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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
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男にも意地があるー

ラインVSアベル


砂煙の中、アベルの炎と高振動破砕腕が暴れまわる。


ラインは素早く身を翻し、地面の裂け目を踏み越えながら、雷の力を指先に集中させる。

呼吸を整える間もなく、次の攻撃のタイミングを探る。


「……ここで決める!」


低く呟き、右腕を振り上げる。

破砕の振動と雷の電撃が合わさり、地面を裂き、周囲の砂利を巻き上げた。


アベルは咆哮のように叫び、炎の波動を増幅させる。

右手の火炎高振動破砕腕が再び振り下ろされ、砂煙の中で爆発的な衝撃を放つ。


ラインは目の前の熱と振動をぎりぎりでかわし、左手の拳銃を構えて正確に弾丸を撃ち込む。

砂煙に紛れても、狙いは外さない。


「効くか……!」


アベルの体勢が揺れる。

だが、炎と振動が生み出す圧力に抗い、なおも前に進もうとする。


ラインも止まらない。

右腕の破砕腕を回転させ、衝撃を増幅。

左手の拳銃からは精密な弾丸が連射される。


至近距離で交錯する衝撃と火炎、そして振動。

砂利が舞い、地面が裂け、戦場全体が二人の力で揺れる。


「まだ……終わらせはしない!」


ラインは低く踏み込み、次の一撃の間合いを詰める。

雷の力を全身に巡らせ、アベルの姫神能力の炎と振動を抑え込むように攻撃のタイミングを狙う。


アベルの瞳が金色に輝き、右手の破砕腕が再び火を纏う。

振り下ろされる瞬間、砂煙の向こうでラインは体を低く沈め、雷の力を最大限に集中させた。


空気が震え、地面が軋む。

二人の力がぶつかり合い、戦場に轟音と光が迸る。


ラインの手が聖剣スターブレイカーを握り締める。


魔力が全身を駆け巡り、剣に限界まで注がれる瞬間――

空気が震え、世界そのものが圧迫されるかのような感覚が周囲を覆う。

聖剣は光を溢れさせ、まるで星々の輝きを一身に集めたかのように眩く、空間を切り裂く力を帯びた。


「お、おい、ちょっと待て!そんなもん……」


アベルの声は震え、光の奔流に飲み込まれる。


「対人戦で使いたくはなかったが……やむなし!」


ラインは全身の力を剣に集中させ、大上段から振り下ろす。

剣先から放たれる光の奔流は、地面を砕き、港街を包む砂煙を白銀に染め上げる。

振動が地面を裂き、石の壁を震わせ、吹き飛ぶ瓦礫が雷光のように散乱する。


「……ッ!」


光と振動の波動は空間を渦巻き、天を焦がすかのような轟音を響かせる。

星をも砕くと謳われた聖剣の力が、圧倒的な速度と破壊力を伴ってアベルへ襲いかかる。

燃え盛る炎、砕ける瓦礫、爆発する砂煙の中、聖剣の光はあらゆる影を飲み込み、荘厳に輝きながら敵を圧倒する。


ラインはその場に片膝をついた。


豪華ではないが整った鎧は、全体的に焼け焦げ、深く傷ついている。


「殿下から賜ったこの鎧でなければ危なかった……殿下、ありがとうございます」


ラインは聖剣を柄に収め、ゆっくりと立ち上がる。

そして、遠くに吹き飛ばされたアベルの方へ歩き出した。


視線の先には、ほとんど吹き飛んだ石畳。

背後に立ち並んでいた倉庫の多くも、原型を留めていない。

聖剣スターブレイカーの破壊力を、改めて思い知らされる光景だった。


「やはりこれは……人に向けるべきではないな」


一瞬、視線をアベルに戻す。


「もっとも、彼はこれすらものともしなかったわけだけど」


ラインの唇がわずかに緩む。

疲労と緊張の中にも、覚悟と確かな実感が刻まれていた。


ラインはアベルの元へ歩み寄った。


おそらくスターブレイカーの力を受け止めたのだろう、魔装義肢の右腕は見事に潰れ、もはや腕の形を留めていない。


だが、その破壊の中でひときわ輝く指輪が目に入った。

ラインはそっと手に取り、光を確かめるように見つめる。


「なるほど……これがベル君の」


指輪をしっかりと握りしめると、ラインはその場に両膝をつき、アベルの胸に耳を当てた。


「よかった……息はある」


ラインはアベルの胸に耳を当てたまま、しばらく呼吸を確かめる。


指輪を握る手に力を込めながら、ふと微かに笑みを浮かべる。


「これで、彼は僕のことを友と認めてくれるだろうか」


言葉は柔らかく、爽やかに響いた。

戦場の荒廃を前にしても、ラインの瞳には穏やかな光が宿っている。


ラインVSアベル戦決着

姫神エンカ奪還



ミーファVSドベルク


月光が濡れた石畳を淡く照らす。港の倉庫の影が長く伸び、夜風が二人の間を冷たく吹き抜ける。


ドベルクは両手に大剣を握ったまま、だらりと下げて静かに立つ。義足で地面を踏みしめ、銀髪の間から覗く瞳は無表情で、相手を射抜くように見据えていた。


対するミーファは、地面に突き刺さった十字架の上に立ち、鋭い瞳でドベルクを見据える。金髪が夜風に揺れ、そばかすの頬に月光が柔らかく当たる。


二人の間の空気は張り詰め、港の夜が静かに戦いの幕開けを見守っていた。


しばらくジッとミーファを見つめていたドベルクが、ゆっくりと口を開く。


「聞いても、いいだろうか?」


月光に照らされた金髪が揺れる。ミーファは表情を崩さず、静かに頷いた。


「はい。なんでございましょう?」


ドベルクの視線は微動だにしない。


「ここへは何をしに?」


わずかに息を吸い、ミーファは迷いなく答える。


「弟のような子と、妹のような子、二人のために、ここにいます」


風が二人の間を抜ける。沈黙が一瞬だけ落ちる。


「つまり、戦いに来たと?」


ミーファの瞳がわずかに細められる。


「できればシスターとしての私は平和的に解決したいと考えておりますが、あなたのその左手につけた指輪。あの子の物なのです。返しては、いただけませんか?」


ドベルクはゆっくりと左手を見下ろす。指輪が月光を受けて淡く光る。


「これか、これは返せない。申し訳ないが」


ミーファは頬に手を当て、眉を寄せる。小さく息を吐いた。


「そうですか……それは困りました……」


そのまま、わずかに首を傾ける。


「それでは――」


ミーファが十字架から飛び降り、地面に突き刺さった十字架を手に取る。小さく華奢な身体に対して不釣り合いな十字架を肩に担ぐ姿は、奇妙でさえあった。


「だったら、ぶち殺すしかねぇよなぁ!」


先程までのシスター然とした面影は消え、凶悪な笑みが彼女の顔を覆う。


その瞬間を受け、ドベルクは両手に持った剣を交差させ、静かに構えた。


「つまり――戦うということだな」


鍔迫り合いなどせず、弾かれた反動を利用し、ミーファはすぐさま反対側から十字架を振り下ろす。ドベルクは両手の剣で受け止める。


その攻防が何度も繰り返され、息を切らしたミーファは地面に立てた十字架にもたれ、肩で大きく呼吸を整える。


「や、やるじゃねぇか」


「俺はまだ、何もしてないが」


「うっせぇ!ちょっとでかいからって調子に乗りやがって!」


ふたたび十字架を大きく振り上げ、真上から叩きつけるミーファ。ドベルクは剣で受け止め、軽く押し返す。


勢いで後方に飛ばされたミーファは尻餅をつき、荒い呼吸を落ち着けようと大きく息を吸い、咳き込む。


ドベルクはミーファのシスター服の裾を踏み、剣をその喉元に突きつける。


「もう、やめないか?」


「うっせぇ…」


「お前はとても、戦えるとは思えない」


「てめぇこそ…戦いに向いてるとは思えねぇなぁ」


「ハリス帝国親衛隊である俺に対して、負け惜しみも大概に…」


「ちげぇよ。てめぇは自分の顔を鏡で見たことねぇのか? てめぇは戦いが好きなんじゃねぇ、弱いものいじめが好きなんだろうがよ!」


「何を言う。兵士としてそんなことは―」


「だから鏡見ろって、おめぇ今、めっちゃ目が笑ってるぞ」


無表情に見えたドベルクの瞳は、確かに笑っていた。


「それは―」


ドベルクがミーファに突き付けていた片方の剣を地面に突き立て、空いた手で目元を覆う。


「バレちまったなら仕方ないねぇ」


その顔が、凶悪に歪む。


「やっと本性だしやがったな…」


ミーファの頬を汗が伝った。


ドベルクの唇が歪む。


「そうさ、俺は弱いものいじめが大好きなのさ。特にお前みたいな小さな子供の泣き叫ぶ姿がたまらなくねぇ」


「この、ヘンタイめ」


「いいーねぇー、もっと罵ってくれたまえ。生意気で反抗的であるほど、躾けるのが楽しいんだ」


「やはり何事も、手間のかかる方が愛着も湧くと行くことなんだろうねぇ」


「こいつ…」


ミーファの瞳が鋭く光る。肩で荒い息をつきながらも、十字架を握る手に力を込めた。


ドベルクが先程手放した剣を取り、改めて両手に握る。足はまだ、ミーファのシスター服の裾を踏んだままだ。


「ほら、ほらほらほら」


ゆっくりと、服に切れ込みを入れていく。


「何しやがる!シスターの服も高ぇんだからな!」


「大丈夫だよ。もう今日を最後に、服を着る必要なんてなくなるんだから」


「なんだと?」


「君のことが気に入っちゃったんだよねぇ。ぜひペットにしたいと思って」


ミーファの背筋を寒気が走る。


「このぉ..ヘンタイめ」


「そんなこと言ってーどうするんだい?ほらほら、もうすぐ服もなくなってしまうよ?」


ミーファは胸元を手で必死に隠しながら、低く唸る。


「てめぇ…ぜってぇぶっとばす」


「うん、いいね!がんばってよ」


ほとんど原型を留めなくなったシスター服の裾を踏まれたままでいたミーファが、その裾を引きちぎり、立ち上がる。


「今だ!」


十字架を肩に担ぎ、振りかぶってドベルクの頭を狙う。


「ぶっとべっ!」


ドベルクはやれやれといった表情で片手で十字架を受け止めようとするが、前蹴りが顔面に直撃する。


「なっ…」


「油断大敵ってやつだな!」


続けざまに、左右のコークスクリューパンチが交互にドベルクの両頬を抉るように打ち込まれ、右膝蹴りが顔面にささる。


よろめいたドベルクは、タイミングを見計らい後ろに飛んで大きく距離を取る。


「おもしれーよなー、自分を圧倒的勝者と思って油断してるやつに一泡喰らわせるのはよー、スカッとするよな!」


ニヤリと笑った。


シスター服を脱ぎ、下着姿になったミーファは十字架を肩に担ぐ。重さに負けず、いつでも振り下ろせる構えを作る。


やがて、ドベルクは頭を振りながらゆっくりと立ち上がる。両手に持った剣を鞘に納め、さらに鞘ごと地面に下ろした。


「……なんのつもりだよ?」


ミーファが警戒した声を上げる。



「いやなに、君のことは直接痛めつけてやらないと気が済まないなーと思ったんだよねぇ」


「それはそれは、いっぺん本性出すと素直になるもんだなぁーおい」


「いいかーい?行く、よ」


ドベルクの足裏から車輪が出て、体制を変えないまま急加速で、ミーファの目前に迫る。


そのまま、動くまもなく立ちすくむミーファの鳩尾ちに、ドベルクの膝が突き刺さる。


ミーファが声も出せず、その場にうずくまる。


ドベルクはため息混じりに呟く。


「やれやれ、やっとおとなしくなったねぇ。小さい子はおとなしい方が可愛いよ」


そのまま、ミーファの背中に足を乗せ、鋭い視線を落とす。「いいねー、やっと俺の好みになってきたよ」


ドベルクは低く笑いながら左手の指輪に意識を集中させる。「殺す気はないから安心して欲しい」


瞬間、彼の右手の前に大きな水の球が生まれる。そのまま――「ほら」と、ミーファの顔めがけて押し出す。


衝撃と共に、ミーファの顔は水の中に飲み込まれる。息ができず、声も出せず、必死にもがく彼女の姿を、ドベルクはまるで子犬を愛でるかのように愉快そうに眺めていた。触れても掴めない水の球は、完全に彼女を閉じ込めている。


やがて、水の中でもがき続けていたミーファの動きは次第に鈍くなり、ついには完全に止まった。時折、身体が小さくピクリと痙攣するだけだった。


ドベルクは低く鼻で笑い、パチンと指を鳴らす。すると、ミーファの顔を覆っていた水の球は弾けて消え、うつ伏せに倒れていた彼女の体を、ドベルクは軽く蹴って仰向けにする。


「呼吸が止まっている、死んだ、か」


壊れたおもちゃを眺めるように、つまらなさそうに目を細めるドベルク。


やれやれと背を向け、地面に置いた剣を手に取ろうと前屈みになった瞬間だった。


ミーファの両目が、ぱっと見開かれる。咄嗟に反応するドベルクの身体よりも早く、ミーファは肩に担いだ十字架を振り上げた。その十字架は勢いそのまま、ドベルクの股間を突き上げた。


前のめりに倒れるドベルク。くるくると回った勢いのまま、ミーファもよろめき倒れる。しかし、すぐに大きく息を吸い込み、肩で呼吸を整える。


「ハァーッ……死ぬかと思った!」


口元に笑みを浮かべ、ミーファは肩で息を整える。

「いやー、ガキの頃、シスターアリスに風呂に沈められた経験がここで活きるとはな!」


そして迷わずドベルクの左腕に手を伸ばし、指輪を手に取る。見覚えのある輝きを確かめると、ミーファは力強くガッツポーズを取った。


「よっし!おかえり、ミズキ」



ミーファVSドベルク決着

姫ミズキ奪還

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