勝ち越し
騎士団の訓練場に顔を出すのが遅くなった私を心配したクロヴィスが声をかけてくれたので、ルチアナの様子を見に行った際のことを簡単に説明する。
それを聞いたクロヴィスもさすがにルチアナに同情的な様子だった。
「わたくしの命がルチアナのおかげで助かったことも事実ですし、責任を感じすぎないでほしいのですが……難しいかもしれません」
「相変わらずお優しいですね、アゼリアお嬢様は」
「セイリス……」
私が来るまで他の騎士団員の訓練相手をしていたセイリスがやって来て、相変わらず穏やかな笑みを浮かべながらも口ではズバッと一刀両断する。
「ルチアナ様の行動こそ当たり前のもので、ローゼンベルグ家の犯した罪はそれだけの罰を与えられるに値するものだったというだけの話でしょう」
「そう簡単に割り切ってしまっていいものなんでしょうか……」
「いいも何も、渦中にいらっしゃったお嬢様が割り切らずにどうするのですか? あなたはお命を狙われたのですから、むしろもっとお怒りになったっていいと思いますよ。僕だったら自分を殺そうとした全員と決闘する機会を申し出て、この手で完膚なきまでに叩き潰さないと気が済まないかもしれません」
「そ、それは…………そもそもセイリスを襲撃しようなんていう命知らずはいないでしょう……!」
「そうなんですよね……いつでも返り討ちにしてやるつもりで楽しみに待っているんですが、残念です」
どう考えてもにこやかに言うような内容じゃない。
とはいえ、セイリスの言葉も少しだけ私の気持ちが救われたのは事実だった。
「さて。お嬢様は明日からの学院生活でついに『公開試験会』の予選が始まるんでしたね」
「はい。組み合わせ次第ではありますが、早ければ明後日には初戦があるはずです」
「有観客となる決勝トーナメントは僕もミモナお嬢様と一緒に観に行く予定なので、頑張って勝ち進んでください。アゼリアお嬢様が勝ち進んで下さらないと、僕たちは目当てがクロヴィスの試合しかなくなってしまいますから」
「…………」
と、遠回しにクロヴィスは勝ち残れるけど私はわからないって言われてない……!?
普段訓練に付き合ってもらってる恩もあるし、まだまだセイリスの方が剣術の腕は上だから黙っててあげる……けど、私の中のアゼリアが黙ってるかな!?
「逆に聞きますが……セイリスはわたくしが決勝トーナメントまで進めないと思っているのですか?」
言われっぱなしにならなかった私に、セイリスは楽しそうに笑った。
「まさか! むしろ今のアゼリアお嬢様の実力であれば予選突破しない方が難しいと思いますよ」
「(ほんっとに変なプレッシャーのかけ方するよなぁ……!)」
「僕の膝を地に着けさせたんですから、涼しい顔で優勝くらいしていただかないと」
「涼しい顔かどうかはともかく、わたくしはいつだって負けるつもりはありません。『公開試験会』にも、あなたとの手合わせにも」
ヴァステリアから譲り受けたソルヴェリオンを呼び出して構えながら自分に言い聞かせる。
私は勝つため……生きるために強くなってるんだ。
敗者への敬意は払っても、同情も、剣を振るったことへの後悔も必要ない!
私が、私自身の努力を認めて、褒めてあげるんだ!
この日私は初めて、セイリスとの手合わせに勝ち越した。
普段エブリスタで書いている同名小説をこちらでも順次アップしています。
★毎日22時に続話追加




