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【World Wide Love ― 2人で1人の逃走譚 ―】  作者: KK
【第2部】第6章ーシスターアリスの秘密ー

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ハーブとミリィはお楽しみのようでー

ハーブはゆっくりと両手を伸ばした。


そして拘束されたまま動けないミリィの頬を、壊れ物でも扱うように優しく包み込む。


そのまま顔を近づける。


逃げ場のない距離で、真っ直ぐに瞳を合わせた。


「安心して」


穏やかな声だった。


「今のあの子はもう、ミリィのことしか信じられなくなってるわ」


その瞳は慈愛に満ちているようで。


どこまでも冷たかった。


「よかったわねー」


「あ……あぁ……そんな……」


ミリィの喉から、掠れた声が漏れる。


ハーブはくすりと笑った。


「もちろん、偽物のあなたなんだけどね?」


その一言が胸を貫く。


ミリィの瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちた。


「……何のために...」


問いかけは震え、最後まで形にならない。


するとハーブは不思議そうに首を傾げた。


「目的?」


そして、当たり前のことを答えるように微笑む。


「何度も言ってるじゃない」


「ベルを連れ帰るの」


言葉を一つ一つ慈しむように紡ぐ。


「大好きなベルを愛して慈しむの」


その笑みは少しだけ深くなった。


「そうして、もちろん研究もしちゃうかな」


ミリィは震える唇で絞り出す。


「そんなことの……ために……」


その瞬間だった。


ハーブの笑顔が、すっと消える。


部屋の空気が凍りついた。


「そんなこと……?」


静かな声。


けれど、その静けさが何より恐ろしい。


「今、そんなことって言ったの?」


ゆっくりと身体を起こし、真っ直ぐ立つ。


見下ろす視線には、先ほどまでの穏やかさは欠片も残っていなかった。


冷たい。


底の見えないほど冷たい目。


ミリィは思わず息を呑む。


ハーブは小さく首を振った。


「いけないわ、いけないわぁ」


その口調だけは優しいまま。


「そんなこと言って、ひどい子ね」


まるで叱る教師のように。


まるで悪戯を咎める母親のように。


静かな声で告げながら、ハーブは無表情のままミリィを見下ろし続けていた。


ハーブはゆっくりと前屈みになる。


ミリィの顎を無理やり掴み上げ、拒絶の隙を与えぬまま、強引に唇を重ねる。


「――っ!?」


拘束されたままのミリィは目を見開き、息を呑む。


それから数分、実際には数秒だったのかもしれない時間。


唇が離れる。


ハーブは何事もなかったかのように舌先で唇をなぞり、にっこりと微笑んだ。


「ベルから聞いてない?」


その声音は穏やかだった。


「私ね、男も女も、イケちゃうの」


そう言って白いレースの手袋の指先を口でくわえ、ゆっくりと外していく。


布が指先から滑り落ちる音だけが、静まり返った部屋に響いた。


外した手袋は、そのまま床へ落とされる。


「せっかくだもの」


ハーブは楽しげに首を傾げる。


「2人で楽しいことしながら、待ちましょうか」


ほんの少し目を細めた。


「ベルが壊れるのを」


優しい微笑みは崩れない。


その笑顔のまま、ミリィへ向かってそっと手を伸ばす。


その動きだけで、ミリィの身体は小さく強張った。


拘束具がかすかに軋む。


逃げようにも、逃げられない。


ハーブはそんな反応さえ愛おしむように見つめながら、静かな声で囁いた。


「そんなに怖がらなくても大丈夫よ」


だが、その言葉は安心とはほど遠かった。


部屋には再び沈黙が落ちる。


扉の外からは何一つ聞こえず、窓のない空間には時間の流れさえ感じられない。


ただ、穏やかな笑みを浮かべたままのハーブと、身動き一つ取れず息を詰めるミリィだけが、重苦しい静寂の中で向かい合っていた。


ハーブの指先が、ミリィの顎をゆっくりと滑り上がる。その冷たさに、ミリィは身体を強張らせた。


「……っ、やめて……」


震える声で拒絶しても、ハーブは笑みを深めるだけだった。さらに距離を詰め、逃げ場を塞ぐ。


「何から始めようかしら?して欲しいことある?」


ハーブはミリィの耳元で囁き、冷酷に告げる。


「泣いても叫んでも、ベルは来ないわ」


ミリィが首を振るうのも構わず、ハーブは彼女の唇を容赦なく奪った。


先ほどとは違う、深く、ねっとりとした接触。抵抗しようとしても、拘束された手首が金属音を立てるだけで、ミリィの身体はハーブの意志に抗えない。


「……んっ、ぁ……!」


唇の隙間から漏れた微かな悲鳴を、ハーブはすべて吸い取っていく。逃げ場のない密着の中で、ミリィの呼吸は次第に乱れ、絶望的な熱に呑み込まれていった。


「ふふ、楽しいね!」


ハーブは楽しげに声を弾ませ、顔を背けようとするミリィの顎を指先で強く押さえつけた。有無を言わせぬ力で、無理やり正面から見つめ合う形を作る。


「照れなくていいのよ? 最初はみんなそうなのだから」


ハーブの瞳には愉悦が宿っていた。彼女の白い指が、ミリィの服のボタンへ伸びる。一粒ずつ、ゆっくりと、意地悪なほど丁寧に外されていく。


「いや……っ、やめて……っ!」


ミリィは恐怖に喉をひきつらせ、掠れた声を漏らす。逃げ場のない拘束具の中で、身体は芯から凍りついていた。


ボタンが外れるたびに露わになる肌に、ハーブの冷たい吐息が触れる。


ミリィは唇を噛みしめ、ただ震えることしかできない。ハーブはそんな彼女を慈しむように見つめながら、次のボタンへと指先を滑らせた。


部屋には金属の軋む音と、布が擦れる乾いた音だけが、どこまでも冷たく響き渡っていた。


服が床へと投げ捨てられ、部屋に布が擦れる軽い音が落ちる。


ハーブはミリィの無防備な身体に、値踏みするように視線を這わせた。


「やっぱり若い子っていいわね。嫉妬しちゃう」


そう言って、ハーブは小さくくすくすと笑う。その視線に晒され、ミリィはたまらなくなって顔を背けた。


ギュッと目を固く閉じ、来るべき触れ合いを拒むように、震える身体を小さく硬くする。


ハーブはそんなミリィの抵抗を、楽しむように見下ろした。


彼女がゆっくりと手を伸ばす。ミリィの肌に触れるか触れないかの距離で、指先がふわりと空を切った。次に触れる場所を探すかのような、残虐で丁寧な手つきだった。


ミリィの肩がびくりと跳ねる。


ハーブの細い指が、ミリィの肌をゆっくりと滑り始めた。氷のように冷たい指先が鎖骨をなぞり、そのまま胸元へと降りていく。


「そんなに震えて……壊れちゃいそう」


ハーブは甘く囁くと、ミリィの胸元に指先を沈めた。逃げることのできないミリィの身体が、ハーブの支配下でなす術もなく熱を帯びていく。


ハーブは音もなくミリィから離れると、柔らかな微笑みを浮かべたまま、自身のワンピースの背に指をかけた。


「さぁ、楽しみましょう。お姉さんが教えてあげる」


滑らかな絹が肩から零れ落ち、鎖骨のラインが露わになる。ミリィが恐怖に顔を強張らせたその時だった。廊下の奥から、騒がしい足音が重なり合って近づいてくる。


ハーブは脱ぎかけたワンピースの襟を掴み、ピタリと動きを止めた。はだけかけた胸元を片手で優雅に抑え、静かに扉の方を振り返る。


勢いよく扉が開かれ、武装した男たちが雪崩れ込んできた。ハーブは変わらぬ、慈愛に満ちた微笑みで彼らを見下ろした。


「あらあら、そんなに慌ててどうしたの?まさか 邪魔をしに?」


その穏やかな問いかけに、男たちはひどく怯えた様子で肩を震わせる。


「き……緊急事態につき、急ぎご報告が!」


ハーブは困ったように眉を寄せ、胸元を押さえたまま、まるで散歩に誘うような甘く柔らかな声で言った。


「すぐに行くわ。先に行って待っていてちょうだい」


男たちが足早に去るのを見届けたハーブは、ゆったりと服を整えながらミリィへと向き直った。


「ごめんね。続きはまた後で」


それはまるで、また会う約束を交わすような優しい声色だった。ハーブは穏やかな微笑みを絶やさぬまま、絹の衣擦れを響かせて優雅に部屋を後にした。



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