表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【World Wide Love ― 魔王殺しと呼ばれて―】  作者: KK
【第2部】第4章ー千里眼の聖女ー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
562/657

新たなる幹部ー

「Keilflamme……ゼニエダの……」


ベルの表情が強張る。


だが。


デッドちゃんはきょとんとした顔をした。


そして。


「キャハハハハ!」


腹を抱えて笑い出す。


「あーんなクソザコゼニエダなんかと一緒にすんなしー」


「クソザコって……」


「クソザコはクソザコだし」


デッドちゃんはけらけら笑う。


「てかベル」


「な、なに」


「クソザコゼニエダぶっ飛ばしたんでしょ?」


「……まあ」


ベルは微妙な顔で頷いた。


「キャハハ!」


デッドちゃんは満面の笑みを浮かべる。


「マジでウケるんだけど」


ベルは警戒したまま目の前の女を見つめた。


「じゃあ……」


「ん?」


「何しに来たの?」


デッドちゃんは首を傾げる。


「あーね」


そして悪戯っぽく笑った。


「あちきはベルを捕まえに来たんだよねー」


ベルの顔が引きつる。


「……捕まえる?」


「そ」


デッドちゃんはあっさり頷く。


「魔王殺し」


その言葉にベルの身体が強張った。


「研究してー」


「解析してー」


「新しい兵器とか作れたらラッキーじゃん?」


まるで世間話だった。


ベルは言葉を失う。


デッドちゃんはそんなベルを見てキャハハと笑う。


「だから連れて帰りたいんだよねー」


ベルがそっとベッドから離れる。


デッドちゃんから視線は外さない。


一歩。


また一歩。


ゆっくりと距離を取る。


「冗談はやめて!」


声が震えていた。


だがデッドちゃんは気にした様子もない。


にやにやしながら見ている。


ベルはそのままミリィのベッドへ近付いた。


後ろ手でミリィの肩を掴む。


起こさないと。


そう思った瞬間。


「むだだよー?」


デッドちゃんが舌を出した。


ベルの手が止まる。


「……何をしたの?」


「あーね」


デッドちゃんは楽しそうに笑う。


「毒ぅ?」


その一言で。


ベルの顔色が変わった。


もう警戒だとか駆け引きだとか考えている場合じゃない。


ベルはミリィへ向き直る。


両肩を掴む。


強く揺する。


「ミリィ!起きて!」


「ミリィ!」


だが反応はない。


いつもなら目を覚ますはずなのに。


寝息だけが返ってくる。


「ミリィ!」


「だいじょぶだしー」


デッドちゃんは壁に寄りかかりながら笑った。


「毒って言ってもただ寝るだけのやーつ」


ベルが振り返る。


「ただし」


デッドちゃんは人差し指を立てた。


「朝までぐっすりおねんねしちゃうけどねー」


「……!」


「キャハハ!」


ベルは歯を食いしばる。


そして。


ある可能性に気付いた。


「もしかして……」


「そだよー」


デッドちゃんはあっさり頷く。


「他の部屋のやつらにも打ったからー」


「……!」


「どんだけ騒いでもー」


デッドちゃんは舌を出した。


「だいじょぶー」


デッドちゃんが腰から鞭を取り出した。


カラフルで毒々しい鞭。


両手で構えながら、にたにたと笑顔を浮かべてベルに向き直る。


「だーかーらー」


鞭の先をぶらぶらと揺らす。


「朝までいけないことしーてーてーもー」


デッドちゃんはそのまま一歩近付いた。


鞭は手に持ったまま。


ベルの鼻先に顔を近付ける。


「ばれないよん」


舌を出して笑った。


ベルの顔から血の気が引く。


その顔を見て、デッドエンドがキャハハと笑った。


建物中に響き渡るような大声で。


ひとしきり笑った後、デッドエンドはベルへ向き直る。


鞭を肩に担ぎ、にやにやと口元を吊り上げた。


「どーするー?朝まで2人で楽しいことしちゃうー?それともーすぐ一緒に来るー?」


ベルは歯を食いしばる。


「…どっちもーいやっ!」


咄嗟だった。


考えるより先に身体が動く。


ベルは床を蹴り、デッドエンドの足元へ踏み込む。


そのまま足払いを放った。


もちろん。


こんなものでどうにかなるとは思っていない。


だが――


「あれれ?」


あっさりと。


本当にあっさりと。


デッドエンドの身体がぐらりと傾いた。


そのまま床へ転がる。


ごろり。


鞭まで手から離れて転がった。


ベルは固まった。


「…え?」


床に転がったまま、デッドエンドの顔がみるみる赤くなる。


「ちょ…なにしてくれてんだよ!クソザコベルが!」


烈火の如く怒声を上げた。


さっきまでの余裕はどこへ行ったのか。


床をばんばん叩いている。


「クソザコベルのくせに!」


「転ばせるとかありえないんだけど!」


「痛いし!」


ベルは瞬きを繰り返した。


「え…」


目の前の光景が理解できない。


Keilflamme幹部。


ゼニエダより上の存在。


そんな相手が。


足払い一発で転んだ。


「…もしかして、弱いの?」


部屋の空気が止まった。


デッドエンドのこめかみに青筋が浮かぶ。


「弱くないし!」


勢いよく起き上がろうとして。


足がもつれた。


「うわっ」


再び床へ倒れる。


「……」


「……」


ベルは無言だった。


デッドエンドは顔を真っ赤にした。


「見るなよクソザコベル!」


デッドエンドが今度こそ立ち上がる。


転がっていた鞭を拾い上げると、びしりとベルへ向けた。


「人がやさしくしてやればつけ上がりやがって!ぶっ殺してやるっ!」


ベルも反射的に身構える。


だが。


デッドエンドは突っ込んでこない。


むしろ得意げな顔になった。


「勘違いしてんじゃねーぞ?」


言いながら、自分の頭を指でつつく。


「 あちきはゼニエダみたいに脳筋じゃねーから、自分で戦ったりしねーの!」


もう一度。


今度は何度も何度も頭を指差す。


「ここ、ここで戦うの」


ベルはじっと見つめた。


「とても…そんなキャラには見えないんだけど」


デッドエンドのこめかみに青筋が浮かぶ。


「は?」


「さっき足払いで転んでたし」


「うるせぇ!」


デッドエンドが鞭を振り回す。


「今のは不意打ちだし!」


「そうかなぁ」


「そうだし!」


そして。


デッドエンドが不敵に笑った。


口元がゆっくりと吊り上がる。


「んなこと言ってられんのもー今のうちだし」


デッドエンドが鞭を後ろ腰にしまう。


そして大きく伸びをした。


「まーね、今日は様子見に来ただけだから、そろそら帰るけどー」


ベルは警戒を解かない。


いつでも動けるよう身構えたまま睨みつける。


そんなベルを指差し、デッドエンドがにやりと笑った。


「白夜のこの街では魔王殺しは出て来れない」


ベルの目が見開かれる。


「!?」


デッドエンドはその反応を見て楽しそうに肩を震わせた。


「知ってるよー、もーちーろーん」


キャハハと笑う。


そして続けた。


「魔王殺しになれないなら、さらうのなんてかーんーたーんー」


人差し指をくるくると回す。


ゆっくり。


ゆっくりと。


ベルとの距離を詰める。


ベルは動かない。


いや、動けなかった。


デッドエンドはベルの目の前まで来ると。


すっと指先を伸ばした。


とん。


ベルの胸に指先が当たる。


「覚悟しときなー」


デッドエンドが不敵に笑う。


ベルは唇を噛み締めた。


目の前の女は弱い。


少なくとも身体能力だけなら。


だが。


それでも。


まるで追い詰められているのは自分の方だった。


「あ」


急にデッドエンドがベルの胸へ視線を落とした。


つられてベルも下を見る。


だが。


そこには何もない。


「ちょっと、な…」


訝しみながら顔を上げる。


その瞬間だった。


目の前まで迫っていたデッドエンドの顔。


ベルが反応するより早く。


唇が重なる。


ベルの思考が止まった。


何が起きたのか理解できない。


ただ目だけが見開かれる。


数秒。


あるいは一瞬。


やがてデッドエンドが唇を離した。


固まったままのベルを見て。


満足そうに笑う。


そして。


ぺちぺちと軽く頬を叩いた。


「ごちそーさまぁ」


デッドエンドはキャハハと笑う。


そのままくるりと背を向けた。


扉へ向かう。


まるで散歩でも終えたかのような軽い足取りで。


扉を開く。


そしてそのまま部屋を出ていった。


後に残されたのは。


微動だにしないベルだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ