27. ゴールデンウィークの罠
ギャグ回です。書いてて楽しかったですね。
下ネタが含まれます。ご了承ください。
「で?何か言い訳は?」
「いや、特には……」
「へー、何もないんだ。おいおいおい、何かあんだろ、あぁ?」
「えっと………その、最近忙しくてですね………」
「あぁん?それが理由になると思ってるのかなぁ?」
「あんたが強制的に言わせたんじゃないですか!」
「は?悪いのは誰?言い訳したのは誰?無いなら無いって突き通すべきなんじゃないのかなぁ?」
「はい。そうです。すみませんでした」
「で、言い訳は?」
「いえ、ありません!」
「よーし、二倍に増やしまーす」
「理不尽!」
「あぁん?」
「ごめんなさーい」
夜十時。
今俺が何もしているかって?
ただいま先生から絶賛説教され中だ。それはなぜか。
「あのね、なんで1つも手つけてないの?連休は明日と明後日で終わり。明後日はみんなで遊び行くから時間もない。今日と明日、というか実質明日で全部終わらせないといけないんだよ。この連休中課題」
連休中課題!
五月の頭に毎年ある連休、黄金の楽園の日々!
仕事に疲れた者達が一年に一度、羽を休める大型連休であるが、その実、生徒達に本物の休みなど与えられない。プリントやワークなど、出される宿題がただの問題という単純なものである分、その量は夏休みなどと比べても大差ない。
生徒達にとっては勉強する場所が学校から家に変わっただけなのである。それ故、油断していると何一つ終わらないまま休み明けに教師に怒られることになる。
「はい……すみません……」
「あのね、クラスの人が出さないと私の評判まで下がるんだからね?」
「わかっております。ごめんなさい……」
「彩ちゃんはもう終わってるってよ」
「ごめんなさい……」
「はぁ………文系科目なら私教えられるから、早く進めよう。世良くん得意科目は?」
「体育ですかね」
「今ボケてる場合?」
「違いますね、ごめんなさい。理系ならギリギリいけます!」
「はい。よろしい。それじゃあ、まずは文系科目から始めようか」
「はい。よろしくお願いします………」
こうして、先生ご指導の下、勉強会が始まった。
腐っても教師の先生。文系科目はあっという間に消化していき、多少の夜更かしにはなったが、寝る前に終わらせることができた。
が、問題は理系科目だ。その次の日に渡されたプリントを解いていたのだが、これが全くわからない。
「はぁ………本当に理系得意なの?」
「いや、まぁ……文系よりってぐらいで………」
「もー、私も理系は全くわかんないよ?どうするの、このままじゃ終わんないよ?」
「どうしましょう………」
「ま、ここには幸い大人がたくさんいるしね。他の人に聞いてみよっか」
「そうですね………」
と、辺りを見回すとマっさんが目に入る。マっさんはフミさんを抜かせば一番の高齢。もしかしたらわかるかもしれない。
「あのー、マっさん!ちょっといいですか?」
「おぉ、若者よ。どうした?」
俺はマっさんに事情を説明する。
「なるほど………任せとけ!あたしはこう見えて理系選択者でな!大得意だ!」
「ほんとですか!?やった!じゃあ、ここの問題なんですけど………」
「ふむふむ………」
俺はマっさんにわからない問題を見せる。
マっさんは問題を十秒ほど見つめた後、声を上げる。
「おし!わかったぞ!」
「ほんとですか!教えてください!」
「うん。答えは3だ!」
「…………………あの、計算式も教えてもらっていいですか?」
「あぁ……そんな物は、ない!」
「は?」
「漢なら!式で計算なんて小賢しいことしないで、頭の中で考えろ!」
「え、じゃあマっさんはどうやって解いたんですか?」
「勘」
「は?」
「だから勘」
「…………………いやダメでしょ」
「はぁ………あのなぁ……四捨五入って知らんのかお前は」
「お前こそ知ってんのか」
「いいか?だからこう書け!『全ての数字は3になりうる。これが四捨五入の定理だ!』ってな!」
「なるか!ってな!じゃねぇんだよ!何ちょっとドヤ顔までしてんだよ!」
「はぁ……馬鹿だなお前。いいか?例えば10,001って答えがあるとするだろ?そしたら一の位を四捨五入して10,000だ。そしたらそこから1引く。すると9,999になる。端数で9,000。それにさっき引いた1を足せば9,001。これを繰り返せば3にいつかなる!」
「なるか!めちゃくちゃじゃねぇかその理論!何端数切り捨ててんだよ!」
「漢がネチネチ細かい数字覚えてんじゃねぇよ」
「そういう問題じゃないでしょ!計算の前に男も女もねぇよ!みんな平等!」
「はぁ………これだから女々しいやつは………」
「男らしいの意味を履き違えてますよ。大体、ほんとに数学得意だったんですか?」
「まぁな。と言っても大学出てから一切触れてないから忘れたけどな!」
「それ早く言わんかい!」
「細かいなぁ………そんなの関係ないだろ」
「あるわ!あんた邪魔しに来ただけじゃねぇか!」
「頼んだのはそっちだろ?」
「騙されたんですよ!俺は!…………はぁ、もういいです………別の人に頼みます……」
「もーう、世良くん騒がない………大体、どれもそんなに難しいのは出てないはずだよ?もしかして世良くんってバカ?」
「うぐっ………」
「なんだバカだったのかぁ!唾つけとけ!治るぞ?」
「治るか!帰れ!」
(他に教えてくれそうな人は……………)
そのとき、ちょうど居間の扉が開く。
そこから、菊井さん、シュンさん、ツボミちゃん、リョータが入ってくる。
「あれ?ソーにぃ何やってるの?」
ツボミちゃんは俺に気付くと、早速走り寄ってくる。
「あぁ、宿題をね………」
「ふーん………大変だな。頑張って!」
「うん!ありがと!」
と、言ったはいいがわからないものはわからない……
リョータ……は年齢的にまず論外。
菊井さん……に分かるわけないか。
となると残りはシュンさんか……
「あっれー?今なんかバカにされた気がしたんだが」
「まさかまさか、してませんよー」
「私に……何が分かるわけないって?」
「しっかり読んでんじゃねぇか!」
「はっ!馬鹿にすんな!高校生の問題ぐらいわかるわ!」
「ほんとですか……?」
「たりめーだ!なんの教科だ?」
「数学です」
「あ、ごめんやっぱ無理だわ」
「なんやねんお前!」
「童貞の数学とかやってらんねーわ」
「今関係ねぇだろ童貞!」
「おっ?唾つけるか?」
「治らねえっつってんだろ。いつまでおんねん帰れ!」
「童貞の数学とかπ出るたんびにニヤニヤして……一の位が0だったときなんかもう、鼻血出すからな」
「出すか!それはそれで童貞に夢見てるだろ!そこまでピュアじゃねぇよ!」
「お前ら授業中に○起するじゃん」
「生理現象!男子のあるあるだからそれ!」
「実際、数学の授業の勃○率は高い!」
「それはみんな退屈で寝るからだろ」
「そういやクラスの陰キャに授業中居眠りして、あろうことか夢○した奴がいたなー」
「強者!その人に比べたらあらゆる不幸が幸せに変わりそう」
「その日からあだ名がムッシュ童貞になったなぁ」
「ムッシュ?」
「夢見心地の白き狙撃者から取ってムッシュ」
「夢見心地の白き狙撃者(笑)!世界って残酷ですね」
「まぁ、一ヶ月しないうちに転校したんだけどな。それ以来、あいつはヒットアンドアウェイなんじゃないかってのがもっぱらの噂だった」
「転校ぐらい許してやれ……」
俺が笑っていると、後ろから悪魔の目をした先生が耳元で囁く。
「世良くーん?笑ってる場合かな君?○起したタイミングで立たせてもいいんだよ?どんなあだ名がつくかなぁ?楽しみだねぇ?」
「ひぃぃ!ごめんなさい!真面目にやります!」
「真面目にヤります?」
「邪魔すんな!俺の命が懸かっての!」
「だったらもう少し真剣にやろうかぁ?」
「イエス、マム!」
ビシッと敬礼をしてとりあえず先生の機嫌を取る。
「はい!ソーにぃ!お茶持ってきたよ?」
ツボミちゃんが机にお茶を置いて、ニコニコしている。
「ツボミちゃんってここ唯一の天使ですよね」
「私、お勉強じゃ役に立てないから……」
「なんか涙出てきた……」
「ソーにぃ!?」
「うぅっ、ありがとう……」
「そろそろやべーよ、こいつのロリコン」
「ツボミちゃんの垢を煎じて飲ませたいわぁ……」
「ったく、おいシューン!お前わかるか?」
「んー何々?」
「シュンさんってまだ大学生でしたよね?」
「一応ねー」
「じゃあこの問題わかりますか!?」
「あぁ、数学だっけ?任せて!こと数学に於いては自信あるから!菊井さんみたいな人とは一味違うからね!」
「解けさえすれば五十くらい味違いますよ」
「任せて!んー…………これは3だね」
「また3!?」
「おぉ?やっぱり3じゃないか!」
「な、なんで3何ですか?」
「だってほら、よく見て?」
そう言いながらシュンさんはプリントに3を書いて、横に回転させていく。
「3って数字を横から見たら………おっぱい!」
「テメェも下ネタじゃねぇか!」
「だってわかんないし」
「返せ!俺の時間と期待を返せ!大体、何が一味違うだよ!」
「いやいや、菊井さんはπって言う誰しもが思いつく安直なネタでしょ?でも俺は3っていう普通の数字を見る角度を変えることによって下ネタに変換したんだ!」
「ドローだよ!」
「数学で大事なのは1つの見方に捉われないことだよ!」
「良いこと言った風な空気出してんじゃねーよ」
「最初から下ネタか下ネタに変換するかってのは同じボケでも大きな違いだよ?」
「πも元から下ネタじゃねぇよ!」
「えっ、そうなの?」
「ウィリアム・ジョーンズに謝れ!」
「誰だよそれ……」
「はいはーい!この問題もう全部オレが解いちゃった!」
「は?」
リョータがいつのまにか俺のシャーペンを握っていた。
急いでプリントを取ると、うんこの落書き落書きが施してあり、ご丁寧に全ての問題に百万兆と書いてある。
「お前…………なんてことを………」
「世良くーん?真面目にやろっか?」
「俺のせいなのこれ!?」
俺は1人、シクシク泣きながらリョータの落書きを消す。
「はぁ………もう諦めよっかな……」
「ばっ!お前それ禁句!」
「は?」
菊井さんが急に焦った顔で俺を咎める。
すると、菊井さんの後ろからものすごい熱気が飛んでくる。飛ばしている人物はマっさんだ。
「諦……める?」
「ま、マっさん?」
「あーあ、お前やったなぁ。これもう止まらねぇぞ」
「は?」
「どうしてそこで諦めてしまうんだお前!諦めるなよ!もっと頑張ってみろよ!頑張れよ!あとちょっとだろ!?ダメだよ!ダメダメ!そこで諦めたら終わりだよ!」
「は?え、なに?怖い………」
「お前を応援してくれる人達がいるんだから!そこで諦めたら終わりだぞ!もう少し頑張ってみろよ!どうして諦めちゃうんだ!」
「oh…………唾とかの発言から薄々気づいてたけど、熱血キャラかよ…………」
「マっさんはな、諦めるって言葉に敏感なんだよ」
「その情報もっと早く言って欲しかった……」
「気合で考えれば絶対わかる!わかる!頑張れ!あとちょっとだ!もっと熱くなれよぉ!」
「すでにこれ以上ないくらいに暑苦しいよ」
「……………って、みんな集まって何してるんですか?」
お茶を飲みながら、早瀬さんが扉からこちらを見る。
◇◇◇
「で、こうなるってこと」
「はー、なるほど………早瀬さんは文系タイプかと」
「……………そうだけど。文理に別れるのは二年生からでしょ。今のうちは一応どっちも解けるようにしてるよ」
「頭いいですね……」
「……………別に普通」
「ははっ………俺普通以下………」
最終的に、通りがかった早瀬さんに尋ねると、ちょうど暇だったらしく、ほぼ全ての問題を完璧に教えてもらった。
「とはいえ、これで終わったー!ありがとうございます!」
「……………こないだの……お返し……」
「そんなの全然!」
「……………ありがとう………言いそびれたから」
「じゃあ、どういたしまして!ほら、早瀬さんも!」
「……………どう、いたしまして……」
早瀬さんは恥ずかしそうに笑った。
「なんだこの申し訳程度の登場」
「言うなよそれ………」
途中の菊井さんとの会話、男子は結構分かるっていうか、かなりのあるあるネタじゃないですかね?男なら誰でも一度はこのネタ言ったことあるでしょ。
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