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『歪 [いびつ] な兵糧戦』

…時刻は夕方。


夏なのでまだまだ明るいが暗くなる時間は近い。


――ここで神崎達が物資を取りに行くため歩き出す。


いつもの神崎(かんざき)、立花(たちばな)、海田(うみた)、の3人だ。



東条は離れた場所からそれを目線だけで追うも、立花も目線で東条を見る。


「……」


「……」


立花……


アイツもそろそろ気付いてるハズだ…


もし"荒れた海"で例えるなら、大きな"第一波"がもうそろそろ来る時期だ…



東条は神崎達3人がよく居座っている屋上のスペースを見る。


そこには大量のクーラーボックス、大量の電池類、そしてある程度の数の懐中電灯やキャンプなどで使うランタン、など…


「……」



東条は胸中で言葉を続ける…



これは俺と立花で『勝手にやっている兵糧戦』と言っても間違いじゃないが、


そもそも普通の兵糧戦じゃない…


立花もそれに気付いているからあれだけのモノをこの屋上に持ってきている…



「……」



東条は屋上から街を見渡す。


それは別に黄昏ている訳ではなく現状確認…


「…女性陣に勧めるなら今の内か……」


そう呟き、東条は屋上にいる春香と麗と美優のところへ行く。


「春香さん…」

「…!」


…彩芽との一件で少し元気がなさそうな顔をしている春香だが、


東条はそれを気にするよりも先に伝えたい事があった。


「女性陣全員に伝えてほしい。キミも含め今の内に全員で銭湯に入って来てほしいと」

「…!」


麗と美優も聞いているので問いかける。


「なんでですかー?」


東条は屋上から街……街灯や店の看板の光を見渡す


「5大インフラ……電気、ガス、水道、通信、交通…。今のところ消えたのが通信と交通…。運良く残っていたのが電気とガスと水道だ」

「そう…ですね?」


麗は首をかしげる。


「今でも正常に繋がっているのは充分にありがたい話だ。きっと各ライフラインに有能な社員たちが生存していてやれる事をやってくれてるんだろう…」


春香はすぐに東条の言いたい事がわかり先に口を出す。


「途絶えるんですね…?」

「え?」


美優が春香の顔を見ながら言う。


「……ああ。まだ今日かどうかはわからない。それでもわかるのは最初は電気が止まる。これは話すと長くなるから言わないが仕組上そう言うものだ。順番としては電気、水道、ガス、の順番だ」

「有能な社員さん達がいたとしても途絶えるんですか?」

「ああ。予想ではパニックの日から数日で止まる計算だ。だから今電気が繋がってるだけでもありがたい」


もう一度東条が屋上から街の明かりを見ると、春香も一緒に見る。


「ここからは電気をないものとして考えて生きていかないといけない…」

「……」

「そのために物資の主導権を神崎達に押さえられててはかなり不利になる。ここで言う"物資"はもう食料だけじゃない。アウトドアグッズで使えそうなサバイバル品や携帯できる電気系統のグッズなども含めての"物資"だ」


東条が街から春香へと向き直る。


「…まぁでも、今はそんな話は置いといて、とりあえず電気がある内に汗を流す事をオススメするよ」

「はい。ありがとうございます。みんなに伝えます」

「あ、いや、女性陣"全員"じゃなくて良かったな」

「え?」

「彩芽さん…彼女には俺から話す」

「……!」

「いや、春香さんを気遣ってる訳じゃない。彼女と話しておきたい事がある…」


そう言って東条は屋上の離れた所で一人で座っている彩芽を見る。


(…やっぱり彼女は必要なカードになりつつある……)


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