29. みんなで遊園地!後編
更新遅れてごめんなさい。恒例のギャグ回となっております。
俺達は昼食を終え、今はリョータの希望により文房具マンというヒーローのヒーローショーに来ていた。菊井さんがかなり拒んでいたが、みんなで説得し、何とか連れてくることができた。
「ちっ。やっぱ私ここに来なくてもよくね?」
「まだ言ってるんですか? 今日は2人のお別れ会なんですから諦めてください」
「そーだよ仁美さん。また今度ゆっくり彼氏とでも行けばいいんじゃん。あっ、ごめんなさ〜い。彼氏いないんだったね」
「菜々……テメェ殺す」
「まぁまぁまぁまぁまぁ、2人とも暴れないで……」
「ふふふっ、貴様になど負けるかー!」
文房具マンにやられかけていた怪人がそう声を上げる。
「つってもなぁ、歳とると怪人の方を応援しちゃうんだよなー」
「歳を取る=歪むじゃないでしょうに」
すると、怪人は客席に走り出す。
「あー、よくある人質か」
「そういえば、こういうので連れ去られて本当に大泣きしちゃってショーをぶち壊す子供画いるらしいよ!」
「純粋って恐ろしいですね」
「最近は大人を人質に取ることも多いとか」
「へー…………あれ? なんかこっち来てません?」
「ん? ……ほんとだ」
怪人は真っ直ぐこちらへ向かってくる。
真っ直ぐ、真っ直ぐ…真っ直ぐ………真っ直ぐ!?
そして、よりにもよって何故か俺達の前で立ち止まる。
(うわぁ…………この怪人ハズレ引いたなぁ……)
「ゲヒヒ、さぁ! 誰を人質にしてやろうか」
怪人は俺達をジロジロ見つめると、菊井さんの方を見て、手を伸ばす。が、
(あぁ? やんのかコラ? ぶち殺すぞ)
菊井さんに触れる寸前で、菊井さんの殺気により手を止める。菊井さんがさらに目をすごめ、殺気を放つ。これにより、この場に搾取する側と搾取される側という圧倒的弱肉強食の空間が発生。怪人は手を突然自分の横へ持ってきて、背筋を伸ばす。気を付けの姿勢。すると頭を90度、勢いよく下ろす。
「すみませんでした!」
「怪人謝っちゃったよ!」
さすがは菊井さん。もうあんたが怪人やれよ。
こうなってはショーが崩壊するかもしれない。仕方ない……俺が人質になるのが一番いいか……と、立ち上がろうとしたとき、
「ゲヒヒ、よしお前ら来い!」
怪人はシュンさんとマっさんを連れて行く。
「なんでよりによってあの2人やねん…………」
「……………業務妨害……」
「すでに妨害前提なんですね……」
「……………逆に妨害しないとでも?」
「その方が可能性低いですよね……」
その後、怪人に連れられた2人は意外にも大人しく人質に徹していた。が、問題はこの後に起こった。
色々あってヒーローが逆転し、怪人は追い詰められていたのだが…………
『ぐっ……!』
『ふっ、怪人よ! お前の負けだ! 諦めろ!』
「あ、」
「……………ここでかぁ」
『おのれ文房具マン…………やられ』
「るわけないだろぉぉお!!」
『『!?』』
「……………最っ悪だね……」
「それな」
「どうしてそこで諦めてしまうんだ! もっと頑張ればまだチャンスはあるだろぉ!? なんのための人質だ! もっとあたし達を上手く使えよぉお! 攻撃してきたら盾にするんだよ! ほら立て! まだ戦えるだろぉ!? 気合入れろ! 立てぇぇぇええ!!」
『あ、はい。すみません』
「また謝っちゃったよ」
「……………最悪を超えた悪ってなんだろうね」
「地獄じゃないですか」
怪人はマっさんに言われるがまま立ち上がり、再びヒーローと戦う。マっさんは怪人の斜め後ろで腕を組み、熱血コーチのような顔で「そこはこう!」「そーされたらこうだろ!?」「いいぞいいぞ!」「もっと腰を入れろ腰を!」と、指示を出す。
(いや、何のための人質だよ……)
「……………そっか、これが地獄か……」
「なんでどいつもこいつも怪人が似合うんですかね」
ヒーローが攻撃しようとするとシュンさんを盾にして、その隙に自分で攻撃。この黄金コンボに、ついにはヒーローも膝をつく。
「よし! いいぞ! トドメをさせ! トドメだ!」
マっさんは嬉々として叫ぶ。
「いやトドメさしちゃダメでしょ」
そんな中、ステージ上では軽くパニックになっていた。
「よし! いけ!」
「あの、すみません……一応俺負け役なんすけど……どう収集つければ…………」
「ん? 仕方ないな……シュン、やれ」
「イエッサー!」
マっさんがシュンさんに何やら指示を出すと、突然シュンさんが怪人の下を離れ、ステージの真ん中に躍り出る。
「このままじゃ文房具マンがピンチだ! ここは俺の応援で元気を出してもらおう!」
シュンさんはどこから取り出したのか、マイクを持ってそんなことを言い始める。
「……………すっごい嫌なこと予感」
「それな」
「それじゃあいきまーす! これで皆に笑顔になって貰うぞ! ショートコント、ヒーロー」
(やっぱりそうきたかぁ…………)
「『出たな怪人め! 俺達ファイブレンジャーの名乗りを聞け!』
『ブルーレンジャー!』
『イエローレンジャー!』
『グリーンレンジャー!』
『ピンクレンジャー!』
『そして最後に、俺がリーダーのスカーレットレンジャー!』
『おいおいおい! ふざけんなよ! なんだよスカーレットって! お前は赤、レッドだろ! スカーレットって……緋色じゃねぇか!』
『いやだって俺、緋色(ひいろ)だから!』
『んん〜、コメディア〜ン!』
ありがとうございました!」
(((うっわ、つまんな)))
「……………最後の『んん〜、コメディア〜ン!』がすっごい腹立つ」
「これ以上地獄にしてどうすんねん…………」
「ぶふぅー! あははははっ」
「ツボミちゃん、俺は君の将来が心配だよ」
◇
なんだかんだあって、とりあえずヒーローショーは無事に終わった。観客のみんなも、これも台本の内と勘違いしたようで、結果的には笑えるヒーローショーとして大成功をおさめたので、特におとがめはなかった。途中の一発ギャグに関しては一切笑えなかったが。
「次どこ行きましょうか。ツボミちゃんは何かある?」
「んー、私は観覧車に乗りたいけど最後でいいかなぁ……あっ、お化け屋敷とジェットコースターに行きたい!」
「えっ、ツボミちゃん、そんなチャレンジャーなの」
「違うよソーにぃ。私は入らない。2人が苦手なんでしょ? 日頃の恨み〜!」
ツボミちゃんは早瀬さんと菊井さんを見て、悪そうな顔でニヤニヤする。
(菊井さんはともかく、早瀬さんのことまだ根に持ってたんだ……)
「お、おい! ふざけんなよ! 絶対行かねーぞ!」
「……………む、無理無理! 絶対嫌!」
「え〜、ツボミちゃん達のお別れ会なのに拒否権なんてあるのかなぁ?」
「「んぐっ…………!」」
ここは性根が腐った女、先生。しっかりツボミちゃんに便乗する。
「まぁ、遊園地に来てこの2つに行かないってのも変な話ですよね! 行きましょっか!」
「テメ世良覚えとけよ!」
こうして、2人のお化け屋敷とジェットコースターへの強制参加が決定となった。
◇
「……………こ、怖い……」
(可愛い!)
まずはお化け屋敷から入ることになったのだが、ソワソワしている早瀬さんが異常に可愛い。
ちなみに参加メンバーは俺、早瀬さん、菊井さん、シュンさん、先生。となった。リョータとツボミちゃんは怖いからと参加しなかった。本格的にツボミちゃんの将来が心配になった。
「はぁ、彩ちゃん。いくらなんでもそれは怖がりすぎだろ」
「……………じ、自分だってジェットコースター怖い
じゃん」
「そりゃそーだろ。絶対ジェットコースターのほうがこえーよ。大体、本物のお化けならともかくお化けのフリだぜ?」
「……………それでも怖いものは怖い」
「いやいや、そもそもの話。お化けより人間の方がよっぽど怖いだろ」
「あー、そういう人も多いですよね。人間の方が直接被害を受けるからって。お化けは触らないって」
「いやいや、それはちょっと論点ズレてね?」
「え? 何がですか?」
「だってお化けは精神攻撃、人間は身体攻撃ってのがまずフェアじゃねーだろ。怖いの土俵が違げーよ」
「まぁ、たしかに」
「同じ精神攻撃ってとこで競わなきゃダメだろ」
「それもそうですね……」
「とても数行前までジェットコースターの方が怖いとか言ってた人とは思えなーい」
「たしかに! あれも怖いのベクトルが違いますね!」
「同じ精神攻撃だからいいんだよ!」
「屁理屈か! …………でも、精神攻撃で人間の方が怖いですか? よく枕元に幽霊がいるより知らないおっさんがいる方が怖いって言いますけど、それって知らないおっさんがいるから怖いって言うより、入らないはずの家に勝手に入って来てるから怖いってのが大きいと思いますし、知らないおっさんでいいなら知らないおっさんの幽霊でも良くないですか? 初見でおっさんか幽霊か見極めれてる時点で……って感じなんですけど……」
「バーカ、そんなんじゃなくてもっと普通に」
「盛ってません?」
「いやいや盛ってねぇよ。ほんと普通だって。例えば普通に……彼氏ができるとするだろ? それ自慢したら『えー、〇〇ってそんなカッコよくないでしょ〜。私はないなぁ』とか聞いてもないのに言ってる奴に限って裏で私の彼氏とお体よろしくやってんだぜ? 普通に怖くね?」
「普通って何か知ってます? 本当にそんな最低女いるんですか? んな非現実的な……」
「そーだよぉ〜、そういうのって菊井さんだからじゃーない?」
「こういうのに限ってやるんだよ」
「なるほど現実的ですね」
「あれおかしいなぁ、世良くんの手首にはドリルでも付いてるのかなぁ?」
「どうぞー」
そうこうしていると、スタッフが俺達を誘導する。
「……………ついに来た……」
「うし! 入ろーぜ」
◇
中を歩く。
まぁ、中は王道に薄暗い感じだ。
「まぁ、俺も怖いってわけではないですけど、入ると何故か緊張しますよねー」
「ドッキって?」
「そうそう、ドッキ、ドッキ」
「勃○、○起!?」
「末期、末期!」
『た〜す〜け〜て〜!』
井戸のような場所からお化けが這い上がる。
お化けは菊井さんの目の前へ飛び出す。
「怒っ気、怒っ気……!」
「ひぃい! すみません!」
お化けは元の場所へ逃げていく。
「たしかに人間の方が怖いかもしれませんね」
「……………ドッキ、ドッキ」
「えっ」
早瀬さんが俺の腕を掴む。かつて無いほどの密着。柔らかい体が当たる。
「ラッキ、ラッキー!」
「鈍器、鈍器ぃ……!」
「ドッキ! ドッキ!」
「キャー、ハヤト〜、私怖〜い」
「大丈夫だよ、マァキー。俺が必ず守るからさ!」
前方で、カップルが薄暗いことをいいことにイチャついている。
「「「怒!っ気! 怒!っ気!」」」
「ほーう、必ず守るか……言うたなクソがぁ……!」
「殺気、殺気!」
「成敗してくる……」
菊井さんは走り、急いで2人の先へ回り込む。
後は髪を前に持ってきて、2人が近づいた瞬間、前に出る。
「どうも……」
「キャァアー!」
「ハハ、マキは怖がり過ぎだって! 俺がついてるから大丈夫。こんなの、ただの人だろ? あっどうも、お疲れ様でーす」
彼氏の方が、彼女の体に手を巻きながら菊井さんに近づく。
すると、もちろんただでは終わらない菊井さん。彼氏に最高級の殺気を放ち、指をポキポキ鳴らす。
「ボッコ、ボッコォオ…………!!」
「ひ、ひぃぃぃいいやぁぁああ!!」
「あちょ、待ちなさいよ! 最低! クズ!」
彼氏は、彼女を勢いよく振り払い、一目散に逃走。彼女は完全に冷めたようだ。
これには菊井さん大満足のサムズアップ。俺もそれに同じくサムズアップ。
「(2人の未来が)バッド、バッド」
「(菊井さんが)グッド、グッド」
◇
「いや〜、楽しかったなぁ! 特にこの世の悪を成敗したところだ! やっぱTPOを弁えないやつはダメだよなー!」
「俺は超幸せでしたー」
早瀬さんは終始俺の腕に抱きついていた。すごくいい匂いがしました。
「しまった! あのカップルに気を取られて!」
「……………次はジェットコースター……逃がさない……」
「い゛っ…………!」
◇
「うあぁぁぁあ! やっぱ嫌だー!」
「もう乗っちゃったんだから諦めてくださーい」
ツボミちゃんとリョータは身長的に乗れないため、2人とフミさんを除いた6人で乗ることとなった。
ちなみに席順は前から俺と早瀬、菊井さんと先生、シュンさんとマっさんの順だ。俺と早瀬さんが隣なのは流れで決まったが、それに対して特に菊井さんは文句を言ってこなかった。というかビビりすぎてそんなこと忘れていた。
「いやー、楽しみですねー」
「……………うん。仁美さんの怖がるところ楽しみ…………」
「くっそ、彩ちゃんめ!」
そうこう言っていると、ジェットコースターは出発。どんどん上へ上がっていく。ここはこの遊園地の中でもかなり怖いジェットコースターなので、どんどん高いところに上がっていく。
「ワクワクしますねー…………って、早瀬さん?」
横を見ると、早瀬さんがガタガタ震えている。
「……………こ、怖い……えっ、まだ上がるの?」
「えぇ……」
「……………だ、だって初めてだし……」
早瀬さんは我慢できなくなったのか、俺の腕に抱きつく。
「ド……ドッキ、ドッキですやぁぁん!!」
「あ、世良テメェゴラァァァア!!」
◇
「……………こ、怖かった………もう二度と乗りたくない……」
「自分で強制しておいてそれじゃ世話ねーな」
「あれ? 菊井さんは思ったより平気そうですね」
「あぁ、全然平気だったぜ! あんなとこ見せられたらなー。怒りで怖さなんかふっ飛んじまった!」
「流石は怒りの女……」
「……………そ、そんなの……詐欺だ!」
「いやいやおいおい、それはちげーだろ彩ちゃん…………」
遊園地お別れ会はまだまだ続いた……
ギャグ回ですが、世良にとってはラッキー回かな?
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