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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
187/411

作戦開始ー

月明かりの下、港の倉庫前に8人の影が並んだ。全員、魔力阻害ローブで全身を覆い、顔の一部だけを見せている。夜の静寂が、張り詰めた空気を際立たせていた。


ラインは背筋を伸ばし、鎧の擦れる音を静かに響かせながら、落ち着いた声で言った。


「皆様、持ち場に着くまではローブを脱がないでください。到着次第、魔力を全力で解放していただきます」


アンジュは静かに頷き、凛とした声で答えた。


「了解しましたわ。手筈通りに参りましょう」


ローブにすっかり覆われ、赤い鎧も背中の大剣も、外からは形すらわからない。


マリーナは腕を組み、仲間を鋭く見渡した。


「全員、無駄なく慎重に。タイミングは正確に」


長く束ねた金髪もローブの中に収まり、動きや色は一切見えない。


ビビは軽く微笑み、ふわりと声を出した。


「は〜い!ま〜っかせて〜」


西大陸風の軽装もローブの内側に隠れ、外からは何もわからない。


リックスは外套の下で姿勢を正し、優雅に片手を顎に当てる。


「リーダー、全力解放のタイミングを間違えないよいに」


白い装束もサーベルも完全にローブの中。外観はただの黒い影だ。


バロムは黙って頷いた。銀髪の巨体もローブに覆われ、存在感は形だけで月明かりに溶けている。


ラインは全員を見渡し、丁寧に声をかける。


「皆様、各自タイミングを合わせてください。魔力を全力で解放していただければ幸いです」


7人は一斉に動き出す。ローブを翻しながら、それぞれの持ち場へと散る影となった。



船内は静まり返り、月光がかすかに甲板を照らしていた。波音だけが耳に届く夜の港。


魔力感知装置が微かに光ると、親衛隊たちの瞳に緊張が走る。普段の夜にはありえない異常な魔力の波動——静かに船内を震わせた。


一人、また一人と、異常を感じた者たちが船外へと姿を現す。


ターニャが低く呟き、小柄な体を軽やかに動かして波止場方向へ抜け出す。黒髪を太い三つ編みにまとめ、腰にはナイフを差している。


「複数箇所で魔力感知...?」


独り言のように言いながら、風と水の魔力をほんの僅かに纏い、気配を消す。


エレンは無精髭を生やした細身の姿で、肩の力を抜きながら通路を進む。金髪坊主の頭が月光に反射する。


「ふぅ……なんだか、ややこしいことになってるな」


飄々とした口調で呟き、船外へ足を踏み出す。両手の義肢は静かに光を反射させる。


アルマーは肩までの黒髪をかき上げ、長いコートの裾を揺らしながら船を離れる。


「ふふ、面白くなってきたわね」


アイリーンは長い銀髪を揺らし、ライフルを抱えたまま甲板を下り、無言のまま船外へ歩を進める。


モーリスは巨体を低く構え、甲板に足を踏み鳴らす。義肢となった左腕を揺らしながら大きな声で叫ぶ。


「よぉーし!行くぞーー!」


アベルは赤髪の短髪を風になびかせ、影の中に身を潜めつつ慎重に船を降りた。


「やはり、来るならこのタイミングか」


ドベルクは背中の大剣を揺らし、静かに立ち上がる。


夜の港に、異常な魔力の波動を追って、六人が静かに散っていった。



ターニャは、波止場の影に身を沈めたまま動きを止めた。


「この周辺で反応がありました。警戒を続けます」


三つ編みを揺らしながら気配を殺す。眼鏡の奥から視線だけを滑らせ、空気のわずかな乱れまで拾い上げていく。


エレンは歩みを止め、無造作に周囲を見渡した。


「妙だな……気配が薄すぎる」


金髪の坊主頭が月明かりを受ける。足元や影の重なりを順に確認していく。その動きには、罠を探る癖がそのまま滲んでいた。


アルマーは軽く肩を落とし、空気を撫でるように手を動かす。


「……隠してるわねぇ。綺麗に消してるつもりみたいだけど」


黒の軍服の上からでも分かる細身の体が、ゆるく揺れる。笑みを浮かべながらも、視線は鋭く一点に集まっていく。


アイリーンは足を止め、積まれたコンテナの上、高台から静かに対戦車ライフルを構えた。


「……風が不自然」


銀髪がわずかに揺れる。引き金にはまだ指をかけず、呼吸だけを整え、風と波の流れの差異を読む。


モーリスは重い足音とともに立ち止まり、周囲を睨み据えた。


「隠れてやがるな……出てこいよ!」


分厚い軍服越しでも分かる巨体。声を張り、あえて圧をかけるようにその場の空気を揺らした。


アベルは半歩だけ位置をずらし、死角を潰すように立つ。


「……視線を感じる。どこかで見ているな」


その身にに魔力を抑え込みながら、無駄な動きを消す。意識を研ぎ澄ませ、気配の向きを読む。


――各員はすでに到達している。


だが、誰一人として動かない。


それぞれが間合いを取り、視線と気配を交差させる。

見えない相手を炙り出すように、静かに、確実に。


夜の港に、張り詰めた緊張だけが満ちていく。


波の音だけが響く港。

配置についた瞬間、空気がわずかに軋んだ。



長い金髪を後ろで結い、細身の制服を着こなした女が足を止める。

腕を組んだまま、鋭い視線を遠方へ向けた。


その視線の先、高所に立つ女――アイリーン。

銀髪を揺らし、長大な対戦車ライフルを静かに構えている。


「……見つけた」


互いに動かない。

撃てる距離、外さない間合い――すでに成立している。



赤髪の青年が一歩前に出る。

整った顔立ちに幼さが残り、首元には黒い首輪。


その前方、黒髪を肩で揺らす細身の男が、ゆるく手を広げている。


「ふふ、いいわよ。相手してあげる」


軽い笑み。しかし空気は張り詰めている。



真紅の鎧を纏った少女が一歩踏み出す。

背には巨大な剣を背負い、その後ろに白装束の男と巨体が控える。


対するは、圧倒的な体格の男――モーリス。


「はっ……まとめて来いよ!」


肩を鳴らし、低く笑う。地面がわずかに軋んだ。



金髪碧眼の騎士が、静かに歩みを止めた。

無駄のない姿勢で、正面の男を見据える。


対する男――アベルは短く息を吐く。


「相手が誰でも関係ない」


互いに構えを崩さない。

間合いだけが、静かに詰められていく。



褐色の肌に長い黒髪の少女が、軽く首を傾げる。


その前で、小柄な少女――ターニャが静かに頷いた。


「あなた、ですね?」


柔らかな声と、張り詰めた気配が対照的にぶつかる。



黒のメイド服を纏った長身の女が、静かに足を止める。

襟元から垂れる太い三つ編みが揺れ、紫がかった瞳が前を射抜く。


足元の金属プレート付きブーツが、わずかに音を立てた。


その前、金髪の坊主頭の男――エレンが肩の力を抜いたまま立つ。


「仕方ないな……やるしかないか」


飄々とした声音。しかし視線は鋭い。



全ての配置が揃った。


逃げ場はない。

隠れる意味も、もうない。


次の瞬間――


戦いが、始まる。





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