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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第7章ー姫神奪還作戦ー
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再開する幼馴染ー

翌朝。


ベルがゆっくりと目を覚ます。


ぼんやりとした視界の中、すぐ隣に見知った顔があった。


ミーファがこちらを覗き込んでいる。


「おはよう。ベル」


「ミーファ! 来てくれたんだ!?」


思わず体を起こし、そのまま抱きつこうとした――その瞬間。


ぴたりと動きが止まる。


動けない。


違和感に気づき、自分の体を見下ろす。


両手足が、しっかりと縄で縛られていた。


「……何、これ?」


ミーファはあっさりと答える。


「私、寝るとこないからこの部屋で寝ようとしたんだけど、幼馴染とはいえ、一応男と女だし、間違いがあっちゃいけないと思って」


「それで……縛ったの?」


「そう」


あまりにも当然のような返答だった。


ベルは少しだけ間を置き、顔をしかめる。


「あ、なんかお腹んとこすっごい痛いんだけど……」


ミーファは軽く首をかしげる。


「あ、ごめん。無理矢理縛ろうとしたらベル坊があんまりにも騒いでうるさいから、腹殴って黙らせた時の、かなぁ?」


「うーん、そう、かなぁ?」


納得していいのか分からないまま、ベルは微妙な表情で呟いた。


ベルは縛られたまま、小さく息をつく。


「とりあえず、もう私になってるし、解いてくんない?」


ミーファは「確かに」と言わんばかりに頷き、手際よくロープを解き始めた。


「それにしてもすごい暴れ様でびっくりしちゃった」


「まー……そりゃあね」


ベルは苦笑しながら肩を回す。


ミーファはどこか懐かしむように目を細めた。


「あんなに暴れたのは、昔、変なこと企んで寝込み襲った時以来だよ」


「え?ちょっと待って……今すっごい怖い事聞いた気がするんだけど……」


「大丈夫よ?未遂で終わったから」


「ぜんぜん大丈夫じゃないんだけど……」


解放された手首をさすりながら、ベルは本気で引いた顔をしていた。


ミーファが肩越しに言う。


「誰しも思春期?とかにあるでしょ?好奇心が理性を凌駕する瞬間が――」


「物語の主人公みたいな言い方しないでよ……」


ベルは眉をひそめ、突っ込む。


ミーファはくすりと笑う。


「大丈夫大丈夫、結局ギリギリ未遂で終わったから」


「えー……どこまで何したのか気になるけど、怖くて聞けないんだけど」


ベルの声には、ほんのり震えが混じっていた。


(そりゃあいつが怖がるわけだ……完全にトラウマじゃない)


小さな心の呟きが、静かに部屋に残った。


「では、改めまして」


ミーファはベルの目を見つめ、両手をゆっくりと広げた。


ベルはベッドを降り、少し小柄な彼女の前に立つ。ためらうことなく、身をかがめてミーファの懐に飛び込み、そっと抱きついた。


「ベル、よくがんばりました」


ミーファの声が肩越しに穏やかに響く。ベルは自分より小さな身体にしがみつき、胸に顔をうずめながら、声を震わせて言った。


「うん……うん……私、がんばった……がんばってるの……」


思い切り泣くベルの頭は、自然にミーファの胸に収まった。


ミーファは少し背をかがめつつ、両手でベルの背中を優しく包み込む。静かに頷き、聖母のような微笑を浮かべながら言った。


「大丈夫。ベルが頑張ってるのは、みんな知ってる。私も知ってる。アリスもきっと見てるよ」


ベルは涙を拭い、肩越しにかすかに笑みを返す。


小さな身長差が生む絶妙な距離感と温もりの中で、二人の間に静かな安心が広がった。


ミーファは肩越しにベルの胸元をチラリと見て、くすりと笑った。


「それにしても……ベルはあいかわらず胸がないなぁ」


ベルは顔をそむけつつ、拗ねたように答える。


「ミーファだって……私より気持ちあるくらいじゃない……」


ミーファはにっこり笑い、少し上からベルを見下ろすように言った。


「ベル、よく聞きなさい。気持ちでもなんでも、大きい方が偉いのよ」


ベルは小さくため息をつき、苦笑混じりに返す。


「あいかわらず強引だなぁ……」


小さな身長差と軽い押し合いの中で、二人の間には昔から変わらない微妙な力関係が残っていた。


ベルは昔のことを思い出し、ふっと笑みをこぼした


「そういえば昔、あいつがミーファのおっぱい触って怒らせたことあったよね?」


ミーファは肩をすくめ、少し照れくさそうに口元を緩める


「あぁ…私の15歳の誕生日ね。あの時は本当に頭に来て、代わりに本気でタ◯潰してやろうと思ってトンカチで殴りかかったんだよね」


ふたりは同時に笑いをこらえた。


「そうそう、それでシスターアリスに本気で止められてねー」


今となっては、そんな思い出も懐かしいものに変わっていた。


「今となってはいい思い出よね」


「ううん、そんないいものじゃなかったよ。私、しばらくミーファのこと避けてたもの。怖くて」


「またまた、そんなこと言って」


「ううん、本当だって」


ミーファは目を見開き、少し驚いた様子で息をついた。


「え…マジで?」


ベルは小さく肩をすくめ、顔を少ししかめた。


「あいつ、ミーファのこと本気で怖がってるもん」


ミーファは眉を上げ、少し首を傾げる。


「あれでしょ?思春期に時の近いお姉さんとの距離感がわからなくなって反抗的になるやつ」


ベルは首を振り、真剣な表情を見せた。


「ううん、本気で怖いと思う」


それを聞いたミーファは目を丸くし、驚きの息を漏らした。


「マジかよ」


ミーファが腕を組み、眉をひそめた。


「ちょっと、今すぐベル坊に変わってよ」


ベルは首を振りながら後ずさる。


「無理だよー知ってるでしょ?太陽の浮き沈みでしか変身できないって」


ミーファは手をひらりと動かし、少し笑みを浮かべる。


「そこはほら、気合いで!」


ベルは両手を振って強く否定した。


「無理無理!できたらこんな苦労してないって」


そのやり取りを、ミリィとパティが部屋の隅でじっと見つめていた。


パティは小さくため息を漏らし、耳をふさぎたくなるような表情で呟く。


「お嬢様…」


ミリィも肩をすくめ、苦笑交じりに言った。


「だめ…気にしちゃ負けだよ」


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