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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
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ベル参戦ー

港の波音が低く響く。


銀色の髪が夜風に揺れる少年――ベルが立っていた。


視線は目の前の船に向けられる。


「みんな、ありがとう。行くぜ!」


低く、しかし力強く呟く。


足を踏み出し、船の甲板に上がろうとしたその瞬間――


甲板の影から鋭い影が飛び降りてきた。


両手に抱えた大剣――刃先が月光を反射する。


「――っ!」


ベルの視線が一瞬で跳ね上がる。


ドベルクが斬りかかる。


高速の軌道で振り下ろされる大剣。


夜の空気を切り裂く鋭い風圧。


「……来やがったな」


ベルは踏み込み、両腕を広げる。


足元の波止場の板を蹴り、体勢を低くして大剣をかわそうとする。


刃が迫る。


鋭い音と共に、水面に近い波止場の板が軋む。


衝撃が伝わる。


ベルの銀髪が光を受け、ふわりと揺れる。


だが少年の目は揺るがない。


次の瞬間――


「……避ける!」


身を捻り、刃の下をすり抜ける。


ドベルクの大剣が空を切る音だけが港に響いた。


波が軽く跳ねる。


ベルの手は甲板に伸び、上がろうとする。


だが、戦いはもう始まっている。


ベルは甲板に片手をかけ、わずかに息を整える。


だが、心臓は早鐘のように打つ。


「――まずい、いきなりか……」


内心で焦りが走る。


目の前。


ドベルクは地面に着地した瞬間、その巨体をゆっくりと構え直す。


両手の大剣を交差させ、十字に構えた。


刃の間から、月光が冷たく反射する。


「……こいつ、全力か」


ベルの視線が鋭くなる。


避けるべき距離、タイミング――瞬間に判断しなければならない。


ドベルクの息遣いが、静かに夜の港に響く。


鋭い重圧。


十字に構えられた大剣が、少年の身を押し込むように感じられる。


「……行くしかない!」


ベルの手が甲板に伸び、上がろうとする。


しかしその動きを、ドベルクの十字構えが、完全に阻んでいた。


鋭く冷たい視線。


迫る刃。


少年の焦燥と、敵の圧倒的威圧が、港の夜に張り詰める。


港の静寂を、突然の轟音が切り裂く。


「――何だ!?」


ベルの視線が跳ね上がる。


暗闇を切り裂くように、巨大な十字架が飛んできた。


石畳を蹴散らし、轟音とともに目の前に突き立つ。


「っ……!?」


爆風と衝撃で、港の木製の波止場が軋む。


砂塵が舞い上がり、視界を一瞬奪う。


ベルの心臓が跳ねる。


石畳は粉々に砕け、十字架の先端が月光に輝く。


その圧倒的な存在感に、思わず身体が後ずさる。


「……くそ、間一髪か!」


振り返れば、十字架を放った者の気配はまだ残っている。


轟音の余韻が港の夜にこだまする。


「な、なんだこりゃ……」


「……念の為、待機していたら予想通りと思ったが……これはまた想定外なものが飛んできたな」


ベルは巨大な十字架を見下ろし、心臓が高鳴る。


石畳は粉々に砕け、周囲の波止場も揺れる。


ドベルクは両手の大剣を十字に構えたまま、冷静に十字架の位置を見据えていた。


「……くそ、何が起こるかわからん……!」


ベルの額に汗が浮かぶ。


港の夜に、緊張の間が張り詰めたまま、静かに時間が流れる。


その月明かりの下、


地面に突き立つ十字架の上に、いつの間にか人影が――


小さな背中にシスター服を纏っていた。


「おいおいおいおい、嘘だろ?」


振り向くと、金髪にそばかすの顔。


「ベル坊、こんなとこで足止めくってんじゃねぇよ!とっとと行きやがれ!」


「ね……姉ちゃん」


足元の波止場を見下ろすベルの視線は迷いがちだ。


心配そうに眉を寄せ、目を細める。


「いや、でもさ!」


ミーファは十字架の上で両手を広げ、声を張る。


「うるせぇ!喋る暇があるなら足動かせ!」


仕方なく、ベルは深く息を吸い込み、甲板に手をかける。


木製の板が軋む音が響く。


波風に揺れる船体に、少年の体が小さく跳ねる。


「……行くしかないか」


拳をぎゅっと握り直し、慎重に足を踏み出す。


ミーファは十字架の上から鋭い視線を向け、港の夜にその声を響かせた。


「気をつけろよ、ベル坊!」


少年はうなずき、船の甲板へと一歩ずつ上がっていく。


ミーファVSドベルクー開戦




ベルは甲板に降り、木製の板を踏みしめながら、船内へと続く扉に向かおうと歩き出した。


甲板は広く、周囲の波風に揺れる船体が遠くまで見渡せる。


扉がゆっくり軋む音を立て、そこから一人の女性が姿を現した。


キリキリと金属の擦れるような音を鳴らしながら、


赤毛を整えた軍服に身を包み、右目に眼帯をつけたその姿は、甲板の広い空間に圧倒的な威圧感を放っていた。


鋭い瞳と、月明かりに映える赤毛。


口元には恍惚に歪んだ笑みが浮かぶ。


ベルは思わず足を止め、背筋がピンと張る。


「お前が……ブリジット将軍、か?」


低く、しかし決意を込めて呟き、拳を握り直す。


「魔王殺しーだな。来ると思っていたぞ」


ブリジットは冷酷非道かつ残忍な目で少年を見下ろし、淡々とした口調で言った。


「理想やロマンに縋る愚か者どもめ……吾輩が修正してやる」


港の夜風と波音が混じる甲板に、二人の間に張り詰めた緊張が重く漂った。


ベルの胸は早鐘のように打ち、決意を抱えつつも、目の前の女性の圧に飲まれそうになる。



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