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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第10章ー西大陸・カダブランカ篇ー
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魔王殺しピンチー

ベルはそこで、ようやく違和感の輪郭を掴みかけて、声を少し強めた。


「だからみんな……って、まさか」


その言葉に、アダラとビビが同時にニンマリと笑う。


アダラは片目を細めた。


「気付いたか?」


ビビも楽しそうに肩を揺らす。


「そうだよ〜そゆこと〜」


ベルは固まったまま、視線を二人の間で行き来させる。


「……もしかして……アダラ達だけじゃなくて……」


その問いに、アラランが気だるげに口を開いた。


「……魔王殺しが西大陸に来ているとなると、狙われるだろうな」


淡々とした断定。


アダラは腕を組み直し、軽く頷いた。


「西大陸の女、全てに」


ビビは無邪気な顔で笑う。


「魔王殺し〜ベルくんの操がピンチになるね〜」


「ダメじゃん!絶対バレちゃ」


ベルは思わず声を上げる。


アダラは肩をすくめた。


「そーゆーこった。だからこそ、私らが常に一緒にいるわけよ」


ビビは床に座ったまま、のんびりと続ける。


「護衛だね〜。命の危険はないけど〜」


アラランは小さく目を細め、淡々と締めくくる。


「さすがに死んだら、子種もなにもありませんからね」


ベルは一瞬言葉を失い、それから慌てたように顔を上げた。


「……私たちが来てることって……?」


アダラは軽く笑いながら答える。


「安心しろって、さすがに隠してるさ」


ベルは胸に手を当てて、ようやく息を吐いた。


「……そっか」


少し遅れて、安堵の色がにじむ。


アダラは腕を組んだまま、淡々と続けた。


「魔王殺しが来てるなんてバレたら……国中どころか、大陸中から男と女も押し寄せるだろーしな」


ベルは目を瞬かせる。


「男の人も?」


ビビは指を折りながら、のんびりと説明する。


「研究とか〜いろんな組織とか〜、あとは世継ぎ目当ての王族とか〜?」


ベルは苦笑しながら肩をすくめた。


「あー……なるほどー。こわい」


アダラは軽く鼻で笑い、視線を前に戻す。


「ま、そういう連中から守るのも仕事のうちってわけだ」


ビビはいつも通り、どこか楽しげに笑っていた。


アラランは椅子に体を預けたまま、ゆっくりと目を細めた。


「私、言いますよ」


その一言で、室内の空気がわずかに止まる。


三人の視線が一斉にアラランへ向いた。


ベルが戸惑い気味に口を開く。


「アララン……さん?」


アラランは気だるげなまま、ほんの少しだけ微笑んだ。


「……あまり、しつこいようなら、私、みんなに言いふらします、よ」


静かな声なのに、妙に現実味がある。


アダラは目を細めて肩をすくめた。


「おいおい……」


ビビも珍しく苦笑いを浮かべる。


「それはさすがに〜」


ベルは目をぱちぱちさせながら、状況を飲み込めずに固まっていた。


アラランは椅子に体を預けたまま、気だるげに続ける。


「それが嫌なら……」


言い切る前に、アダラが両手を軽く上げた。


「わかった!わかったって!」


ベルも慌てて一歩引くようにして頷く。


「今日のところは、これで……」


アラランは目を細め、淡々と告げる。


「今度来たら、言います」


ビビが目を丸くしながら小さく呟く。


「アラランがそんな子だとは……」


その一言が妙に重く残る中、三人は顔を見合わせる。


アダラが咳払いをして背を向けた。


「……帰るぞ」


ベルも慌ててその後に続く。


「う、うん」


ビビも軽く手を振りながら立ち上がる。


「じゃ〜ね〜アララン〜」


アラランは返事をしないまま、椅子に沈み込むようにして目を閉じた。


そして三人は、そそくさと部屋を後にした。


アラランの部屋を出たあと、外の空気はやけに軽く感じられた。


アダラは肩を回しながら歩く。


「ま、あれで一旦は終わりだな。腹減ったし、どっか寄るか」


ビビは即座に頷いた。


「さんせ〜い」


ベルは少しだけ迷うようにしたあと、小さく頷く。


「……うん、ちょっと落ち着きたいかも」


そうして三人は、アダラの提案で近くの行きつけのカフェへ向かうことになった。


街の喧騒を抜け、落ち着いた通りの一角にある店へ入ると、木の香りと静かな音楽が迎える。


「いらっしゃいませ」


店員の声に軽く会釈を返し、アダラが慣れた様子で奥へ進む。


「いつものとこ空いてる?」


案内されたのは、奥まった小さな個室だった。


扉を閉めると、外の音がふっと遠のく。


ビビが椅子に飛び込むように座り、ベルは少し遅れて席につく。


アダラは軽く腕を組み、周囲を確認してから口を開いた。


「さて……ここからはちゃんと作戦会議だな」


空気がわずかに引き締まる。


ベルがそっと手を挙げる。


「その前に、私まだ現状を把握してなさすぎる気がして……魔王殺しって世界的に、どうなの?」


その言葉に、ビビとアダラが一瞬だけ顔を見合わせた。


アダラが先に口を開く。


「各国、各組織が今もっとも注目してるのは間違いないだろうな」


ビビは軽く首をかしげる。


「逆に〜今まで何だと思ってたの?」


ベルは少し困ったように視線を落とす。


「なんか……すごい話題になってるのは知ってたけど、自分のことじゃないから実感なくて」


アダラは腕を組み直し、短く息を吐いた。


「まぁ……ミリィやお前は関係者として探られるくらいだもんな」


ビビは頬杖をつきながら、のんびりと続ける。


「そうは言ってもねぇ〜」


ベルは小さく眉を寄せる。


「危険がなかったわけじゃないけど、でも結局……」


アダラが言葉を引き取るように続けた。


「魔王殺しが解決してきた、だろ?」


ベルは小さく頷いた。


アダラはベルをまっすぐ指差したまま、少しだけ声を強めた。


「そこ、そこなんだよ」


ビビも面白がるように、同じようにベルを指差す。


「そこだよね〜」


ベルは思わず目を瞬かせる。


「え、そこって……?」


アダラは腕を組み直し、言葉を続けた。


「強いのはもちろんなんだけどさ、結局は結果出してんだよ。どんな場面でも、必ずな!」


ベルは少し考えるように視線を落とし、それから小さく頷いた。


「……たしかに」


その反応を見て、アダラは軽く息を吐く。


「だから……そこなんだよなー」


ビビは頬杖をついたまま、のんびりと笑う。


「結果出す人って〜それだけで集まるからね〜」


ベルはまだ腑に落ちきらないような顔で、静かに二人を見ていた。


アダラは椅子にもたれ直し、低い声で続けた。


「魔王殺しまでじゃないにしても、他にも強いと言われてる奴や、実際強いのはたくさんいる。けどよー……その中で実績を出して、なおかつ更新し続けてるやつなんて、そーはいねぇ」


ベルは少しだけ首を傾げる。


「そーゆーもの?」


アダラは当然のように頷いた。


「史上初、魔王を滅ぼし、かつ、今も滅ぼし続けている。しかも魔力はゼロ。魔力はないが、それ以上の謎の能力を使って、な」


その言葉に、室内の空気がわずかに変わる。


ビビは頬杖をついたまま、楽しげに目を細めた。


「これは興味もつな〜て方が、ムリだよ〜」


アダラはふとビビの方へ視線を向ける。


「ビビは私が会いに行こうとした時、止めたじゃんか」


言いながら、軽くビビの服を引っ張る。


「ちょ、や〜め〜て〜てば〜」


ビビは慌てて胸元を押さえながら身をよじる。


「こぼれる〜こぼれちゃうから〜」


アダラは呆れたように手を離し、小さく息を吐いた。


ベルはそのやり取りを見てから、ゆっくりと視線を落とす。


「……なんか、思ったよりすごい反応なんだね」


ベルは少しだけ視線を落とし、ぽつりと呟いた。


「もうちょっと……私も真剣に考えないとダメなんだね……」


アダラはすかさず頷く。


「そーだぞ。お前はもっと考えろ」


ビビは頬杖をついたまま、のんびりと笑った。


「自分のことで〜手一杯って感じあるもんね〜」


その言葉に、ベルは一瞬だけ目を瞬かせる。


「実際そうなんだけど……やっぱり周りからもそう見えるんだ」


小さく苦笑いを浮かべるが、その表情にはわずかな影が落ちていた。


アダラは少しだけ真面目な目になり、コップを指で軽く弾く。


「見えるっていうか、事実だな。だからこそ、巻き込まれやすい」


ビビも珍しく肩をすくめる。


「でもまぁ〜そこがベルのいいとこでもあるしね〜」


ベルはその言葉に、少しだけ困ったように笑うと、姿勢を正して、視線を二人に向けた。


「アダラとビビ、と言うよりカダブランカはどうなの?」


アダラは顎に手を当てる。


「どうって、どう扱うかってことか?」


ベルがこくりと頷く。


アダラはあっさりと答えた。


「言ってなかったか?私らはルグレシアとの協定もあるし、魔王殺しは観察観測までって感じだなー」


ベルはわずかに眉を寄せる。


「でも……2人は会いにきたじゃない?」


アダラは一瞬だけ視線を逸らし、肩をすくめた。


「あん時はビビのことがあったからなー」


「……それじゃ今は、あの2人の英雄核保持者のことでだけ、と思っていいんだよね?」


アダラとビビは顔を見合わせる。


次の瞬間、アダラがにやりと笑った。


「いんにゃ?私も隙あらばベルを貰うつもりだが?」


ビビも軽い調子で手を上げる。


「わたしも〜常に狙ってる〜」


ベルは固まったあと、思わず声を上げた。


「なんでー!?」


アダラは当然のように肩をすくめる。


「なんでって……どうせなら強い子供欲しいだろ?」


その言葉に、ベルは一瞬言葉を失う。


「そこは……あくまで西大陸なのね」

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