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過保護な公爵様に溺愛されましたが、対等になりたいので城を出ます!〜医療チートと神速の抜刀術で無双する借金冒険者生活〜  作者: 月神世一


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EP 7

ポポロ村防衛戦! 畑を狙う魔獣の大群と、立ちはだかる二人の騎士

翌日の夜。

空には、雲ひとつない夜空に、真ん丸な『満月』が煌々と輝いていた。

「う〜ん、お腹いっぱい! やっぱり労働の後のご飯は最高ね!」

ポポロ村の広場に張られたテントの前で、私は大きく伸びをした。

私たちが地球の現代重機(耕運機とチェーンソー)と、リーザちゃんの『スパチャアイドルバフ』を駆使して開拓を進めた結果、村の基礎的なインフラは驚異的なスピードで整いつつあった。

居住区の区画整理は終わり、硬かった土はふかふかの黒土になり、そこにキャルル村長が蒔いた『月見大根』や『ネタキャベツ』、そして私がこっそり栽培スペースを作った『肉椎茸』などの作物が、魔力を吸ってすくすくと育っている。

「ふむ。昨日のカツサンドも美味かったが、今日の『豚汁』というスープも絶品だな! 疲れた身体に、味噌の塩分と豚の脂が染み渡るようだ!」

ルーク(元・公爵令息)が、どんぶり鉢を抱えて豪快に豚汁をかき込んでいる。

その隣では、リアスが「……悪くない」とボソリと呟きながら、上品に焼き魚定食(ランダムボックスで召喚した)をつついていた。

「あむっ、はむっ! おかわりですの! 豚汁の汁をご飯にかけて、ねこまんまにして食べますの!」

芋ジャージ姿のリーザちゃんも、完全にアイドルとしてのプライド(施しは受けない)をぶん投げ、私のお裾分けを涙目になりながら爆食いしている。

「あはは、いっぱい食べてねリーザちゃん。……あれ? キャルル村長は?」

私が周囲を見渡すと、焚き火のそばにキャルル村長の姿がなかった。

「村長なら、さっき『お月様が綺麗ですねぇ……身体が熱くて、ウズウズしてきちゃいました♡ ちょっと準備運動してきますね』とか言って、森の方へ行ったぞ。相変わらず気味の悪い兎だ」

リアスが豚汁の具の大根を箸で摘みながら答える。

「準備運動……? まあ、村長も開拓の指揮で疲れてるんだろうし、気分転換かな」

私がそう納得しようとした、まさにその時だった。

ズズズズズズズッ……!!

突然、足元の地面が低く唸りを上げ、お茶の入ったコップの水面が激しく波打った。

ただの地震ではない。一定のリズムを刻みながら、凄まじい質量の『何か』が、村に向かって大挙して押し寄せてくる地響きだ。

「……おい。飯の時間はお預けらしいぞ」

リアスが箸を置き、琥珀色の瞳を鋭く細めて東の山の方角を睨みつけた。

彼の視線の先、山の稜線が月明かりに照らされた瞬間。

『ブギィィィィィィッ!!』

『ギャハハハハッ! 肉だ、魔力だ! 食い尽くせェェッ!』

耳をつんざくような不快な咆哮と共に、山の木々をなぎ倒しながら、おぞましい魔獣の大群が姿を現したのだ。

体長4メートルはある巨大な『オークキング』を筆頭に、突進力に特化した『ジャイアント・ボア(巨大猪)』、そして小賢しい『ゴブリン』の群れ。その数はゆうに数百を下らない。

「なっ……なんだあの数は! スタンピード(大暴走)か!?」

ルークがどんぶりを置き、安物の鉄剣を引き抜いて立ち上がった。

「スタンピードじゃない、あれは『明確な目的』を持って村に向かってきている。……狙いは、俺たちが作った畑だ」

リアスが腰の魔刃鞭をチャキリと鳴らし、冷静に状況を分析した。

「畑!? どうして魔獣が野菜なんかを……」

「魔獣にとって、良質な魔力を含んだ作物は極上のご馳走なんだ。キャルルの種と、お前が整地した土、そしてあの人魚のバフのせいで、畑から異常な濃度の魔力がダダ漏れになってるんだろう。その匂いに釣られて、山から降りてきやがったんだ」

リアスの言葉に、私の頭から一瞬で血の気が引いた。

(畑……! 私がガソリン臭くなりながら耕運機で耕し、石を取り除き、苦労して作り上げた10万ポイント(地域貢献)の結晶が!!)

もしあの大群に畑を踏み荒らされれば、せっかく芽吹いた作物は全滅。

村の復興は振り出しに戻り、違約金一億枚(10兆円)という絶望の借金地獄から抜け出す希望が完全に絶たれてしまう!

「ふ、ふざけないでよ……! あそこには、私のポイントが……明日の希望が詰まってるのに!」

私が青ざめた顔で絶叫すると、私の前に、頼もしい二つの広い背中がスッと立ち塞がった。

「安心しろ、美月殿。俺が愛した女の希望の地を、汚らわしい害獣どもに踏み荒らさせはしない」

ルークが安物の剣を上段に構え、プラチナブロンドの髪を夜風になびかせる。

彼の全身から、青白い『闘気』が爆発的に吹き上がり、周囲の気温が一気に氷点下へと急降下した。

「チッ。せっかく整地した場所を荒らされてたまるか。もし畑が全滅して違約金を払う羽目になったら、俺の人生が終わるからな」

リアスもまた、深くため息をつきながら右手を前に突き出した。

彼の周囲で、圧倒的な密度の闇魔法が黒い稲妻となってバチバチと弾け飛ぶ。

過保護なロマンチスト公爵令息と、冷徹な現実主義のネフィリム。

普段はいがみ合ってばかりの二人だが、この瞬間ばかりは、村(と己の借金回避)を守るための完璧な防衛壁として、頼もしい騎士へと変貌していた。

「いくぞ、魔族の野郎。遅れをとるなよ!」

「誰に口を利いている、阿呆。足手まといになったら後ろから魔法で撃ち抜くぞ」

ルークが大地を蹴り、リアスが鞭を振るう。

ポポロ村の防衛戦が、満月の夜に幕を開けた。

『ブヒィィィィッ!』

先陣を切って村の入り口に突っ込んできたのは、数十頭のジャイアント・ボアの群れだった。ダンプカーほどの巨体が、猛スピードで畑を目指して突進してくる。

「剣よ! 大地を凍らせろ!」

ルークが剣を大地に突き刺した瞬間、爆発的な冷気が円放射状に広がり、最前列で突進してきていたジャイアント・ボアの足元を一瞬にして絶対零度の氷原へと変えた。

ズザザザザッ! と足を滑らせ、激しく横転する巨大猪たち。

そこへ、ルークが空高く跳躍し、剣に闘気と雷魔法を融合させた。

「雷鳴剣ッ!!」

ズゴォォォォォォンッ!!

稲妻を纏った強烈な斬撃が氷原に叩きつけられ、雷の衝撃波が凍りついたボアたちを粉々に打ち砕く。

「フン、派手なだけで隙だらけだ」

ルークが斬りこんだことで生じた敵陣の死角から、ゴブリンの別働隊が弓矢を構えてルークを狙う。

しかし、その矢が放たれるよりも早く、リアスの影から漆黒の獣たちが飛び出した。

「闇よ、引き裂け。『シャドウ・ウルフ』」

数頭の影狼がゴブリンの群れに飛びかかり、一瞬にしてその喉笛を噛み千切る。

さらにリアスは、大きく振りかぶった魔刃鞭に極大の闇魔法を収束させた。

「吹き飛べ、『ダークネス・フレア』!」

鞭の先端から放たれた黒い炎の爆発が、後方から迫っていたオークの集団を丸ごと焦土へと変えた。

「「…………すっごい」」

私とリーザちゃんは、焚き火のそばでただただ口を開けて見とれていた。

たった二人。それだけで、数百の魔獣の群れを完全に村の入り口で押し留め、圧倒的な殲滅力で数を減らしていく。

さすがはルナミス帝国でもトップクラスの実力を持つ二人だ。

「よしよし! このままいけば、私のポイントは無事に守り切れそう!」

私が胸を撫で下ろした、その時だった。

『ギョェェェェッ!』

「なっ!?」

イケメン二人が派手に暴れ回っている最前線のさらに横。

森の暗がりを利用して大きく迂回してきた、数頭の『俊敏型ゴブリンライダー(狼に跨ったゴブリン)』と、三頭の『ジャイアント・ボア』が、ルークたちの防衛線を完全にすり抜けてしまったのだ。

「おい、美月! 横から数匹抜けたぞ!」

「くっ、すまない! こちらはオークキングを抑えるのに手一杯だ!」

前線で足止めを食らっている二人には、もう村の奥まで入り込まれた魔獣を止める余裕がない。

魔獣たちの濁った瞳の先にあるのは、私たちでもリーザちゃんでもない。

彼らの視線は、村の広場の中央にある、ふかふかに耕されたばかりの『畑』へと真っ直ぐに向けられていた。

「あっ……!」

ジャイアント・ボアの蹄が、私の作ったうねを踏み荒らそうと高く上がる。

ゴブリンライダーが、キャルル村長が蒔いた月見大根の芽を引っこ抜こうと手を伸ばす。

その瞬間。

私の頭の中で、何か太い糸が「ブチンッ!」と音を立てて千切れた。

「……私の、10万ポイント(畑)に……」

私はゆっくりと立ち上がり、腰の左側に差した白木の鞘に手をかけた。

「触るんじゃ、ねええええええええっ!!!」

日本の六法全書・鳥獣保護管理法。

生態系に著しい被害を及ぼす、あるいは農林水産業に甚大な被害を与える野生鳥獣は、『有害鳥獣』として駆除することが法的に認められている。

ましてやここは異世界。相手は農作物を狙う完全なる『害獣』。

つまり、過剰防衛など気にする必要は一切ない――法律の完全適用外(フルパワーOK)である。

「リーザちゃん、ちょっとそこで耳塞いでて」

私は驚いて震えるリーザちゃんに優しく告げると、限界まで腰を沈めた。

右手が、愛刀『白雪』の柄を強く握りしめる。

レッドオーガの時と同じ。いや、私の血と汗と涙の結晶である畑を荒らそうとする奴らに対する、圧倒的な『殺意(防衛本能)』が乗っている分、今の方が遥かに研ぎ澄まされている。

月明かりの下。

私は、農作物を荒らす害獣どもを極上のミンチに変えるべく、純白の刃を鞘から解き放った。

読んでいただきありがとうございます。

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