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同期の自称サバサバ系女が、今日も会社をかき回す件  作者: 妙原奇天


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7/8

第7話「謝罪は“サバサバ風ドヤ顔”」

トラブル発生


 木曜の午前十時。オフィスに緊張が走った。

 「納期、間違ってクライアントに伝わってるぞ」

 部長の低い声がフロアを震わせる。


 経緯はこうだ。昨日の会議で、納期について「来月末」と「来週末」が飛び交った。その混乱を整理するはずの安藤が、確認もせずメールを送ったのだ。しかも宛先はクライアントの役員。


 結果、今日の午前中に先方から怒りの電話が入った。

 「どうなってるんですか? こちらは来週末納品と理解してますが?」


 部長は机を叩き、安藤を呼んだ。

 「安藤、すぐ謝罪に行ってこい。田中も同行しろ」


 私の胃がキリキリと縮む。嫌な予感しかしない。

 【被害者ノート新ページ】本日のテーマ=謝罪、そしてドヤ顔。


謝罪準備


 会議室。部長、私、安藤が集まる。

 部長は厳しい顔で言った。

 「とにかく誠意を見せろ。言い訳はするな。まず非を認めろ」


 普通なら当たり前の指示。

 しかし安藤は腕を組んで笑った。

 「わかりました! サバサバ系なんで、謝罪も忖度なしでいきます!」


 部長の眉がぴくりと動いた。

 「……いや、忖度なしじゃなくて、誠意を」

 「大丈夫です! 私、思ったこと言っちゃうタイプなんで!」

 ——またその台詞。私は心の中で正の字を一本足す。【“言っちゃうタイプ”:本日一回目】


クライアント先へ


 タクシーで移動。

 車内でも安藤は止まらない。

 「謝罪ってさ、しおらしくするのダサくない? むしろ堂々としたほうがサバサバで誠意あると思うんだよね」

 「……いや、下手に強気だと逆効果ですよ」

 「でも私、土下座とか似合わないタイプだし! 顔上げて謝ったほうが“潔い”でしょ!」


 私は深くため息をつく。

 ——潔いと開き直りの境界線は紙一重だ。


謝罪開始


 クライアントの会議室。役員二人が厳しい顔で座っていた。

 「本当に困りますよ。こちらのスケジュールも組み直しです」


 部長が頭を下げる。

 「このたびは弊社の確認不足でご迷惑をおかけしました」


 次に安藤が立ち上がり、勢いよく頭を下げ——ると思いきや、背筋をピンと伸ばし、ドヤ顔で言い放った。

 「忖度なしで言います! 私の確認ミスです! でも愛を持って訂正させていただきます!」


 会議室の空気が凍りついた。

 謝罪の言葉なのに、なぜか誇らしげ。

 「……“愛を持って”?」役員が眉をひそめる。

 「はい! 愛のあるサバサバ謝罪です! 引きずらないのが私の長所なんで!」


 部長が横で青ざめ、私に「フォローしろ」という目を向ける。


火消し役


 私は慌てて補足する。

 「改めまして、大変申し訳ございません。スケジュールはこちらで責任を持って調整し、必ず来週末までに納品いたします」


 役員の一人が溜息をついた。

 「……まあ、しっかり対応してくれるなら」


 どうにか収束しかけたところに、安藤が追撃。

 「ありがとうございます! サバサバしてるんで、もう気にしてません!」


 ——いや、クライアントはまだ気にしてるから!

 私は頭を下げたまま心の中で叫んだ。


謝罪後の自己評価


 会社に戻るタクシーの中。

 安藤は満足げに窓の外を眺めていた。

 「どう? 私のサバサバ謝罪、キマってたでしょ?」

 「……ドヤ顔でしたよ」

 「だって私、弱々しく謝るキャラじゃないから! クライアントも“潔いな”って思ったでしょ」

 「……いや、多分思ってないです」


 私はノートに書き込む。

 【謝罪=ドヤ顔。誠意ゼロ。本人は満点自己評価】


真サバ先輩の見解


 午後、オフィスに戻ると木下真理先輩に呼び止められた。

 「どうだった? クライアント謝罪」

 「……なんとか炎上は免れました」

 「安藤さん、やっぱりドヤ顔だった?」

 「はい」

 木下先輩は苦笑した。

 「“サバサバ”って、謝罪の場面では“短く・低く・誠実に”なんだよ。余計な自己主張はいらない」

 淡々とした一言が、まるで教科書の一節のように胸に残った。


SNSでの暴走


 夕方、社内SNSが鳴った。

 《#謝罪もサバサバ》安藤:「今日、クライアントにガチ謝罪! ドヤ顔で決めてきた! サバサバ女の強み発揮! いいねで応援よろしくw」


 コメント欄は沈黙。スタンプはゼロ。

 彼女だけが拍手を求めている。

 私は画面を閉じ、ノートに最後の一文を足した。

 【本日の被害:謝罪すら舞台。ドヤ顔=誠意の代用品。】


翌朝


 出社した安藤はけろりとした顔で言った。

 「クライアント、昨日より優しくなってたでしょ? やっぱサバサバ謝罪って効果あるんだよ!」

 ——それは部長と私がフォローした結果です。


 私は天井を仰ぎ、今日もまたノートに見出しを付ける。

 【サバサバ謝罪=ドヤ顔パフォーマンス。被害総計:社員一同】


次回予告


第8話「女子トイレは監視カメラじゃない」

女子トイレでの会話まで“情弱会議”と呼んで乱入する安藤。だがそこで彼女が聞いたのは、自分に向けられた本音だった——。

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