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【World Wide Love 】― 魔王殺しと呼ばないでー  作者: KK
【第2部】第3章ーはじまりの街編ー

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仲間にならないか?ー

ベルが腕を組む。


「全て封印したら、それで終わりじゃないってのか?」


ゼニエダが肩を竦める。


「何も起きない方が不思議というものじゃないかねぇ?」


バルザックが眉をひそめた。


「…なんか知ってんのか?」


ゼニエダが首を振る。


「何もー?」


そして笑う。


「ただ」


「魔王核はその実、存在していても脅威でもなければ害もない存在」


ラインが即座に口を挟んだ。


「決してそんなことは」


ゼニエダが眉を寄せる。


「何かあるのかい?」


「具体的な実害が」


ラインが言葉を選ぶ。


「封印が解けかけた場合などには、少なからず被害があると聞いている」


ゼニエダが何度も頷いた。


「それは、中央教会の再封印儀式とかの話だよねぇ?」


「再封印に失敗しなければ災害にはならないし、そもそも再封印なんて余計なことしなければ、最初から何も起きないんだよねぇ」


ラインが押し黙る。


ゼニエダは続けた。


「我々は数十年かけて、数十個の魔王核を調べてきた」


「保管もした」


「実験にも使った」


「怪人化にも利用した」


そして両手を広げる。


「だが魔王核そのものが、勝手に何かを起こしたことは一度もない」


ウルフが腕を組む。


「そりゃ、お前らが運が良かっただけじゃねぇのか?」


「そうかもしれないねぇ」


ゼニエダはあっさり認めた。


「だが、数十年だ」


「数十個だ」


「もし本当にそれほど危険な代物なら、何か一つくらい実例があってもおかしくない」


ベルが黙って聞いている。


ゼニエダはそんなベルを見た。


「だから私は気になるんだよねぇ」


「336個」


「君が集めたその数が」


キンサシャが息を呑む。


ゼニエダの笑みが深くなる。


「1000個集まった時」


「本当に何も起きないのか」


「それとも――」


そこで言葉を切る。


「何かが起きるからこそ、昔の人間は世界中へ散らしたのか」


ベルは無言のまま、ゼニエダを見つめていた。


ゼニエダが両手を広げる。


「どうかねぇ? 魔王殺しベル・ジット。私たちと正式に組まないか?」


ウルフが呆れたように肩を竦めた。


「おいおい、あんた正気かよ?」


バルザックも眉をひそめる。


「ここまで敵対しておいて…今更だな」


ラインも静かに口を開いた。


「…さすがに理解に苦しむね」


ベルが首を傾げる。


「仲間になれってか?」


ゼニエダが満面の笑みで頷いた。


「その通り!」


一歩前へ出る。


「我々ならば、この世界のどの国家、どの機関、どの組織よりも、正確に確実に誠実に、君の力になれる自負がある」


そして笑みを深くした。


「ただ味方になる」


「保護する」


「応援する」


「そんな言葉を並べ立てるだけの国とは違ってね」


その言葉に。


ラインの目が細められる。


「それはまさか…我ルグレシアのことではないだろうね?」


ラインが目を細める。


「それはまさか…我ルグレシアのことではないだろうね?」


ゼニエダが、にこりと笑う。


「もちろん含まれているよ」


空気が僅かに張り詰める。


だがゼニエダは気にした様子もない。


「ルグレシア王国」


「中央教会」


「冒険者ギルド」


「その他諸々」


指を折りながら数えていく。


「皆、ベル・ジットの味方だと言う」


「応援すると言う」


「保護すると言う」


そして肩を竦めた。


「だが実際には何をしたんだい?」


ラインの眉が動く。


ゼニエダは続ける。


「魔王核を探すのは誰だい?」


「回収するのは誰だい?」


「封印するのは誰だい?」


ベルを指差す。


「全部、君だ」


「危険も」


「責任も」


「失敗の代償も」


「全部、君が負う」


ウルフが鼻を鳴らした。


「言いてぇことはわかるがな」


ゼニエダは頷く。


「だろう?」


そして両手を広げる。


「だが我々は違う」


「魔王核を研究している」


「怪人を作るだけの技術力もある」


「保管設備もある」


「解析設備もある」


「人材もいる」


「知識もある」


ゼニエダの目が怪しく輝く。


「君が336個集めたなら」


「336個全てを我々が解析する」


「君が1000個集めるなら」


「1000個全てを我々が管理する」


「君が知りたいなら」


「共に真実を探そうじゃないか」


キンサシャが慌てて頷く。


「そ、そうだよ!」


「どうせあんたも魔王核のことなんて全然知らないんだろ!?」


バルザックが呆れた顔になる。


「おいおい」


「勧誘されてんのか脅されてんのかわかんねぇぞ」


アカリがベルの後ろから顔を出す。


「ご主人様ぁ…」


少し不安そうだった。


ゼニエダはそんな反応すら楽しそうに眺める。


「どうかねぇ?」


「魔王殺しベル・ジット」


「我々となら」


「世界の誰よりも君の役に立てると思うんだけどねぇ」


ベルが、ふっと笑った。


「悪くない提案だな」


その瞬間。


アカリが慌ててベルの袖を掴む。


「ご主人様ぁ…」


半泣きの顔だった。


「アカリ、気持ち悪いのは無理です」


ゼニエダが満面の笑みになる。


「そうだろう?」


「君も我々と共に世界を暴いてやろうじゃないか!」


ラインが眉をひそめる。


「…世界の真実?」


ウルフも肩を竦めた。


「急に事が大きくなってきやがった」


ゼニエダは愉快そうに笑う。


「違うよ」


「君たちがおかしいのさ」


ゆっくりと両手を広げる。


「なんの実害もない魔王核を畏怖し、その実、何も調べようとも確認しようともしない」


「不思議だよねぇ」


バルザックが腕を組む。


「魔王核に何かあるってのか?」


ゼニエダは即答した。


「ないと考える神経が疑問さ」


ベルが目を細める。


「お前たちの仲間になれば、それがわかるって?」


ゼニエダの顔が輝いた。


「そう!」


「そうさ!」


両手を大きく広げる。


「さぁ、私たちと共に!」


「世界の真理に到ろうじゃないかっ!」


しばしの沈黙。


ベルが大きく息を吐いた。


「けっ、やなこった」


ゼニエダの表情が固まる。


歓喜に満ちていた顔が、一瞬で驚愕へ変わった。


「なぜ!?」


ベルが即答する。


「だって俺、お前ら嫌いだもん」


再び。


ゼニエダが固まった。


「好きとか嫌いとか、そんなレベルの話じゃないんだよねぇ!」


ベルは肩を竦める。


「いいよ」


「世界の真実は自分の手で見つけてやる」


そして親指で背後を指した。


「俺には仲間がいるからな!」


ラインが小さく笑う。


ウルフが口角を吊り上げる。


バルザックは呆れたように頭を掻き。


アカリは嬉しそうに胸の前で手を組んだ。


対するゼニエダは。


信じられないものを見るような顔で、ベルを見つめていた。


ゼニエダが額に手を当て、大きくため息を吐く。


「駄目だねぇ…話が通じない相手と論議を交わすのは、とても疲れる」


誰も何も言わなかった。


ラインは静かに腕を組み。


ウルフは肩を竦め。


バルザックは眉間を押さえている。


キンサシャですら黙っていた。


ベルだけが呆れたように頭を掻く。


「お前さぁ」


ゼニエダが顔を上げる。


「なんだい?」


ベルが半目になる。


「それ、お前が言うのかよ」


数秒。


沈黙。


ゼニエダが不思議そうに首を傾げた。


「私以外に誰が言うんだい?」


ベルは天井を見上げた。


「駄目だこりゃ」


アカリが小さく頷く。


「駄目ですねぇ…」


ゼニエダだけが納得していない顔をしていた。


「おかしいなぁ…」


ゼニエダが肩を竦める。


「ここにきて交渉決裂とは…これまで上手くやってきたと思ったのに」


ベルが心底嫌そうな顔をした。


「そう思ってるのはおまえだけだって」


ゼニエダは本気で残念そうだった。


「おかしいなぁ…」


そして周囲を見回す。


「怪人は3体ともやられ、魔王核も奪われ、ここも破棄しなくてはならない…」


小さくため息を吐いた。


「大損害だねぇ」


バルザックが鼻で笑う。


「へっ、いい気味だ」


ゼニエダはあっさり頷いた。


「その通り」


「完全敗北と言ってもいい」


その言葉に。


キンサシャの顔色がさらに悪くなる。


だが。


次の言葉で空気が変わった。


ゼニエダは笑っていた。


「とりあえず、君たちにはここで死んでもらわないといけないね」


場に戦慄が走る。


ラインの手が剣の柄に伸びる。


ウルフの肩が僅かに下がる。


バルザックも笑みを消した。


ベルが目を細める。


「まだ怪人がいるのかよ?」


ゼニエダが人差し指を左右に振る。


「怪人はもういないよ」


「私が作ったのは3体だけ」


そして。


ゆっくりと。


「でもー」


おもむろにジャケットへ手をかける。


静かな動作だった。


だが。


誰一人、目を離せなかった。


ゼニエダがジャケットを脱ぐ。


「私がいる」

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