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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
188/400

戦闘開始ー

アンジュ隊VSモーリス


真紅の鎧が、わずかに軋む。


アンジュは一歩、前へ出た。

背に負った大剣が揺れるが、抜かれる気配はない。


「参りますわ」


後方で、白装束の男――リックスが静かにサーベルを抜く。


「リーダー、その役目、この私が支えましょう」


さらにその後ろ、巨体――バロムが一歩踏み出す。


「……任せろ」


低い声。短く、それだけ。


対するモーリスは、首を鳴らした。


「来いよ、まとめて相手してやる」


次の瞬間――アンジュが踏み込む。


地面が弾け、距離が一瞬で消える。


右手の鉄鞭がしなり、一直線に首元へ走る。


「まずは様子見ですわ!」


空気を裂く一撃。


だがモーリスは動かない。


「甘ぇ!」


振り下ろされる軌道に、左腕を叩き込む。


鈍い衝突音。


弾かれた瞬間、アンジュの姿が横へ消える。


「では――こちらはどうですの!」


死角から短剣が閃く。


しかし――止まる。


まるで鋼に当たったかのように。


「軽いな」


振り向きざまの拳。


だが当たらない。


アンジュはすでに後方へ跳んでいる。


着地と同時に、わずかに体勢が沈む。


「……やはり硬いですわね」


その間にリックスが滑り込む。


「リーダー、ここからは私が崩します」


細身のサーベルが閃く。


「急所は避ける……その硬さ、見極めさせていただきますよ!」


狙いは関節。


だが――


「いい狙いだな!」


モーリスは笑う。


踏み込む。


巨体とは思えない速度で間合いを潰す。


「っ……速い!」


剣が届く前に、圧が迫る。


その瞬間。


「……そこだ」


バロムの拳が振り下ろされる。


空気を潰すような一撃。


モーリスは腕で受ける。


「ちっ、重てぇな!」


衝撃で地面が砕け、足元が沈む。


だが――


「いいな、その威力!」


笑う。


押し返す。


バロムの巨体が、わずかに揺れる。


その隙。


アンジュが再び踏み込む。


「今ですわ!」


鉄鞭と短剣、同時。


上下から挟み込む。


リックスも横から斬り込む。


「連携で崩します!」


三方向同時。


完全な包囲。


だが。


モーリスは、踏み出した。


「遅ぇ!」


正面から突っ込む。


三つの攻撃を、強引に受けながら。


鈍い音が連続する。


だが止まらない。


「なっ……!?」


アンジュの目が見開かれる。


「無茶苦茶ですわね!」


拳が振り抜かれる。


リックスが弾かれる。


「くっ……!」


バロムが前に出る。


「下がれ」


受け止める。


衝撃が走る。


「ははっ、いいなぁ……!」


モーリスは笑う。


三対一。


だが押されているのは、どちらか。


「もっと来いよ!」


その一言で、空気が震える。


アンジュは息を整え、口元を歪めた。


「……面白いではありませんの」


赤い瞳が細まる。


「では、本気で参りますわ」


戦いは、ここからだった。




ビビVSターニャ


褐色の肌に、長い黒髪。

ゆるく揺れるその髪とは対照的に、足取りは軽い。


指先でくるりと空気をなぞるように動かしながら、少女は一歩踏み出した。


ターニャは動かない。


視線だけを向ける。


「……ここから先は通しません」


静かな声。


だが次の瞬間――


空気が裂けた。


見えない何かが走る。


「っと」


ビビは軽く身体をひねる。


何もないはずの空間を、細い線が通り過ぎる。


遅れて、背後の木箱が切断された。


「へぇ〜……見えないの飛ばすんだ」


緊張感のない声。


だが瞳はしっかり捉えている。


ターニャは表情を変えない。


「回避能力、高いですね」


足を一歩ずらす。


次は二本。


角度を変え、交差する軌道。


「でもさ〜」


ビビはふわりと跳ぶ。


細い身体が舞う。


まるで踊るように、全てをかわす。


「それ、わかりやすいよ〜?」


着地と同時に、腕がしなる。


キィン――


金属音。


細いワイヤーが解き放たれる。


一瞬で間合いを詰める。


ターニャの視界が揺れる。


速い。


「……!」


咄嗟に下がる。


だが遅い。


ワイヤーが足元を掠める。


地面が抉れる。


「当たったら危なそうだね〜」


ビビは笑う。


だが次の瞬間、動きが変わる。


消える。


視界から。


「――右」


ターニャは振り向く。


同時に防御。


だが――


「正解〜」


上から。


ワイヤーが降る。


拘束。


絡みつく。


「っ……!」


引かれる。


バランスが崩れる。


だがターニャは踏み止まる。


「まだ、です」


低く呟く。


次の瞬間、足元から衝撃が走る。


ビビの動きがわずかに止まる。


「ん?」


違和感。


地面。


何かが仕込まれている。


「へぇ……」


その隙。


ターニャが踏み込む。


「今です」


間合いが詰まる。


だが――


ビビは笑ったまま。


「それも、見てたよ〜?」


ワイヤーが弾ける。


拘束がほどける。


同時に、逆に巻き付く。


「――っ!」


ターニャの腕に絡む。


引かれる。


体勢が崩れる。


「捕まえた〜」


柔らかな声。


だが動きは速い。


一気に間合いを詰める。


至近距離。


拳が来る。


だが――


ターニャは目を逸らさない。


「……甘いです」


小さく呟く。


次の瞬間、空気が歪む。


ゼロ距離。


回避不能の一撃が放たれる。


ビビの目がわずかに細まる。


「……あ、それズルい」


衝撃が弾ける。


距離が離れる。


二人が同時に着地する。


間合いが、再び開く。


ビビは軽く肩を回した。


「思ってたより強いね〜」


ターニャは構えを崩さない。


「あなたも、です」


互いに笑わない。


静かな声。


次の瞬間――


脚部の装甲が、わずかに開いた。


金属音。


踵と膝。


そこから、赤熱した刃が滑り出る。


空気が焼ける。


「……近接対応、完了しました」


低く告げる。


ビビが目を細める。


「へぇ〜……それ、危なそうだね〜」


軽い口調。


だが足は止まらない。


次の瞬間、踏み込む。


ワイヤーが走る。


一直線。


だが――


ターニャも動く。


前へ。


交差。


「っ……!」


ワイヤーを、蹴り上げる。


踵のブレードが触れた瞬間――焼き切る。


火花が散る。


「え?」


ビビの目がわずかに見開かれる。


そのまま間合いを詰める。


近い。


膝が上がる。


「――っ!」


咄嗟に身体をひねる。


だが避けきれない。


膝のブレードが、胸元の布を裂く。


熱。


浅いが確実に入る。


「ちょっと熱いなぁ……」


距離を取るビビ。


だが表情は崩れない。


ターニャは追う。


「ここで仕留めます」


踏み込み。


回転。


脚が薙ぐ。


赤熱の軌跡が円を描く。


ビビは跳ぶ。


だが――


「……逃がしません」


二撃目。


着地を狙う。


膝。


下から突き上げる軌道。


「わっ……!」


空中で無理やり体勢を変える。


ワイヤーを打ち込み、強引に軌道をずらす。


地面に着地。


わずかに息が乱れる。


「それ、ちょっと反則じゃない〜?」


笑いながらも、距離を取る。


ターニャは止まらない。


「対処される前に、押し切ります」


低く呟く。


熱が揺れる。


空気が歪む。


ビビは指先でワイヤーをくるりと回した。


「じゃあさ〜」


視線が鋭くなる。


「それ、どうやって壊すか考えよっか」


次の瞬間、複数のワイヤーが同時に走る。


四方から。


狙いは脚。


だが――


ターニャは踏み込む。


迎え撃つ。


焼き、斬り、弾く。


火花が連続して弾ける。


「……!」


一瞬の隙。


ワイヤーが足首に絡む。


引かれる。


だが――


「想定内です」


踏み込みを止めない。


逆に踏み込む。


引かれる力を利用して、さらに加速する。


「っ!?」


ビビの目が開く。


一気に間合いが潰れる。


至近距離。


膝が振り上がる。


赤熱の刃が迫る。


ビビは笑った。


「……いいね、それ」


ワイヤーが弾ける。


両者の動きが、さらに加速する。


近距離。


高速。


回避と斬撃が交錯する。


戦いは――一気に殺し合いの領域へと踏み込んだ。



マークスVSアルマー


赤髪の青年が、静かに一歩踏み出す。


姿勢は真っ直ぐ。

無駄な力みはない。


「マリーナ警部の邪魔はさせません」


その視線の先、黒髪の細身の男――アルマーが、ゆるく肩を揺らした。


「ふふ、真面目ねぇ」


指先を軽く振る。


その瞬間――空気が歪む。


「っ……!」


マークスは即座に横へ飛ぶ。


何かが通った。


視認できない“圧”が、地面を抉る。


「見えない攻撃……!」


着地と同時に体勢を整える。


アルマーは微笑む。


「いい反応。でも――」


もう一度、指を弾く。


今度は複数。


連続。


「……!」


マークスは前へ出る。


避けない。


踏み込む。


圧を紙一重でかわしながら、距離を詰める。


「近づけば――!」


伸縮式の警棒が伸びる。


一直線。


だが。


「そう来ると思ったわぁ」


アルマーの身体が、ふっと揺れる。


消えるように位置をずらす。


空振り。


「なっ……」


その背後。


「甘いわよ」


衝撃。


見えない一撃が背中を打つ。


マークスは前に転がる。


だが即座に立ち上がる。


「まだ……!」


息は乱れていない。


むしろ、目が研ぎ澄まされていく。


アルマーは楽しそうに笑う。


「へぇ……タフねぇ」


再び指を動かす。


今度は緩やかに。


周囲の空気が歪み続ける。


逃げ場を塞ぐように。


「囲い込み……!」


マークスは足を止める。


視線を巡らせる。


空気の流れ。


圧の向き。


「……見える」


小さく呟く。


次の瞬間、動いた。


最短距離。


圧の“隙間”を縫うように走る。


「えっ」


アルマーの目がわずかに見開かれる。


一気に接近。


間合いに入る。


警棒が振り抜かれる。


「っ!」


アルマーは咄嗟に防ぐ。


だが完全ではない。


かすめる。


「今の……」


マークスは止まらない。


連撃。


足技が入る。


低い軌道。


「近接もいけるのねぇ!」


アルマーは跳ぶ。


距離を取る。


だがその瞬間。


マークスの手が首元に触れる。


黒い首輪。


「――っ」


一瞬、迷い。


だが外さない。


代わりに、踏み込む。


「制御できる範囲で、行きます!」


速度が上がる。


明らかに一段階。


踏み込み、間合い、連撃。


全てが鋭くなる。


アルマーの頬を、風が掠める。


「……やるじゃない」


笑みが消える。


目が細まる。


「なら――本気でいくわよ」


空気が変わる。


圧が増す。


見えない攻撃の密度が跳ね上がる。


マークスは構える。


「受けて立ちます」


二人の間の空間が、歪む。


次の瞬間――


激突した。


アルマーの手が腰へ落ちる。


引き抜かれたのは、ストックも銃身も短く切り詰められた散弾銃。


同時に、左腕。


衣服の下で、金属が軋む。


義肢。


「近づきすぎなのよ」


引き金が引かれる。


爆音。


至近距離。


散弾が面で広がる。


「っ……!」


マークスは咄嗟に腕を上げる。


直撃は避けるが、衝撃で吹き飛ぶ。


転がる。


即座に起き上がる。


「銃……!」


構え直す前に、二発目。


連射。


間を置かない。


「逃がさないわよ」


弾幕。


回避不能の面制圧。


マークスは横へ、前へ、無理やり抜ける。


被弾。


制服が裂ける。


だが止まらない。


「距離を詰めるしか……!」


踏み込む。


だがその瞬間。


「甘いって言ってるでしょ?」


アルマーの左腕が持ち上がる。


義肢の装甲が開く。


内部機構が露出。


次の瞬間――


射出。


小型の弾体が放たれる。


「なっ……!?」


空中で炸裂。


爆風。


衝撃が叩きつける。


マークスの身体が浮く。


地面に叩きつけられる。


「ぐっ……!」


息が詰まる。


視界が揺れる。


アルマーはゆっくりと歩く。


散弾銃を片手で構えたまま。


「ほら、どうするの?」


余裕の笑み。


距離は中距離。


最も危険な間合い。


「……っ」


マークスは膝をつく。


だが顔は上げる。


視線は死んでいない。


「まだ……終わってません」


立ち上がる。


息を整える。


弾道。爆発のタイミング。


全てを頭の中で再構築する。


「なら、試してみなさいよ」


アルマーが引き金を引く。


同時に、義肢が唸る。


散弾とグレネード。


二重の圧。


「……行きます!」


マークスが踏み込む。


次の瞬間――


爆音と衝撃が、再びぶつかり合った。





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