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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: KK
第7章ー姫神奪還作戦ー
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助っ人その③ー

ドアの向こうで息を切らしていたミリィの背後に、もう一つ影があった。


静かに、一歩。


店内へと足を踏み入れる。


長い黒髪を太い三つ編みにまとめた女。整った顔立ちに、紫がかった瞳。無駄のない動きで立つその姿は、ただのメイドとは明らかに違う。


ベルが目を見開く。


「……パティ?」


女は一礼する。


「お久しぶりでございます」


その声に、マリーナの眉がわずかに動いた。


「……パラスウェットか」


アンジュも目を細める。


「あなた……まだ生きていましたのね」


パティは感情をほとんど表に出さないまま、静かに答える。


「おかげさまで」


ミリィが慌てて駆け寄る。


「すみません、遅くなりました!お父様やトレントは無理でしたが―」


少し誇らしげに振り返る。


「パティが来てくれました!」


パティは一歩前に出ると、ベルたちに向かって深く頭を下げた。


「お嬢様が大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます」


そのまま、さらに頭を下げようとするが――


マリーナが軽く手を上げて止める。


「そこまででいい。お前が来たなら話は早い」


アンジュは腕を組み、満足げに頷く。


「ええ。これでようやく“戦力”として数えられますわね」


マークスが小声で呟く。


「この人、知り合いなんですか……?」


マリーナは短く答える。


「ああ。一度共闘している」


アンジュも続ける。


「ええ。少なくとも――そこらの親衛隊よりはよほど信用できますわ」


ラインはそのやり取りを聞き、わずかに目を細めた。


「なるほど……これは心強い」


バロムが、こくりと頷く。


リックスは優雅に微笑む。


「戦力が整ってまいりましたね」


ベルはミリィとパティを見て、小さく頷いた。


「……うん」


場の空気が、確かな手応えと共に引き締まる。


「大所帯になってきたことですし、他に客がいないとはいえ、場所を移動しませんか?」


ラインの提案に、全員が自然と頷いた。


マリーナがすぐに口を開く。


「なら、大陸警察の支部を使おう。会議室が空いている」


異論は出なかった。


――ほどなくして。


一行は街の大陸支部へと移動し、案内された会議室に入る。


長机を囲むように、それぞれが席につく。


人数が増えたことで、空間にはわずかな緊張と圧が生まれていた。


椅子の軋む音が止み、静寂が落ちる。


その中で、ラインがゆっくりと立ち上がった。


「では――改めて、作戦会議を始めましょう」


静かな声だったが、その一言で場の空気が一段階引き締まる。


ラインは全員を見渡し、続ける。


「現状、敵はハリス帝国親衛隊。確認できているだけで七名、未確認を含めれば最大で十名規模」


指で机を軽く叩き、思考を整理するように言葉を重ねる。


「そして、その全員が“姫神の指輪”を所持している可能性が高い」


その事実に、空気がわずかに重くなる。


ラインはそこで一度言葉を切り、全員の反応を見た。


「これを前提に――各個撃破を基本戦術とします」


ラインは言葉を切り、ふと視線を横へ流す。


「――と、その前に」


一拍置き、穏やかなまま問いかけた。


「貴女は、どちら様でしょう?」


その言葉に、場の視線が一斉に動く。


ラインの見ている先――


テーブルについた面々に紛れて、いつの間にか一人の少女が座っていた。


黒髪に黒い瞳、褐色の肌。


ライン、リックス、バロムの三人がわずかに身構える。


マークスが目を見開く。


「え、ちょっと待って……いつの間に入ってきたんですか!?」


ベルは一瞬きょとんとした後、はっと気づく。


「……ビビ!来てくれたんだ!?」


ミリィもぱっと表情を明るくする。


「ビビさん!」


マリーナは腕を組んだまま、呆れたように息をついた。


「相変わらず気配が薄いな……」


少女はそんな反応に、にこりと微笑む。


「久しぶり〜」


ゆるい調子で手を振る。


「ちょっと遅れちゃった」


ラインはそのやり取りを見て、警戒をわずかに解く。


「……なるほど。お知り合いでしたか」


ベルは頷きながら説明する。


「うん、西大陸の……アダラ王女の侍女で、護衛の人」


マークスが小声で呟く。


「また強そうな人が増えた……」


パティは無言のまま、ビビをじっと見ている。


アンジュは腕を組み、興味深そうに目を細めた。


「ふうん……」


ビビはくすっと笑い、軽く肩をすくめる。


「大丈夫だよ〜。わたし、ちゃ〜んと強いから」


その柔らかな声音とは裏腹に、空気がわずかに張り詰めた。


ラインは一度頷き、再び全体へと視線を戻す。


「では今度こそ、これで全員、ということでよろしいですね」


ラインは全員に視線を向け、声を上げた。


「現在、戦力としては9名。時間が許すならば、3人1組で事に当たるのが確実と判断しますが……その場合、アンジュさん達教会の方々は3人で組むとして、他の2組はどうしましょう。たとえば、ベル君とは――」


マリーナは腕を組み、落ち着いた声で答えた。


「そこはもちろん、このー」


ビビは手を挙げ、にこやかに言った。


「は〜い!ベルくんと組みた〜い!」


ラインが少し首を傾げ、柔らかく問いかけた。


「理由を伺っても?」


ビビはにこりと笑みを浮かべ、軽く手を振る。


「だって〜強いからだよ〜。あと、密かにお嫁さんになりたいと狙ってるし〜」


マリーナがビビをチラリと見やり、短く言い放つ。


「待て。私もベルと組みたい。ここは譲れない。」


ビビは一瞬目を丸くするが、にっこり笑って手を振った。


「そっか〜じゃゃ〜3人でしよっか〜!わたしはぜんぜんい〜よ〜」


ベルは少し困惑しながら、二人の表情を見比べた。


ラインがテーブル越しに視線を巡らせ、全員の反応を確認する。


「えーそれでは、教会の3人と、ベル君マリーナ警部ビビさん、私、パティさんマークス警部補、の組み合わせということでよろしいですか?」


全員が小さく頷き、それぞれの席で覚悟を決めるように背筋を伸ばした。


ベルは少し疲れた表情で、仲間たちを見回す。



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