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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
189/397

意地のぶつかり合いー

パティVSエレン


黒のメイド服を纏った長身の女が、静かに歩を進める。


太い三つ編みが背で揺れ、紫がかった瞳が周囲を舐めるように動く。

視線は常に動き、足取りは迷いがない。


「……気配、薄いですね」


小さく呟く。


返答はない。


代わりに――足元。


わずかな違和感。


踏み込む寸前、止める。


「……」


視線を落とす。


地面。


ほんの僅かに不自然な土の盛り。


その瞬間、後方から声。


「気付くか。やっぱりな」


振り向く。


金髪の坊主頭の男――エレンが、肩の力を抜いたまま立っている。


「罠は嫌いか?」


軽い口調。


だが目は笑っていない。


パティは一歩、横にずれる。


「問題ありません」


足元を避ける。


次の瞬間――


踏んだ。


別の場所。


「っ……」


爆ぜる。


地面が弾ける。


衝撃。


煙が上がる。


その中から、影が飛び出す。


無傷。


「二重ですか」


着地と同時に距離を詰める。


一直線。


エレンは動かない。


「いい判断だ」


指を鳴らす。


その瞬間――周囲が変わる。


音。


金属が擦れる。


ワイヤー。


四方から伸びる。


「……拘束狙い」


パティは止まらない。


踏み込む。


低く潜る。


ワイヤーをすり抜ける。


そのまま間合いへ。


ククリナイフが逆手で閃く。


「近づけば――」


だが。


エレンは一歩引く。


「そう来るよな」


足元。


起爆。


至近距離。


爆発。


「っ!」


衝撃で軌道が逸れる。


だが完全には止まらない。


刃が掠める。


エレンの頬に浅い傷。


血が滲む。


「お、当たるか」


感心したように言う。


パティは無言。


追撃。


踏み込む。


だが――


止まる。


「……?」


違和感。


足が、重い。


見下ろす。


細いワイヤー。


足首に絡みついている。


「三段目だ」


エレンが呟く。


引かれる。


体勢が崩れる。


その瞬間――


地面。


複数の起爆点。


「……なるほど」


小さく息を吐く。


爆発。


連鎖。


衝撃が叩きつける。


煙が上がる。


静寂。


その中から――


歩いて出てくる。


「効率的です」


服は焦げ、だが動きに支障はない。


目は変わらず冷静。


エレンが口笛を吹く。


「タフすぎだろ……」


肩を回す。


「じゃあ、もっと重ねるか」


周囲の空気が変わる。


設置済み。


すでに、この場は罠だらけ。


パティは静かに構える。


両手の刃がわずかに下がる。


「……すべて把握しました」


一歩、踏み出す。


迷いがない。


「なら、潰します」


次の瞬間――


地面が連続して爆ぜる。


だがその中を、一直線に突き進む影。


罠を“踏みながら”進む。


「は?」


エレンの目が見開かれる。


速度が落ちない。


むしろ加速する。


「止まらないのかよ!」


次の瞬間、間合いが消える。


至近距離。


刃が振り上がる。


戦いは――一気に詰みに近づいていた。


至近距離。


振り上げられたククリナイフが、迷いなく落ちる。


だが――


「甘い」


エレンの左手が開く。


次の瞬間、五指から電磁ワイヤーが射出される。


近すぎる距離。


回避は間に合わない。


「……っ」


パティは咄嗟に腕で受ける。


絡む。


巻き付く。


そのまま――


「流れるぞ」


電流が叩き込まれる。


鉄甲から、鎖帷子へ。


全身へ一気に走る。


「――っ!」


身体が硬直する。


筋肉が強制的に止められる。


振り下ろしかけた刃が止まる。


「その装備、いい鎧だが……電気は逃げ場がない」


さらに出力が上がる。


痺れが深くなる。


膝が落ちる。


動きが完全に止まる。


「これで――」


右手に炎が灯る。


至近距離。


回避不能。


振り下ろされる。


その瞬間。


「……まだ、です」


無理やり、前に出る。


硬直したまま、踏み込む。


「なっ……!?」


炎を受けながら。


焼けながら。


距離を潰す。


至近距離。


「捕捉しました」


鉄甲でワイヤーを掴む。


電流がさらに流れる。


だが離さない。


逆に引く。


強引に。


「くそっ……!」


エレンの体勢が崩れる。


そのまま引き寄せる。


膝が上がる。


全体重を乗せる。


「……っ!」


叩き込む。


鈍い衝撃。


エレンの身体が浮く。


吹き飛ぶ。


地面を転がる。


それでもすぐに起き上がる。


「はぁ……マジで来るか」


息を吐く。


左手を振る。


ワイヤーが戻る。


右手の炎が揺れる。


視線が鋭くなる。


パティはその場に立つ。


わずかに呼吸が乱れている。


脚が、ほんの僅かに遅れる。


「……電撃、厄介ですね」


低く呟く。


だが構えは崩さない。


「ですが――問題ありません」


エレンが笑う。


「いや、問題あるだろ」


左手が再び開く。


ワイヤーが唸る。


右手の炎が膨らむ。


「次はもっと深く流す」


空気が張り詰める。


痺れと熱。


二つの殺意が交錯する。


次の瞬間――


再び激突した。



マリーナVSアイリーン


長い金髪を後ろで束ねた女が、ゆっくりと足を止める。


腕を組んだまま。

視線だけが、上へ向く。


高所。


そこに――銀髪の女。


微動だにせず、長大な銃を構えている。


次の瞬間。


――発砲。


「……っ」


マリーナは最小限の動きで身体をずらす。


弾丸が頬を掠める。


遅れて、背後が爆ぜた。


振り向かない。


「いい腕ね」


低く、静かに言う。


次弾。


間を置かずに来る。


「でも――」


踏み込む。


一直線ではない。


わずかに軌道をずらし続ける。


三発。


全てが“当たる位置”を通過する。


だが、当たらない。


「弾道が読めているぞ」


短く吐き捨てる。


足元に雷が走る。


バチ、と音が鳴る。


加速。


景色が流れる。


距離を一気に詰める。


だが――


高所からの一発。


角度が違う。


落ちてくる弾丸。


「……!」


咄嗟に体を捻る。


肩を掠める。


血が散る。


それでも止まらない。


「厄介な武器だな」


息を整えながら、さらに踏み込む。


その瞬間。


違和感。


次の弾が“遅れて”来る。


「時間差……?」


着弾。


爆ぜる。


衝撃で体勢が崩れる。


だが倒れない。


踏みとどまる。


「ならば――」


マリーナの全身に雷が走る。


詠唱。


同時。


高速。


一つではない。


二つ、三つ――重ねる。


「展開」


分身。


複数のマリーナが同時に動く。


それぞれが別の軌道を描く。


速度も、動きも違う。


本物と見分けがつかない。


「……見切れるか?」


高所。


アイリーンの目が細まる。


スコープが動く。


――発砲。


一人が弾ける。


消える。


幻。


次。


また消える。


だが止まらない。


全てが一斉に詰める。


距離が一気に縮む。


「本体は――」


その瞬間。


真上。


「遅い」


マリーナが跳んでいる。


雷を纏った身体が、空中から落ちる。


トンファーが振り下ろされる。


だが――


アイリーンは銃を横に構える。


受ける。


衝突。


火花。


至近距離。


「狙撃だけじゃないというわけか」


マリーナが言う。


「当然」


短く返す。


次の瞬間。


至近距離で発砲。


「……っ!」


マリーナは身体を捻る。


だが避けきれない。


衝撃が叩き込まれる。


吹き飛ぶ。


地面に着地。


滑る。


だがすぐに立つ。


「いいだろう。受けて立とう」


口元を拭う。


血。


だが目は死んでいない。


雷がさらに強くなる。


空気が震える。


アイリーンが再装填する。


動きは変わらない。


無駄がない。


距離はもう遠くない。


逃げ場もない。


次は――


純粋な撃ち合いと速度の勝負。


戦いは、さらに加速する。


至近距離。


火花が散る。


トンファーと銃身がぶつかり、硬質な音が響く。


マリーナは一歩引く。


視線は逸らさない。


その先で――


アイリーンが、構えていたライフルを静かに下ろした。


そのまま、地面へ置く。


「……切り替えか」


短く吐き捨てる。


次の瞬間。


アイリーンが飛び降りた。


高所から、一気に。


着地。


膝で衝撃を殺し、即座に前を向く。


無駄がない。


同時に――両腕。


装甲が展開する。


金属音。


「来るか!」


マリーナが構える。


その瞬間――


右腕が射出された。


ロケットパンチ。


一直線。


速い。


「っ!」


横へ回避。


掠める。


だが――


「!」


遅れて、左。


時間差。


背後から迫る。


「二段か!」


咄嗟に身体を捻る。


衝撃が掠め、体勢が崩れる。


そこへ――


アイリーンが踏み込む。


射出された右腕が戻る。


接続――と同時に変形。


銃身が展開する。


右腕そのものが機関銃へと切り替わる。


発砲。


至近距離。


連射。


「上等だ!」


マリーナが踏み込む。


雷が弾ける。


加速。


弾丸の雨を強引に抜ける。


被弾を無視して前へ出る。


一気に距離を詰める。


だが――


左腕。


装甲が滑るように開く。


内部から刃。


ナイフが形成される。


振るう。


トンファーとぶつかる。


火花。


至近距離での打撃と斬撃。


高速で交差する。


マリーナの足に雷が走る。


蹴り。


加速付き。


アイリーンが受ける。


だが完全には流しきれない。


わずかに体勢が崩れる。


その隙。


踏み込む。


追撃。


だが――


「甘い」


右腕。


再び射出。


接続された瞬間からの即時ロケットパンチ。


至近距離。


「っ……!」


トンファーで受ける。


衝撃。


吹き飛ぶ。


着地。


滑る。


止まる。


マリーナが顔を上げる。


血が頬を伝う。


「……いいな」


低く言う。


全身に雷が走る。


「もっと来い」


アイリーンは無言。


右腕は機関銃のまま。


左腕の刃をわずかに傾ける。


構えが落ちる。


距離は再び中間。


だが意味はない。


互いに、一瞬で詰められる。


次の瞬間――


二人は同時に踏み込んだ。



ラインVSアベル


静かだった。


風の音だけが、場を撫でる。


整った鎧。

無駄のない立ち姿。


男は、ゆっくりと一歩進み出た。


その動きだけで、空気が締まる。


対する男は、軽く肩を回した。


構えは低く、無駄がない。


互いに、動かない。


間合いを測る。


わずかな呼吸。


「……行く」


ラインが低く告げる。


踏み込む。


速い。


だが荒くない。


一直線。


最短。


剣が振り下ろされる。


正確。


だが――


「甘い」


アベルが動く。


最小の動きで外す。


同時に、踏み込む。


反撃。


だが届かない。


ラインはすでに次へ移っている。


剣が返る。


横薙ぎ。


間合い管理。


逃がさない。


「……なるほど」


アベルがわずかに笑う。


再び距離が詰まる。


連撃。


一撃一撃が、無駄なく繋がる。


重さではない。


確実性。


逃げ場を削る剣。


「綺麗だな」


アベルが言う。


だが下がらない。


受ける。


流す。


捌く。


一歩も崩れない。


「しかし――」


踏み込む。


強引に間合いを潰す。


「軽い」


拳が来る。


剣を振る間合いではない。


だが――


ラインは下がらない。


「問題ない」


剣を引く。


ではなく――


柄で受ける。


衝撃。


鎧が鳴る。


だが体勢は崩れない。


そのまま、足をずらす。


位置を取る。


至近距離。


「そこだ」


突き。


最短。


喉元へ。


「っ……!」


アベルが逸らす。


だが完全ではない。


浅く入る。


血が滲む。


距離が開く。


互いに一歩下がる。


呼吸は乱れていない。


「……やるな」


アベルが笑う。


ラインは構えを崩さない。


「まだだ」


視線は揺れない。


剣先が、わずかに下がる。


「ここから先は通さない」


空気が張り詰める。


次の一手で、均衡は崩れる。


剣と拳。


距離が開く。


互いに一歩。


空気が張り詰める。


アベルが、右手を軽く振った。


鈍い金属音。


義肢。


その表面が、微かに震え始める。


低い振動音。


空気が細かく揺れる。


同時に――左手。


拳銃が抜かれる。


「……面白ぇな」


口元が歪む。


「これはどうだ」


踏み込む。


速い。


直線。


同時に――発砲。


銃声。


「――っ」


ラインは身体をずらす。


弾丸を紙一重でかわす。


だがその隙に――


右腕。


振り抜かれる。


高振動。


空気が裂ける。


ラインは剣を合わせる。


受ける――が。


「……!」


刃が震える。


削れる。


即座に引く。


間一髪。


「高振動か」


短く吐く。


「正解だ」


アベルが笑う。


再び発砲。


牽制。


回避を強制する。


その先に――右腕。


叩き込む。


連携。


「ちっ……」


ラインは捌く。


避ける。


足を使う。


だが間合いが削られる。


「逃げ場、ねぇぞ」


踏み込む。


銃声。


同時に振動腕。


挟み込むような攻撃。


回避は一方向に限定される。


その瞬間。


ラインは踏み込んだ。


前へ。


「……っ」


弾丸の軌道を外し、懐へ潜る。


振動の外。


至近距離。


「そこだ」


剣が走る。


最短。


胴へ。


「!」


アベルが捻る。


だが避けきれない。


浅く斬れる。


血が滲む。


だが止まらない。


「いいな!」


右腕が振り上がる。


至近距離での高振動。


回避は困難。


ラインは身体を沈める。


最小限で外す。


地面が砕ける。


粉塵が舞う。


その中。


銃声。


「っ……!」


肩を掠める。


距離が開く。


互いに離れる。


アベルの右腕はなおも震えている。


左手の拳銃がわずかに上がる。


隙がない。


ラインは剣を構え直す。


刃の状態を一瞬で確認する。


「厄介だな」


低く呟く。


足を開く。


重心が落ちる。


「だが――」


視線が鋭くなる。


「見えた」


アベルが笑う。


「ほう?」


振動音が強くなる。


銃口がわずかに動く。


次の一手。


それが勝敗を分ける。


静寂のあと――


同時に、踏み込んだ。



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