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新たなる助っ人ー

ベルはラインの言葉に少し安堵の表情を浮かべ、深く息を吐いた。


「これからどうしますか? 彼と私で、親衛隊を各個撃破し、指輪を回収するのが確実だと判断しますが」


ベルは小さく頷き、口元に微かな笑みを浮かべて言う。


「ありがとうございます。でも、きっとそろそろ……」


と、店のドアが開き、ヒールと革靴の足音が店内に響き渡った。


ベルはその姿を捉え、目を輝かせる。


「マリーナ警部!」


立ち上がり手を挙げるベルに気づき、二人はゆっくりと近づいてくる。


金髪を後ろで結び、丸メガネをかけた女性は、長く伸びた手足と引き締まった体つきを誇示するかのように腕を組み、モデルのような立ち姿で鋭く切れ長の目をベルに向ける。


「待たせたな、ベル」


続いて赤髪の青年が現れ、整った顔に少しあどけなさを残しながら爽やかに微笑む。


「マークス警部補、ただいま現着しました」


二人はラインの方に目を向け、揃って敬礼する。


「ルグレシア王国のライン・バックス騎士隊長とお見受けします。私は大陸警察地方特別捜査官、警部マリーナ・ベイ・マリスです」


マークスも頭を下げ、続けて自己紹介する。


「同じく大陸警察地方特別捜査官、警部補マクスウェル・ディン・ルイスであります」


ラインは軽く頭を下げ、柔らかながらも凛とした声で応える。


「ルグレシア王国騎士団隊長、ライン・バックスと申します。貴警部、貴警部補、この度はお力添えをいただき感謝いたします」


ベルは三人を見比べ、少し安堵の笑みを浮かべた。


ベルは小さく息を吐き、指折り数えるように呟く。


「これで、三人……」


ラインはその言葉に静かに頷く。


「なるほど。他にも助っ人がいるわけですね」


マークスはきょとんとした顔で首を傾げた。


「え? その中に、僕も含まれてます?」


マリーナは腕を組んだまま、当然のように言い放つ。


「無論だ。今回は人数がいる。お前にも戦ってもらうぞ」


マークスは一瞬固まり、引きつった笑みを浮かべる。


「マジ、ですか……」


マリーナはラインに視線を向け、静かに口を開く。


「ライン殿は、すでに交戦されたとか」


ラインは穏やかに頷く。


「ええ。さすがに、昨日の今日で情報が早いですね」


マリーナは腕を組んだまま続ける。


「我々も東の技術を取り入れているので、ある程度は把握しています。しかしマガニクスについては開示されていない。実際に戦った感想をお聞きしても?」


ラインは軽く微笑む。


「もちろん。貴女のような美人からの願いとあれば、喜んで」


その一言に、ベルがじっとりとラインを睨む。


ラインは咳払い一つして、話を戻した。


「確認できた親衛隊は七人。そのうち二人と直接交戦しました。ベル君が別に一人と交戦しているので、確認できたのは三名となりますが――強いですね」


マリーナの目が細まる。


ラインは淡々と続ける。


「魔装義肢自体は、最初こそ驚きはありますが、仕組みが分かれば対応は難しくありません。むしろ問題は本人の練度です。さすが親衛隊と呼ばれるだけのことはある」


一拍置き、わずかに表情を引き締める。


「とはいえ、私や貴女であれば一対一で負けることはないでしょう。ただ――」


マリーナが言葉を引き取る。


「姫神の指輪、ですか」


ラインは静かに頷いた。


「戦った状況とベル君の話から、各親衛隊が一つずつ所持していると見ていいでしょう。これは……厄介です。何せ、この身で体感しましたから」


マリーナはわずかに視線を落とす。


「私も、彼の姫神には煮え湯を飲まされました」


ベルが首を傾げる。


「マリーナさんは、引き分けたって聞いてるけど」


ラインは目を見開く。


「引き分け? それはすごい。私は完膚なきまでに叩きのめされました。もっとも、おかげで修行をやり直し、次は負けない自信がありますが」


マリーナは頬をわずかに染め、視線を逸らす。


「あんなもの……引き分けとは思っていない。ただ彼が……優しかっただけで……」


言いながら、どこか遠くを見るように視線が泳ぐ。


マークスが困ったように声をかける。


「警部……」


ベルも苦笑しながら呼びかける。


「マリーナさぁん……」


二人に促され、マリーナは軽く咳払いをした。


「……もとい。それでは、各個撃破ならあるいは」


ラインは静かに頷く。


「ええ。先ほども、そのような話をしていたところです」


マリーナは腕を組んだまま、静かに言う。


「悪名高き、かのブリジット将軍も来ているとか」


ラインはわずかに頷く。


「ええ。私も噂はかねがね」


マリーナは視線を落とし、思考を巡らせる。


「そうなると、指輪を持つ相手が最低でも八、最大で十」


マークスは指を折りながら、顔を引きつらせた。


「僕を入れても四人……一人で二、三人と戦う計算ですか……」


ラインは落ち着いた様子で答える。


「一対一であれば、問題はないと思いますが」


マリーナは即座に首を振る。


「軍属となると、その可能性は低いですね」


ベルは少し身を乗り出し、不安と期待が入り混じった声で言う。


「あ、あの……他にも声をかけているので、返事はまだないけど、きっと――」


その時――再びドアが開き、店内に新たな足音が響いた。


ベルとマリーナ、マークス、そしてラインが、同時にそちらへ視線を向ける。


わずかな期待を含んだ眼差しが、入口へと集まる。


そこに立っていたのは――


ドアの向こうに立っていたのは、見慣れた赤だった。


長い赤髪をツインテールに結い、全身を真紅で統一した少女。薄く精緻な意匠の鎧に身を包み、背には大きすぎる剣を背負っている。


ベルの目が一瞬だけ明るくなる。


「アンジュ――」


その直後。


がつん、と鈍い音が響いた。


アンジュが扉の縁に肩をぶつけ、わずかに顔をしかめる。


「……っ」


何事もなかったかのように姿勢を正し、咳払いをひとつ。


「お待たせしましたわ。教会特記戦力、特務執行官――アンジュ、ここに参上いたしました」


ベルの表情が、すっと消える。


「……アンジュだね」


マークスが小声で呟く。


「……あぁ、はい……」


マリーナは目を閉じ、ゆっくりとため息を吐いた。


「……期待した私が馬鹿だったな」


その背後から、さらに二人の影が現れる。


金髪の青年が優雅に一礼する。


「お待たせいたしました、リーダー」


巨躯の男は無言で頷いた。


ラインは初対面の三人を見渡し、わずかに目を細める。


「これは……」


一拍置き、言葉を選ぶ。


「……賑やかになりそうですね」


アンジュはそんな空気など意に介さず、堂々と歩き出す。


――そして、椅子の脚に足を引っかけた。


「きゃっ――」


体勢を崩しながらも、机に手をついて踏みとどまる。


短い沈黙。


ベルはそっと顔を覆い、マークスは視線を逸らし、マリーナはもう一度ため息をついた。


アンジュはゆっくりと座り直し、優雅に脚を組む。


「……それで?」


何事もなかったかのように顎を上げる。


「状況を説明していただけるかしら」



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