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伝説の聖女からのメッセージ

挿絵(By みてみん)

翌日の『公開試験会』決勝トーナメント2日目。


魔術部門の試合はその迫力と華やかさから貴族たちにも大人気で、各部門の決勝戦がおこなわれる最終日に近い数の来場者がある。

特に第一王子であるレオンの活躍を期待する人は多く、応援グッズは発売後即完売なんだとか。

まあ、冷ややかだけど顔がいいのは間違いないからな……。



アゼリアの襲撃事件を足がかりに公爵家の失脚を狙う貴族家は少なくなくて、ルチアナやミレーユに恥をかかせようと心無い野次を飛ばした観客は、会場の警備にあたっていた王宮の騎士に取り押さえられてかなり厳しく取り締まられたようだった。

2人はそんな野次程度に動揺することもなく、その実力と勇気を堂々と観客に示して見せた。


結果としてはミレーユは準決勝敗退、ルチアナは初戦敗退という結果だったものの、そもそもルチアナの初戦のレオンとの試合は混戦を極め、予定されていた試合時間を大幅に超過し、最終的にルチアナは「あのレオンハルト王子殿下を過去もっとも手こずらせた対戦相手」とかいう最強のヒール役みたいな呼び名をつけられていた。

本人的には実力を出しきれて満足げだったし、ルチアナらしいといえばらしい結果だ。



私は目的の試合観戦の合間に彼女たちに声をかけにいったり、ミモナに学院の校舎の一部を案内して回ったりしながら、レオンの決勝進出確定を見守るとすぐに学院を後にして、再びクロヴィスと一緒に王城の禁書室へ向かって本の確認作業を再開する。



「……ふぅ」



膨大な情報量に対して収穫のあまりの少なさに小さく息を吐いた。

半分近い本棚の禁書に目を通したけどいまだ手がかりなしだ。

明日は剣術部門でクロヴィスの試合があるし、今日は早めに帰ってちゃんと休ませてあげたい。


少し休憩でもしようかと私が声をかけようとしたクロヴィスは、首を傾げながら一冊の本を開いてページをめくったり戻したりしている。



「なにか見つかったのですか?」



私が声をかけると、クロヴィスは本から顔を上げてこちらに視線を向ける。



「いえ……ただ……うーん」


「?」



歯切れの悪い返事を聞いて、私は確認していた本棚の前からテーブルに本の山を積んでいるクロヴィスの元へと移動する。

その手元に広げられていたのは薬学に関する本で、様々な薬草の生息地、煎じ方、取扱時の注意事項などが記されていた。

悪魔や王家の歴史とは関係がなさそうだけど。



「この本がどうかしたの?」



私が聞くと、クロヴィスは渋そうな顔をしながら首を傾げる。



「……微かに魔力の臭いがするような……」


「臭い……?」


「臭いというか、気配というか。でも魔術が使われた痕跡はないんです」



クロヴィスの魔力への感知能力は私よりも遥かに高い。

その彼が"魔力の臭い"がするというなら、きっとそれは事実なんだろう。

でも、魔術を使用した痕跡がない……ということは……



「…………」



私はクロヴィスの手元の本をじっと見つめたあと、その表面を聖女の加護で撫でた。



「! 文字が……」



本の中の文字の一部が、蛍光マーカーを引かれたようにマークされている。


私は顔を上げて本棚に目を向けると全ての書物に聖女の加護を通し、文字が光ったものだけを抜き出してテーブルへ並べた。

ジャンルもサイズも著者もバラバラな12冊の本に、断片的な文字だけが光っている。



「並べると文章になる、とかじゃないんですね。この文字は何かを示してるんでしょうか」


「……順番が違うのかも」



私が蔵書リスト順、著者名順、タイトル順など様々な順番で本を並び替えた結果、創作年順に並べた際にそれは綺麗な一文になった。



「『ヴェルザグラトの討伐に失敗、王城の地下に封印』……」


「ヴェルザグラト……? この名前、どこかで……」


「…………」



私は蔵書リストの中から目的の本を探し出すと、位置を確認して本棚から抜き出し手元に呼び寄せる。

それは昨日クロヴィスが見つけたウーリャ・ヴァステリアの著書、『生まれ変わったらグランドワイバーンになって世界征服したい』だ。



「……この小説に同名の悪魔が登場していました」


「!」



ワイバーンの王を目指す主人公の前に立ちはだかったヴェルザグラトという悪魔は、人間から吸い取った感情を災害に変換して自在に操る力を持つ。

人々の怒りは火災に、悲しみは水害に、狂喜は強風となって主人公のワイバーンを襲うのだ。


私はクロヴィスを見た。



「聖女の加護でしか見ることができない文章に、王城の地下に封印されているというヴェルザグラト、資料ばかりの禁書室になぜか置いてある小説には同名の悪魔が登場し、その小説の著者はウーリャ・ヴァステリア……偶然にしては出来すぎているように感じます」


「……まさか…………」


「ええ。おそらくこれは、伝説の聖女が未来の聖女(わたくし)へ残したメッセージではないかと。師匠に話を聞いてみる価値がありそうです」


普段エブリスタで書いている同名小説をこちらでも順次アップしています。

★毎日22時に続話追加

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