高度戦闘魔術の授業(4)
「なんであんたらまでいるわけ? さっさと自習しに戻れよ、別にアゼリアはあんたらになんか会いたくねーし」
「作戦の立案者はわたくしだったのだから、アゼリアに何かあった場合はわたくしの責任になるでしょう。言われなくても確認したら戻るわよ」
「わ、私はアゼリア様が心配で……」
「いやしれっと居るけどあんたは誰なのマジで」
「先週から戦闘魔術の授業に参加されているリノンさんでしょ」
「はぁ? いたっけ? 知らん」
「10人程度の仲間の顔と名前も覚えられないなんて……哀れな知能レベルね」
「私の世界にはアゼリアしかいらないからさ~、その他モブには興味ないんだよね」
着替え終えてから教室の近くまで戻ってくると、静かな廊下で言い争う声がだいぶ離れたところまで聞こえていた。
「ア、アゼリア様!」
戻ってきた私に一番最初に気がついたのはリノンで、いがみ合うルチアナとミレーユをそのままにすぐに駆け寄ってきてくれた。
こういうところが圧倒的"メインヒロイン"なんだよなぁ……!
くぅっ……勝てねえ……!
「ご無事でよかったです……! お、お怪我などはありませんか?」
「リノンさんにもご心配をおかけし申し訳ありませんでした。わたくしにもレオン様にも、怪我はありませんよ」
「よかった……。私、さっきアゼリア様に助けていただいたお礼を言いたくて、」
「アゼリア!」
ぎゅむっと音がしそうな勢いでリノンを押し退けると、泣きそうな顔のルチアナが私のことを両手で抱き締めて体中を撫で回した。
気のせいかもしれないけどどうもその撫で方に下心を感じる。
「あああ、私のアゼリア~! 体はなんともない? あの根暗な講師に変なことされなかった?」
「さ、されてません」
「殿下にいじめられたり」
「レオン様はそんなことしませんよ……」
「よかった、もう離さないから……!」
……それは困る。
ルチアナの肩越しに目が合ったミレーユは眉間に深いシワを寄せていた。
「あの講師が戦術訓練を中止するなんて異常事態よ。アゼリア、あなた本当は体に何かあったのではなくて? 傷口が開いたとか、魔力がおかしくなったとか……」
「いえ、わたくしは元気ですよ。魔力も……問題はありません。わたくしのことを気にかけてくれてありがとう、ミレーユ」
「勘違いしないで。わたくしはあくまで自分の責任を果たしているだけであって、別にあなたのことを気にかけているわけではないわ」
なんていうか……少しミレーユのことがわかってきてしまった。
態度がトゲトゲしいと思ってたけど、それってきっとアゼリアが彼女にトゲトゲしかったからつい反発しちゃってただけで……ミレーユ本人は基本的に面倒見が良くて優しいんだろうな。
ルチアナが言ってた"ツンデレ"も、実は結構的を射てるのかも。
ミレーユの隣には、両手を握り合わせてソワソワと私の様子を伺っているリノンがいた。
声をかけるタイミングを一生懸命見計らっているみたいだ。
愛してる、離さないを繰り返し呟くルチアナをなだめてその腕からなんとか抜け出すと、私はリノンに向かい合った。
「リノンさん、ごめんなさい。何か話そうとしてくれていたのに……」
「い、いえ! 私のは急ぎの用ではありませんから……。その、先ほどは赤チームの方の炎魔術から私のことを助けてくださり本当にありがとうございました。どうしてもアゼリア様に直接お礼をお伝えしてくて」
私には助けた意図はなかっただけに、いい子すぎて良心が痛む。
リノンに惹かれた相手がたまたまアゼリアの婚約者だったからって、この子の存在をなんとかしなきゃと思ってしまった自分が情けない。
私が男だったら絶対好きになってる自信がある。
「お礼だなんて……わたくしたちはチームだったのですから、協力し合うのは当たり前ですよ」
そういうことにしておこう!
この愛らしい子の期待を裏切ったり悲しい顔をさせるのは本意じゃない。
「安心したらお腹空いちゃった。ね、ちょい早いけど食堂行こ! 授業中だから今ならめっちゃ空いてると思う」
「ええと、そのことなのですが、実は……」
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