撫で下ろして先程まで腰掛けていたいすに座り腰を落ち着けていると
「……ぅゎーん」
「!?」
どこからか泣き声が聞こえてきました!え!?なんですか!?外ですか!?
ここここここ怖いです!!!無理です、怖いの駄目、絶対!
「うわあーーん」
「っヒ」
だ、だだだんだん、こここ声がちちちかづいて来ましたよ!こ、ここ怖いので取り合えず椅子の下に隠れて入り口を見つめます。すると
ばたんっ!
木のドアが思いっきり開きました
「団長ぉぉおーー、ごめんなさぁいいいぃい!!」
入ってきたのは、ふわふわの茶色い癖っ毛の青年でした
――ここはとある王城の一室
「…む?おいグレン。誰か来るぞ」
赤い髪をオールバックにした男性…もとい、ザック・オーディエントはソファで紅茶を飲んで落ち着いている青年に声をかけた。
「……そのようです」
濃紺サラサラヘアーの男…もとい、グレン・フィデレフは飲んでいたティーカップを置いた。
「…あー、俺は知らんぞ。二人で片をつけろよ。」
ザックはこれから起こるであろう悲劇に頭を痛くしながら腰掛けていた椅子から立ち上がった
「はい」
「あ、なるべく備品は壊すなよ」
「……善処します」
それと、嫌なことがあるからって俺の部屋に逃げ込むな。とザックはグレンに言うと、廊下に通じる入り口兼出口の扉を開けた
「こんにちは?ザック・オーディエント団長」
が時既に遅く
にこにこと微笑みながらもドス黒い空気を撒き散らしている魔法団長、ユフィ・ローランドに捕まった
「…こんにちは、ローランド団長」
ザックはにこやかに挨拶したつもりだが、頬がひきつっている
「ここに副団長はいらっしゃいますか?……そこにいらしてますよね、グレン・フィデレフ副団長?」
部屋の主の許可も取らずユフィはずかずかと部屋の中に入っていく
そしてソファに座っている目的の人物を見つけると
さくっ
一瞬にして作った剣でグレンの座っているソファを刺した
「また会いましたね、グレン・フィデレフ副団長」
ずぼっとソファから剣を引き抜き、グレンの目の前に剣の切っ先を持っていった
「こんにちは」
グレンもまた一瞬にして氷の剣を作ると、自分に向けられた切っ先を払った
「…僕の可愛い妹に手を出さないで貰えませんか」
「お言葉ながら、彼女はローランド様の妹ではないようですが?」
「彼女は既に僕の妹です。口出しはさせません」
「彼女は誰のものでもありません、ですが我々にも引けない事情がありますので、手は出します」
「人の女に手を出すなんてなってませんね。教育を疑います。……騎士団長は逃げましたか」
ちっ、とユフィは舌打ちをした
そして自ら作り出した炎で一瞬にしてグレンの氷の剣を溶かし、ユフィ自らの剣をグレンの首に構えた
「彼女を僕の妹と認め、髪と瞳の事を口外しないと誓うのならば今回のことは全て水に流しましょう…因みにあなたの違反もです」
「………わかりました」
そしてユフィがチャキっと剣を降ろすと、役目を終えたかのようにさらさらと剣は消えていった
「…そういえば、何故僕は薬屋を営んでいるか聞きたいとおっしゃってましたよね」
「はい」
「趣味です」
そう言うと彼はつかつかと来た道を帰って行った




