03
…時は過ぎ去り高校生になった春香。
春香にとって今や神田家の両親は本当の家族のように想っている。しかしどこかでそれは本物の両親を忘れる事になるのではないかと言う罪悪感があった。
ガチャッーーー
自宅の自室から出ると、丈も部屋から出てきて目が合う。
時刻は夕方でお互い学校から帰宅したばかりで制服。
…お互い言葉を交わす事もなくなった…と言うか丈が一方的に口をきかなくなった。
思春期と言うやつなのか。もともと丈は口下手で弱気な女々しいタイプだがとある日を境に春香によそよそしい態度になり避けて来た。
春香自身は思春期なんてものはわかってないので単純で『感じの悪い奴』と言う認定してしまい意地になって声をかけないようにしている。
もう丈の身体は春香より大きい身長175cmで陸上部に入っていることもあり体はガッシリしている。
・
・
・
気が付けば神田公男…この家での父も不思議な対応をしてくる。なにやら春香に気を遣って接している。
春香は当時はわからなかったが大人になってからわかる。
そりゃ血のつながってない年頃の女の子がいれば、まともなおじさんであればあるほど、気を遣って接してくるようになる。
もう小学生の可愛いおてんば娘を扱うように接するわけには行かない。
・
・
・
そして大学まで進学させてくれた両親。春香と丈の大学合格祝いをしてくれる。大学合格だけなのに少し高級な焼肉に連れて行ってくれた。
・
・
・
それからも丈は口をきいてくれない。
実は丈が口をきかなくなってからゲームはお互い一切していなかった。
春香も友達付き合いで女友達でゲーマーはいなかった。
もうかれこれ何年だ。
丈が口をきかなくなったのは中3ぐらいだった
・
・
・
就活の大学4回生。地獄だ。その中でも両親には迷惑かけまいと打ち勝った面接。
プツッと糸が切れ授業もほとんど行く必要がなくなり暇になった。
そこで再び手を出したゲーム。最初は暇つぶしのつもりだった。しかし改めて思う。
「…」
本物の両親が私のためを想って買ってくれたゲーム…
「…」
ここ神田家で家族全員で大会のように楽しんだのもゲーム…
「…」
そして丈と連日連夜バトルした、いわば『コミュニケーション』をしたのもゲーム…
「…」
―――春香はコントローラーを握りしめながら涙を流した。
すでに敵には殺されている。ゲームオーバーの文字だ。




