命令じゃなくて、相談
ヴァステリアの客室へ向かう途中、離れへと繋がる渡り廊下に差し掛かったところで、私たちは護衛を連れたレオンとばったり遭遇した。
ジェトリウスとの話はもういいのかな……?
私の姿を確認したレオンが案内をしていたフェリオール家の執事長と護衛たちに席を外すよう伝えると、責任感の強い騎士たちはそれはできない、と必死な顔をした。
それはそう……第一王子からの命令と、自分たちの絶対的な使命が反してるわけだから。
さすがに護衛騎士が少し気の毒になる。
けどレオンは呆れるでもなく、苛立つでもなく、いつも通り冷酷で淡々と、静かな瞳で護衛騎士たちを見据えた。
「くだらないことで俺に時間を取らせるな。もう一度言う。ここから先、お前たちは席を外せ」
……王族にここまではっきり言われて逆らえる人間はさすがにいない。
クロヴィスへ目配せをしてからレオンへ頭を下げて立ち去る執事長に、結局5人の護衛騎士たちも苦々しい様子で着いていったのだった。
お、王族の護衛騎士っていうのも大変だよなぁ……!
そもそも本人は「本当に護衛いる?」ってくらい強いわけだし、正直なところ形だけみたいなものでしょ?
クロヴィスさえ着いてれば結構好き勝手させてもらえるアゼリアと違って、レオンは結構窮屈な思いとかしてるのかな……。
当のレオン本人は一切の感情を悟らせない口調で、ヴァステリアの部屋に向かう歩みを止めないまま私に言う。
「お前が準決勝でダリアス・グレイヴナーから受けた呪いの解析結果が出た」
「!」
「事前に受けた相談の通り……誕生日に襲撃を受けた際傷口に付着していたものと、ヴァロワール邸でシリルの手下が使っていたナイフに付着していたものとは、呪いの型が一致した。グレイヴナー家への尋問は王宮の指揮監視の元、すでにフォース・ローゼンベルグが着手している。罪状が出揃い次第、グレイヴナー家と侯爵、ダリアスには速やかに然るべき罰を受けさせる。先ほどジェトリウスにも詳細を伝えた」
「……ありがとうございます」
急に押しかけて勝手で無茶なお願いをしたのに、結局レオンはすぐに動いて全部叶えてくれた。
相変わらず会話は続かないけど……勇気を出して、相談してよかった。
ヴァステリアの客室の前で足を止めたレオンは、そこで私を振り返る。
「父上にも俺にも、見えていないことや見落としはある。すべての頼みを叶えることは約束できないが、俺はお前の言葉には可能な限り耳を傾けるつもりでいる」
「……!」
それは、つまり……言うだけならなんでも相談していいよ、ってこと?
アゼリアが婚約者っていう立場だからだとしても、レオン本人からその言葉が聞けたことは大きい。
「……光栄です。その……わたくしもレオン様のお力になりたく思っておりますので……何なりとご相談ください」
「……」
命令、じゃなくて相談。
不敬だって咎められるかとも思ったけど、やっぱりレオンは何も言わなかった。
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