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実力測定

挿絵(By みてみん)

角の生えた美女が楽しそうに言うなり、宙に黒い穴が開く。

そこから亜空間へ侵入してきたのは鷲の頭と大きな翼、獅子の体を持つどう見ても友好的とは思えない獣だった。


アゼリアの記憶を探しても直接見たことはない、前世の私が漫画の中だけで認識していた生物。



「こいつは儂(ワシ)の賢くて頼れる使い魔、グリフォンのアーノルドだ! かわいいだろう?」



いや、コレ……かわいいか!?

いや、いやいや見た目で判断するのは良くない、もしかしたら友好的で人懐こいのかもしれないし。

私はアーノルドへ一歩近づく。



「は、初めまして、アーノルド……わたくしはアゼリア。どうぞ仲良くしてくださ、」


「グオォォ!!」



鼓膜を破る勢いの咆哮に血走った目…………か、かわいいか~!?

どう考えても私たちエサだと思われてるよね!?

私の後ろに立つクロヴィスの顔にも「かわいいとは……?」と書いてある。



「アーノルドは知能が高く魔術も物理攻撃も得意な上、真っ二つにしても再生する超回復力を持つからな、戦闘訓練の相手にはちょうどいい。まずはこいつを戦闘不能にしてみろ」


「グォウ!!」



鋭い爪の生えた前足が私の目の前に叩きつけられた。

あ、これ……ヤバいのでは……?



「アーノルド、ち、ちょっと待ってください」



アーノルドの攻撃を避けながらなんとか宥(なだ)めようとするものの、コミュニケーションを取るのは難しそうだ。



「お嬢様! 話が通じる相手じゃありません!」



クロヴィスは容赦なく剣を振ったけど、真っ二つになったアーノルドの顔面はミチミチと音を立てながらすぐに元通りになってしまう。

同時に、私の炎魔術で全身を燃やしてもその火傷はあっという間に修復されてしまった。



「……っ、そのようですね」


「どうしますか」


「まずは落ち着いて、このグリフォンに有効な攻撃手段を探りましょう」


「わかりました」



クロヴィスの剣による物理攻撃、翼、背中、首、胴、尾……再生速度に変化なし、しいていえば頭部の再生にはほんの少し時間がかかる。

私の魔術攻撃、炎、水、氷、雷、風による"大地の力"には耐性が高く、再生も早い。ただし、受けた魔術の種類によって再生の仕方が異なる。


アゼリアの優れた脳は目の前で起きた出来事を瞬時に記録することに対しても大きな力を発揮した。

まるで前世の私が仕事で使っていた表計算ソフトが頭の中にあるみたいだ。



「(アーノルド自体の動きは結構シンプルで、前足による物理攻撃、頭からの突進、翼から起こす風魔術と口から吐き出す炎魔術……)」



動きが単調だから攻撃を避けること自体は難しくないものの、持久戦で体力勝負になると動きが鈍るのはこちらになりそうだ。



「……」



たとえ手足や翼の動きを封じても自分で捩じ切って脱出し、再生してしまう。

おそらく痛みへの恐怖がないか、その感覚自体がないのかも。



「固ってぇ……剣がもうもたないな……」



呟きながらクロヴィスがアーノルドの前足の攻撃を弾いて、そのまま眉間に剣を突き立てて縦に引き裂く。

大きな咆哮とともに再生していくその様子を見ながら私は一つの可能性に気がついた。



「……クロ、ひとつ試してみたいことがあるのですが、協力してくれますか?」



こんな時でも、私に返事をするクロヴィスは笑顔だった。



「もちろん、俺はいつでもあなたのお力になります」



私たちが戦う様子を黙って見ていたヴァステリアが月のような黄金の瞳を見開いて楽しそうな声を上げた。



「おっ! 何か思いついたみたいだな」



クロヴィスがアーノルドの注意を引いている一瞬の間に作った大きな水の玉を、私はその胴体へとぶつける。

多くの動物と同じで、アーノルドもブルブルと体を震わせて体の水を弾き飛ばそうとした。


合図を口にするまでもなく、私の視線でそれを理解したクロヴィスはアーノルドの頭上へ跳躍し、その頭蓋へ剣を突き立てると同時にそこへ雷魔術を落とした。



「グ、ギャアァァ!」



水を浴びていたアーノルドの全身に一気に電流が回る。

感電して痙攣するアーノルドの背後にいた私は、その後ろ足から頭にかけて氷魔術をかけた。


剣をアーノルドの頭部に残したまま飛び降りたクロヴィスが目を凝らす。



「…………お嬢様、まだ息が」


「大丈夫です、あと少し……!」



ビキビキッ!


感電しながら血液まで凍ったアーノルドは頭部と凍傷の再生が追いつかず、ついに凍りついて動かなくなった。



「あっはっは! あえて剣を頭部に残すことで、アーノルドの身体再生を永続的に引き出す……加えて異なる再生方法を同時に使わせることで、その動きを封じる……」



パチパチと手を叩きながらながらヴァステリアの笑い声が響く。



「まずはよくやった、と褒めてやらねばな! よくぞこのアーノルド相手に3時間無傷で戦い抜いた」



3時間!?

そんなに経ってたの……?

ホッとしたと同時にじわりと滲む首筋の汗を袖で拭った。



「その上でちゃんとフィードバックをしてやろう」



ヴァステリアはアーノルドの頭からクロヴィスの剣を引き抜くと、その体を労ってやりながら亜空間の外へ出してやった。

普段エブリスタで書いている同名小説をこちらでも順次アップしています。

★毎日22時に続話追加

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