37. おすすめ
遅くなりましたー。ドキドキデート編、次回まで続きます。
さぁて、来週のサ○エさんは!
マ○オです。最近世間ではリモートってのが流行ってるらしいですね。これを気に僕の会社でもやろうという話になったのですが、そういえばうちは未だに黒電話とアナログテレビ。リモートなんてできるわけありませんでした。それを言ったら会社の奴らに笑われたんで、見せしめに1人ぶち殺してやりました。『お前をあの世に送って永遠に現実世界とリモートさせてやる』ってね。
さて次回は、
タ○コ、金曜夜の密会
イ○ラ、本当の父親を探す
マ○オの土下座
の三本です。
「なーんてね、あはははは……」
(あ゙ー完全に嫌われた…… ちくしょうミスった!)
あの某国民的アニメのブラックジョークパロディで心を落ち着かせようとするが、よく考えてみればそれをしようと思った時点で十分狂っていた。
なんということでしょう。あんなに軽くてウキウキしていた足取りは、匠の手によってこんなにも重くなってしまいました。
色々あって誤解され、嫌われてしまった。
早瀬さんの後ろを死人のような目で歩き、ときおり乾いた笑い声が漏れる。進んでも進んでも前に歩いている気がしない。さながら、ランニングマシンの上を歩いている気分だ。
あれから一度も話してない。もう買い物は全て終わった。あとはこのまま帰るだけ。そして俺も全て終わるんだ……
「ははははは……」
「……………はぁ……」
「?」
早瀬さんは、こちらを横目で見ると、呆れたようにため息を溢す。
「あの……?」
「……………せっかく来たんだし、どこか……寄ろっか?」
夜? 酔ろっか? よろっかー………………ッ!!
「はい! もちろんです! お供させてください!」
「……………じゃ、行こっ?」
早瀬さんはニッコリ微笑む。
◇◇◇
場所はフードコート。俺達は適当に飲み物を買って、向かいに座る。
「……………そういえば、こうして2人で出かけるのって何気に初めてだね」
「あ、まぁ……はい。ていうか、どうして……」
俺が疑問の視線を向けると、早瀬さんはしばらく間を置いて、わずかに頭を下げる。
「……………さっきはごめん。ちょっと言いすぎた」
「えっ、いや、そんなの」
「……………まぁ、悪いのは全般的に世良君だと思うけど」
「ぐっ!」
「……………誤解だとしても、理由はなんであれ傍から見たらいやらしいこと考えてるように見えるのは事実だし」
「うっ!」
「……………一緒にいる私までそういうふうに見られるっていうか、配慮が足りてなかったと思う」
「ううぅ……本当にすみませんでした……」
「……………ほんっと、仁美さんだったらこれでもかとネタにされて、タコ殴りにされてたよ?」
「いや、あの人と比べると全員が軽く見えると思うんですけど……」
「……………まぁ、それもそっか。いやでも、どっちにしろね?」
「あっ、いや、すみませんでした」
「……………別に……そこまで怒ってないから、そんなに落ち込む必要ないから」
「えっ、嘘……」
「……………なんで決めつけるの……。そんなに周り人いなかったし、さすがにそこまで怒るわけないでしょ」
「だ、だって! 全然話しかけてくれなかったじゃないですか!」
「……………? 今まで私から話しかけたこと、そんなにあったっけ?」
「あ……」
今までの日常を振り返る。こういう雑談的なやつで、早瀬さんから話しかけられたこと……全然なかった。そういえば、いつも俺からだった。
「……………こういうときは大体、退屈しないように世良くん話しかけてくれるのに、あれから全く来ないから……」
「な、なんかすみません……」
「……………いや、いいよ。私も少し頼りすぎてたかもしれない。たまには私からも頑張って話しかけてみるよ」
「ぜ、ぜひ! 俺はいつでもウェルカムですんで!」
「……………うん」
どうやらそこまで嫌われていなかったらしい。誤解が解けて、テンションが上がる。
「でもあれですね。買い物押し付けられたんですし、せっかくならちょっと遊びません? ほら、夕飯を作り始めるにも、まだ時間はあるんですし!」
「……………なんか世良くん、一気にテンションに上がったね」
「はい! そりゃもう、絶好調ですよ!」
「……………そっか。でも、もう少し休憩したい……」
「そーですか。あっ、じゃああれなんてどうですか?」
俺は近くにあるタピオカ店を指す。
「ちょっと前に流行ったんですけど。聞いたことはあるでしょ?」
「……………一応。飲んだことはないけど」
「あっ、俺もなんだかんだでないんですよねー。流行ってたときは行列とかで並ぶのもめんどくさかったですし。一緒に飲みません?」
「……………ん、わかった……」
俺達はタピオカ屋へと足を運ぶ。
早瀬さんは普通のミルクティー、俺は抹茶ミルクティーを買う。
「……………ん、んー……これは……」
「まぁ、美味しいですね。普通に」
「……………うん。一応ね」
「ただ……」
「……………もっと美味しい飲み方あるよね」
「まぁ、正直……はい」
「……………特に味もしないし、なんか餅みたい。なんでこれがそんなに話題になるんだろう。絶対入ってない方が飲みやすくて、ミルクティー本来の味を楽しめるのに」
「んー、でもあれじゃないですか? こう、所々で飲みにくいなってのがあるからこう、なんか満足感みたいながなくて……」
「……………焦ったい?」
「そうそれ! 焦ったくて、ミルクティーを飽きないんじゃないですか? ほら、これ結構甘々で、普通に飲んでたら半分くらいでギブするでしょ? なんかもういいやって感じで」
「……………あー、それはあるかも」
「タピオカがなんというか、アクセント? みたいになってて中々飽きないから、ずっと楽しめるんですよきっと」
「……………え、そんな理由でみんなこれ買ってるの?」
「さ、さぁ?」
「……………まぁ、でもたしかに。ただ甘いばっかりだと正直飽きるし、何かしらのアクセント的なのは欲しいよね。欲しくないわけじゃないんだけど、半分ぐらいでもういいかなー? ってなるっていうか」
「ですよねー」
ふと、考える。ミルクティーか。飽きるくらいの甘々。
はぁ……俺と早瀬さんも、普段からこれぐらい甘々な生活が送れたらいいのに。となると、このタピオカはあの人達か……
いや、タピオカはまるで味のしない餅。あの人達は風味から後味までバッチリついてる。このミルクティーを食ってしまうぐらいに。しかもあの粘着っぷりは餅なんて生優しいものじゃない。ガムだ。
あれはあれだな、永遠に味の続く激辛ガム。そしてミルクティー少なめ。いや、ガムが多めなのか。
と、くだらないことを考えたが、途中でやめた。考えるだけ無駄な気がしてきたからだ。
「それじゃあ、そろそろ行きましょっか?」
「……………うん、そうだね」
無事に全て飲み終わり、しばらくしてからそう提案すると、早瀬さんもゆっくり立ち上がった。
「まず、どこ行きます?」
「……………え、決めてなかったの?」
「え、決めてよかったんですか?」
「……………だって、世良くんが提案したじゃん」
「いやでも、早瀬さんも行きたいところみたいなのがあったら……何かないんですか?」
「……………そもそも、私こういうショッピングセンターどころか、友達ともまともに遊んだことないのに?」
「あ、なんかすみません……」
「……………いや、まぁいいけど……」
「じ、じゃあ、俺が勝手に決めちゃいますね! つっても、ここですることなんて、せいぜいウィンドショッピングとか、ゲームコーナーとかで遊ぶくらいですけどね。あと本屋」
「……………本屋……!」
早瀬さんが、目をキラキラと輝かせてこちらを見る。
「あー、もしかして行きたいですか?」
「……………い、いや、いいよ。そもそも本屋って遊ぶ場所じゃないし、私多分本に集中しちゃうから。それじゃあ世良くんが……」
「別にそんなの気にしなくて大丈夫ですよ」
「……………え?」
「行きたいなら行きましょうよ! ほら! あれですよ。おすすめの本、教えてください! 俺読みますんで!」
「……………いやでも……」
「俺が興味あるんですよ! 行きましょうよ! ね!?」
「……………じゃあ、うん……」
ということで、俺達は本屋で時間を潰すこととなった。
◇◇◇
「……………おぉー、思ったより色々ある……」
「まぁ、早瀬さんがいつも行ってるよなバチバチの本屋や図書館には及ばないですけどね。早瀬さんは、えっ……と、ミステリーが多いんでしたっけ?」
「……………少しだけね」
「へー、じゃあ今日はどんな本を?」
「……………まだ決めてない。それより、行こ……」
「えっ?」
早瀬さんは黙って俺の手を引いて…………なーんておいしい展開は当然なく、普通に俺の前を早足で進む。が、俺の気分はすでに最高潮。心の中では手を引かれている。
(あぁ、幸せだ。こんな幸せがこれから家に帰るまでしか続かないなんて……)
いや、よく考えたら今日はおかしい。そもそも、このお出かけ自体、元は2人きりのただのおつかいで、いわばデート(仮)だったのに、いつの間にやら普通にデートしてる。あれ? 俺今日幸せすぎる。
(あ、俺これ多分死ぬな。うん。確実に死んだわ。はい、お父さんお母さん、今までありがとうございました)
冷静になり、ガタガタと死の恐怖に怯えていると、突然目の前で手のひらが振られる。
「……………おーい、大丈夫? もうついたけど」
早瀬さんが優しく俺を覗き込む。
「あっ、俺これもう死んでもいいわー。うん。もう怖くねぇな。なんかもう悔いなんてねぇわ」
「……………死……は?」
「なんかもう逆に世のため人のために死んだ方がいい気がしてきた。うん」
「……………よくわかんないけど……とりあえず死ぬのはやめた方がいいんじゃない?」
「あっ、はい。生きます。多分あと千年ぐらいは生き続けるじゃないっすかね」
「……………いや、そこまでは言ってないけど……大丈夫?」
「大丈夫っすよー………………ッ!!? あれ……俺もしかして声に出てました?」
なんだか色々と恥ずかしいことを喋った気がする。
「……………えっ、会話もしといて、あれって心の声のつもりだったの?」
「え……あの、どこから?」
「……………俺もう死んでもいいわ、からかな?」
(全部じゃねぇーか!!)
「あの……できれば忘れていただいて……」
「……………まぁ、いいけど。本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です……頭は」
精神的には全然大丈夫じゃないが。
「そ、それより、ここに何かあるんですか?」
俺達は今、本棚の前に立っている。
俺は、無理やり話題を変える。
「……………あぁ、おすすめ」
「へっ?」
「……………だからおすすめ。世良くんに。教えてほしいって言ってたでしょ?」
「あっ、なるほど! で、どれですか!?」
「……………ちょっと待って……」
そう言って、早瀬さんは本棚をしばらく探すと、一冊の本を俺に差し出してきた。俺はそれを受け取る。
「容疑者Oの鬼謀……」
と、書かれてあった。
「これ、ミステリーホラー的な?」
「……………一応ね。二割ほど」
「二割?」
「……………そんなタイトルだし、なんか難しそう感じだけど、文自体は割とストレートで簡単だし、基本的にコメディーだからあんまり本読まない人でも読みやすいと思う」
「へー」
「……………色々とおすすめはあったけど、それなら読みやすくて、面白いし、世良くんに合ってるかなって……」
「すっごい嬉しいです! 早瀬さんがそんなに俺のこと考えて本選んでくれてたなんて!」
「……………べ、別に……大袈裟……」
早瀬さんは照れてしまい、赤く染めた顔を腕で隠す。
「……………そ、それ……シリーズ物だから」
「はい! これ読んだら続編も買います!」
「……………うん……じゃ、じゃあ……読んだら感想、聞かせて」
「も、もちろんです!!」
こうして、俺と早瀬さんとの間に一つ、新しく接点が生まれた。
いやほんと切実にタピオカの良さがわからない…………
自分なりに色々と考察した結果がこれですね。
タピオカって美味しいって思って食べてるの? 味のしない餅にしか感じないですけど……
誰か教えてください!
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