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セイリス vs. クロヴィス(1)

挿絵(By みてみん)


レオンによる直々の激励(?)を受けたことで復学までいよいよあとがなくなった私は逆にスッキリした気持ちになり、数日ぶりにぐっすり眠ることができた。

調子がいいし、今日の剣術訓練はセイリスに一撃くらい届くんじゃ……!?



「………………参りました……」



……なんて甘いことはなく。

今日も今日とて参加させてもらっている騎士団の午前中の訓練で、私はセイリスに地面へ転がされていた。

昨日のセイリスいわく、私に一番足りないのは技術や経験や筋力ではなく、『お綺麗な教科書剣術を捨てる覚悟』だという。



「アゼリアお嬢様は目がいいようですね。避けるだけ、逃げるだけに集中していれば、僕の攻撃を(かわ)し続けることも可能でしょう。ただ手合わせにおいて、反撃しなければ、隙を見つけて切り返さなければという雑念があなたの動きや判断を邪魔しているように見えます」



痛む左腕に治癒魔術をかけながら、セイリスに差し出された手を握って立ち上がる。



「いやぁ、頭が良すぎて困ることもあるんですね! 僕は今、その典型的な例を目の当たりにしてとても興味深いです」


「……わたくしのことをバカにしてますよね?」


「いえ、お嬢様の気のせいでしょう。本来剣術とはゴチャゴチャ考えたりしない、とてもシンプルなものです。見てください、騎士団の団員たちを。団長から団員に至るまで、思慮深い顔をしている人間がいるように見えますか?」



いやさすがに失礼すぎるだろ。

ほんとそういうとこだぞ。



「そうですねぇ……お嬢様は賢く思慮深く、おまけに目がいいですから、ものは試しでインプットを増やしてみましょうか」


「……?」



セイリスは小さく首を傾げてにこりと微笑んだ。



「今からクロヴィスと"本気の手合わせ"をしてくるのでよく見ていてください。僕たちの手合わせで、あなたに何か新しい学びがあることを願っています。…………あ」



クロヴィスのいるほうへと足を向けたセイリスはすぐに立ち止まって私を振り返った。



「どちらかが大怪我をする可能性があるので、そのときは治療をお願いしますね。そこもお嬢様の対応を信じています」


「え…………」



そ、そんなまずいことになるかもしれないの……?

私が確認するより早く、セイリスはちょうど他の団員との手合わせを終えたクロヴィスに声をかけて事情を話したようだった。

クロヴィスが一瞬こちらを見る。



「おお! 当代のフェリオール騎士団が誇る若き2人のエースたちの手合わせか! ずいぶん久々だなぁ!」



私の隣に団長のヘルムートがやってきて楽しそうにそう言った。



「フェリオール騎士団がより強者と戦って強くなる方針なのであれば、あの2人は当然手合わせの機会が多いのではないのですか?」



護衛騎士を任されていることからしても、おそらくあの2人以上の強さを持つ団員はそうそういないんだろうし。



「おっ! お嬢様は俺が話した騎士団の方針を覚えててくれたんだな。そりゃそうなんだが、あいつらはなんていうか……結構実力が拮抗してる上にお互い相当な負けず嫌いなもんで、いつもなかなか勝負がつかねぇんだ。だから普段は他の騎士たちの練習相手になってもらって、肝心の本人たちの訓練はジェトリウスが相手を務めてるのさ」



クラリエも、クロヴィスの師はジェトリウスだって言ってた。

"剣聖"相手に剣術の訓練をしてるって、そりゃ破格で強いわけだ…………。



「セイリスとクロの巻き添いを食らいたくねぇヤツは場所を空けろ! 危ねぇぞ!」



ヘルムートの言葉を聞いてわらわらと団員たちが訓練場の端へと撤退していく。

新人の団員たちの中には2人の手合わせを見るのが初めての者もいるようで、騎士団最強といわれている2人の実力のぶつかり合いに好奇心が止まらないようだ。



「怪我をしてもお嬢様が治療してくださるそうなので、全力で僕を倒しにきてください」


「わかった」


「ああ、それと……」


「…………、っ!?」



手合わせが始まる直前に、セイリスがクロヴィスへ何かを耳打ちした。

その瞬間クロヴィスは一度驚いてから、すぐにセイリスを睨みつける。

セイリスは相変わらず穏やかに微笑んだままヘルムートへ大きく手を振る。



「ヘルムート団長、開始の合図をお願いします!」


「おう、任せとけ!」



2人の騎士たちは10メートルほど……かなりの距離をとってお互い剣を構えた。



「(……同じジェトリウス相手に訓練をしてるとはいっても、そもそもの構えは違うんだ)」



クロヴィスは片足を引き剣先を背後に向けて低く構えているのに対し、セイリスは私と手合わせをしてくれるときと変わらず、剣先を上げて正面に構えていた。



「騎士団のルールに則り、勝負はどちらかが負けを認めるまで! それでは……始めッ!」



ヘルムートが挙げていた手を振り下ろし、訓練場に響くほど大きく手合わせの開始を告げた。


普段エブリスタで書いている同名小説をこちらでも順次アップしています。

★毎日22時に続話追加

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