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1-3 元引きこもりは転生先の事情を聞く


「正確にはまだ死んでおらんが、もうあまり期待はできないようじゃ」

「どういうことですか?」


 少し予想外の返事だった。

 てっきり既に亡くなった人物の代わりに俺が人生を謳歌すると思っていた。

 しかし、死んでいないのに期待できない状況がわからない。


「お主が死ぬ少し前、違う世界の神から連絡が入った。本来もっと長く生きるはずの少年が死にそうだとな」

「まだ亡くなっていないわけですね。何か対処はできないのですか?」


 既に命を落とした俺と違って、シェイド少年にはまだチャンスがあるようだ。

 その機会を俺に回すより、彼のこれからに期待した方が良いと思うが──


「神々は生きとし生けるものに直接関わるわけにもいかないんじゃよ」

「俺には関わって・・・・・・いや、死んでいるから例外か?」


 反論しようとしたが、状況的には大丈夫そうだ。

 いや、大丈夫なのか?


「まあ、グレーゾーンじゃな。たしかにお主は既に亡くなっておるが、異世界に転生させようとしておるしの」

「ですよね」


 あまりよろしくない状況だった。

 しかし、そうまでしてシェイド少年をどうにかしたいのだろう。


「それでシェイド少年はどういう状況なんですか?」


 俺のことよりまずは相手のことである。

 死にそうだということ以外に情報はない。

 そもそも、10歳の少年がどうしてそんなことになっているのだろうか?

 病気とか事故が考えられるが、そうなれば生き返ってもどうにもできないだろう。


「簡単に言うと、人生を諦めておる」

「人生を諦める? その年齢で?」


 また予想外の答えだった。

 どうして少年がそんなことを考えるのだろうか?

 疑問に思う俺を見て、神様は説明を続ける。


「彼の生きる世界には魔法がある。それぞれに【属性】が宿り、様々な事象を起こすことができるのじゃ」

「素晴らしい世界ですね。ですが、魔法を使えない人も存在するのでは?」


 神様の話から少年が人生を諦める理由を推測する。

 本来使えるはずの魔法が使えない──絶望する理由にもなるだろう。


「魔法を使えるのは世界の5~6割程度じゃな。残りは魔法を使わずとも生きておるよ」

「そうなんですか?」

「魔法が使えずとも、体内の魔力で身体を強化できる。魔力がなくとも、純粋な身体能力で補ったりもできる。必ずしも、生きていくのに魔法が必要なわけじゃない」

「なるほど。では、どうしてシェイド少年は人生を諦めてるのですか?」


 魔法は便利ではあるが、必ずしも必要でないことはわかった。

 それなら、どうしてシェイド少年は絶望しているのだろうか?

 まったく理解が出来なかった。


「【闇属性】を宿してしまったからじゃ」

「【闇属性】?」


 知らない言葉がでてきた。

 日本人として創作物に触れた身としては純粋に格好いいと思ってしまう。

 しかし、話の流れ的にはあまり良いものではないのだろう。


「【闇属性】とはかつてその世界を強力な力で支配しようとした【魔王】が宿していた属性じゃ。あまりの強力さに一時は世界の8割近くを支配していた」

「・・・・・・それはすごいですね」


 予想以上に壮大な力だった。

 世界の8割を支配するなんて、想像すらできない。


「まあ、あまりの傍若無人な態度に周囲から嫌われ、最終的に孤独になったところを討伐されたようじゃ」

「それはなんとも・・・・・・」


 少し同情してしまった。

 暴力で支配することを肯定はしないが、周囲から嫌われて排除されたことは共感できないわけじゃない。

 規模は違えど、俺にも似たような経験があるからだ。


「そんなことがあったから、その世界では【闇属性】というだけで嫌悪感を持つ者もおるのじゃよ」

「シェイド少年が生きるのを諦めるわけだ」


 10歳の少年にとって、耐えがたい現実だったのだろう。

 俺だって学校でいじめに遭っただけで不登校になったのだ。

 それが世界レベルになれば、そう考えても当然である。


「生きるのを諦めたせいで、彼は眠りについてしまった。おそらく目覚めることはないじゃろうな」

「彼の精神が起きることを拒んでいるわけですね。そんな彼の身体を借りて、俺が代わりに人生を謳歌するわけですか」

「そういうことになるの。お主には酷なことを頼むことになるが・・・・・・」


 神様は申し訳なさそうな反応をする。

 世界レベルで嫌悪されている存在になれと言われているのだ。

 普通に考えれば、断る人がほとんどだろう。

 誰が好き好んで嫌われようとするのか。


「いえ、大丈夫です。やりますよ」

「えっ⁉」


 だが、俺はあっさりと受け入れた。

 予想外の答えだったのか、神様は驚きの表情を浮かべていた。

 なんというか、人知の及ばない存在をここまで驚かせるなんて、結構貴重な体験をしているのではないだろうか?







いじめ、だめ、絶対!


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