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クロヴィスの前を歩く私は校舎の中央階段ではなくあえて人の少ない非常階段を選んで教室に向かった。
そしてその途中、2階の階段の踊り場で足を止めると、大人しく着いてきてくれていた彼をくるりと振り返って向き合う。
少しだけ驚いたような顔をしているクロヴィスが何か言う前に私は彼を宥めるように両手を前へ出した。
「あ、あのねクロヴィス。どうか落ち着いて聞いてください」
「はい」
「ええと、その、大丈夫です、あなたの言いたいことはわかっています」
「!」
「……あなたは優しいし、わたくしを責めることは絶対にしませんから……きっと『助けてくださりありがとうございます、ギルベルト様の挑発に乗りそうになってしまい申し訳ありませんでした』と言うのでしょう」
「……っ」
どうやら私は彼の図星を突くことができたらしい。
目を見開いて何も言えずにいるクロヴィスにうんうんと頷いて見せる。
「当たってましたか? もしそうであれば、その言葉は不要です」
「…………」
「わたくしはあなたをギルベルトとの無意味な決闘の場に立たせるつもりはありません。あなたの命はそんなに安くありませんから」
「お嬢様……」
薄暗い非常階段で、クロヴィスのアップルグリーンの瞳がわずかに揺れる。
「それに『公開試験会』で彼に負けるつもりがないのも事実です。わたくしに勝てないような男が、わたくしを守るクロに挑もうなんて面白すぎる冗談ですからね。ですからあの場はあれでよかったのです。あなたが気にすることは何もありません」
何かを言いたそうにしていたクロヴィスの口元は、やがて穏やかな笑みを描いた。
「……ありがとうございます、アゼリアお嬢様。本当なら俺はギルベルト様の言葉を無視できてなきゃいけなかったはずなのに……あなたにこの身を大切に思っていただいたことが、どうしようもなく嬉しいです」
「い、いえ、その……当たり前のことですよ。クロの代わりなんてどこにもいないんですから」
「……!」
いやまあ、確かに結果としては護衛騎士が護衛対象に庇われるみたいな謎の図になっちゃってるわけだけど。
クロヴィスがこんなにもキラキラした顔で嬉しそうなら……いいや。
やるしかない、もう後には引けない。
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