決戦の朝ー
とりあえず気を取り直し、4人は朝食を部屋で取ることにした。
しばらくして、宿のスタッフが料理を運び込む。テーブルに並べられた皿を見て、皆はようやく落ち着きを取り戻し
ミーファは少し首をかしげ、目を細めた。
「なるほど、お二人はベルの身体の事をご存知なのですね」
ベルはテーブルの向こうで、少し照れくさそうに頷く。
「そう。ミリィは一緒に旅をする仲間だし、パティもミリィの家族だから、説明した方がいいと思って」
その言葉に続けるように、ベルはくすぐったそうに笑った。
「それにしてもー、ミーファのよそ行きの顔、いつみてもこそばゆいね」
ミーファは小さく鼻で笑いながら、すぐに顔を正す。
「よそ行きなんて、私はいつでもこうですよ」
しかし、その表情を見た皆は、心の中で密かに思う。
(いやー無理でしょ)
ミーファは真剣な目でベルを見つめる。
「それで今夜、決行なんでしょ?」
ベルは少し俯きながら答える。
「うん、そう。私は何もできないけど…」
ミリィがやさしく首を振る。
「そんなことありません。ベルさんはこうしてみんなを呼び集めてくれました」
パティも頷き、力強く言った。
「その通り、直接戦場に立つことだけが戦いではありません。ベル様はすでに、やるべき事をしてくださいました」
ミーファはにっこりと微笑みながらも、目の奥には熱い覚悟が光っていた。
「本当に、あなたの周りには良い人達が集ってくれるわね。昔から変わらず」
ベルは小さく頷き、微笑む。
「…本当、そうね」
ミリィは拳を握り、真剣な表情で言った。
「絶対に取り戻しましょう。指輪を」
パティも静かに頷く。
「私も、お二人への恩義を返させていただきます」
ミーファも同じく頷き、力を込めた。
「私もがんばります。皆で戦いましょう」
ベルは少し驚きながらも、感謝の気持ちを口にした。
「皆…ありがとう…て、え?」
「ミーファも行くつもりなの?」
ミーファは肩をすくめて答える。
「そのつもりで…来たんだけど?」
ベルは不安そうに目を細める。
「…ミーファ、戦えないでしょ…私より小さいのに」
ミリィが慌てて口を挟む。
「ミ、ミーファさんは私とお留守番しましょ…」
しかしミーファはにやりと笑い、鋭い目つきでベルを見る。
「ベル坊が戦えるなら、ベル坊をボコれる私も戦えるのでは?」
ベルは苦笑しながら頭を振る。
「いやーさすがにそれはないと思うよ?あいつって、たぶんトラウマからミーファに逆らえないだけで、戦えばベルの方が強いでしょ?」
ミーファは手を腰に当て、目を光らせる。
「ちょっとベル坊に変わって?勝負付けるから」
ベルは肩をすくめて苦笑した。
「だから無理だってば。知ってるでしょ?」
ミーファは納得できない様子で唇を尖らせる。
「納得いかない。今すぐボコりたい」
ベルは思わず目を伏せ、赤面しながら答えた。
「ほんっと、恥ずかしいからもうやめて」
ミーファは大きな袋から、信じられないほど巨大な十字架を取り出した。ベルの身長とほぼ同じで、ミーファ自身よりも一回り大きい。
「私は戦うつもりで準備もしてきたんだけど」
ベルは目を丸くしてその十字架を見上げた。
「なんかそれすごく見覚えある気がするんだけど…何だっけ?」
ミーファは胸を張り、誇らしげに答える。
「うちの教会の屋根に付いてた十字架」
ベルは顔をしかめ、思わずツッコミを入れた。
「シスターアリスが生きてたら、めっちゃ怒ると思うよ…」
ミーファは軽く笑い、肩をすくめた。
「それはないでしょ。ベルのために盗って、いや、取ってきたんだから」
ベルは顔を背け、苦笑混じりに言った。
「やめて、私を巻き込まないで」




