1-6 元引きこもりは新たな家族に出会う
ラストが鼻血を処置している間に俺は着替えを済ませた。
彼女は着替えを手伝おうとしたが、寝間着のボタンを外した時点で血の勢いが増したので処置するように伝えた。
「おはようございます」
ダイニングルームに入り、俺は笑顔で挨拶をした。
そこには既に3人の人物がおり、それぞれの席に座っていた。
「遅いぞ」
「申し訳ございません」
一番上座にいた男性の言葉に俺は謝罪する。
彼はイグニ=アモン──アモン公爵家当主でシェイドの実の父親である。
きっちりと整えられた身だしなみから彼が几帳面な人間であることがわかる。
そんな人間だからこそ、彼に怒られることが怖いとシェイドは考えていたようだ。
「早く座りなさい」
「わかりました」
少し苛ついている様子の女性の指示に従う。
彼女はトルナ=アモン──アモン公爵家の第一夫人、イグニの妻である。
シェイドの母親かと思われたが、そうではないらしい。
イグニには二人の妻がいた。
一人がトルナ、もう一人がシェイドの実の母親である。
だが、すでにシェイドの実の母親は亡くなっており、公爵夫人はトルナ一人ということだ。
「相変わらずのろまだな」
明らかにこちらを馬鹿にした反応をする少年がいた。
彼はゼーロ=アモン──イグニとトルナの間に生まれた息子であり、シェイドの腹違いの弟に当たる。
まあ、実際は半年違いなので同年代なのだが・・・・・・
その様子からこの屋敷での彼との違いがわかった。
「・・・・・・」
「つまんね」
何も言い返さずに席に着くと、ゼーロは少し不満げな様子だった。
だが、イグニに睨まれ、すぐに黙り込んだ。
俺が席に着くと、料理が運ばれてきたが内心驚いてしまった。
大人と子供で量は違えど、内容は同じように見えたからだ。
冷遇されている様子だったので、てっきり酷い食事がくると思っていたが・・・・・・
一口食べるが、普通に美味しかった。
自然と食事が進んでしまう。
「シェイド」
「はい」
少ししてイグニが俺に話しかけてきた。
怒っている様子ではないが、睨み付けるような視線に萎縮しそうになる。
「【闇属性】だったそうだな」
「はい」
嘘をつかず、素直に答える。
【闇属性】だとわかったのは昨日のことなので、報告自体はすでにあったのだろう。
だが、シェイドは昨日の時点で部屋に引きこもり、自分で報告をしていなかった。
だからこそ、イグニはこの場で質問したのだろう。
確認のためだろうが、タイミングはあまり良くなかった。
「まさか公爵家から【闇属性】が出るなんてな」
「・・・・・・」
ゼーロが見下した視線で話しかけてくる。
だが、俺は答えることはなかった。
シェイドの記憶を確認すると、今まではこういう状況で反論しようとしていた。
認められたいと思うがあまり馬鹿にされたくなかったのだろう。
だが、立場の弱い彼の言葉をゼーロが聞くことはなかった。
「俺は【火属性】と【風属性】だぞ? 父上と母上から遺伝したんだ」
「そうみたいだね」
ゼーロの自慢に相槌をうつ。
ここで反応しなければ、彼は癇癪を起こすらしい。
そして、シェイドに対して酷い嫌がらせを行うのが常だった。
「お前の母親も【闇属性】だったのかもな」
(((((ピリッ)))))
一瞬、空気が凍った。
俺にはその理由がわからなかった。
ゼーロはそれ自体に気づいていない様子だった。
「ゼーロ」
「父上、どうしたの?」
イグニに話しかけられ、ゼーロは笑顔で振り向く。
褒められるとでも思っているのだろうか?
イグニの様子に気づかないのはどうかと思う。
「死んだ者を批判するのは止めなさい」
「え? でも・・・・・・」
「言うことが聞けないのか?」
「・・・・・・わかりました」
反論しようとしたが、強い語気にゼーロは受け入れざるを得なかった。
だが、こちらを睨み付けてくる。
怒られた不満をより弱者に向けてくる。
よくあることである。
「・・・・・・」
視線を向けると、イグニは再び食事に戻っていた。
彼から振った話題なのにこれで終わりなのだろうか?
その反応が俺には腑に落ちなかった。
一体、彼は何がしたかったのだろう?
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