ミレーユのために
教室棟に戻って着替えを終えた私はクロヴィスと一緒に学院食堂に向かう。
今日は予選リーグの対戦相手を含め、見ておきたい試合がいくつかある。
昼休みでもないのに、食堂には『公開試験会』にエントリーしていない生徒の姿もとても多かった。
課題を提出する必要があるとはいえ、みんな年2回のお祭りに便乗したいようだ。
私は予選リーグの結果がリアルタイムで表示される一番大きな掲示板を見上げた。
「…………」
魔術部門の予選第19試合。
ルチアナの初戦の結果が不戦敗の表示になっている。
今朝も教室には姿がなかったから、もしかしたらとは思ってたものの……。
ローゼンベルグ家は私の想像以上に大変なことになってるようだ。
公爵への刑の執行タイミングは公表されていないけど、完了したという知らせはないからまだなんだろう。
複雑な感情を吐き出すように小さくため息をついた私に、クロヴィスがそっと顔を覗き込みながら声をかけてくれた。
「お嬢様」
「……どうしました?」
「ルチアナ様は今日はお見えになっていないようですが……先ほどのお嬢様の試合、ミレーユ様はご覧になってましたよ」
「! ミレーユが学院に来てたのですか?」
「はい。ただ人目を避けているご様子だったのと……ミレーユ様にしては珍しく、護衛をお連れでした」
「……」
ミレーユはアゼリアと違って恨みを買うことも少ないからか、学院内では護衛を連れていないことがほとんどだった。
……そのはずが、このタイミングで護衛を連れてるということは……シリルへの言及による他家からの嫌がらせをヴァロワール公爵が心配したのかもしれない。
魔術部門にエントリーしているミレーユの予選は私の初戦の2時間後の予定だ。
きっともうそろそろ控え室に移動するはず。
……どうしよう、私の気持ちとしてはすぐにでも声をかけに行きたい。
けどこの前の別れ際の感じからして、ミレーユは私にかなりの罪悪感を感じてそうだった。
向こうは私に会いたくないかもしれない。
声をかけるとしたら初戦が終わってからのほうがいいのかな。
いや、むしろ遺恨があるまま試合に臨むほうがパフォーマンスに影響するんじゃ……。
…………。
……………………よし!
「クロ、ミレーユを激励しに行きましょう」
悶々と悩んでたって答えは出ないし、どうせどうなるかわからないならせめて後悔がないようやれることはやり切りたい。
そもそも私だったらたった一人の戦いに臨むとき、知り合いに応援に来てもらったら絶対嬉しいし心強い!
それにミレーユはきっと……建前や気遣い以上に、腹を割って本音で話すべき相手だから。
「はい。お嬢様からのお声掛けがあれば、ミレーユ様もきっとお喜びになるでしょう」
私は頷くと、すぐに魔術部門の予選会場である魔術闘技場を目指した。
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