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過保護な公爵様に溺愛されましたが、対等になりたいので城を出ます!〜医療チートと神速の抜刀術で無双する借金冒険者生活〜  作者: 月神世一


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10/12

EP 10

借金まみれの門出とやけ食い大根。冷徹ネフィリムとの凸凹バディ結成!?

「ぐすっ、ひっく……でも、この大根、涙の味がして美味しいですぅ……モグモグ」

「泣くか食うかどっちかにしろ。見てて気色悪いぞ」

屋台の魔導ランプの下。

私は両目から滝のように涙を流しながら、大将が「可哀想だからオマケしてやるよ」とサービスしてくれた追加の『月見大根』をやけ食いしていた。

財布(全財産2000円分)をスられ、あろうことか助けてもらった上に奢るはずだった相手に借金を背負うという、異世界デビュー初日にして最悪のフルコンボである。

「はむっ、ふえええん……リアスさん、ごめんなさい。私、絶対に働いて返しますから……ズズッ」

「汚えな、鼻水を啜りながら大根を食うな。飯がマズくなるだろうが」

リアスは心底嫌そうな顔をして、手元の熱い陽薬茶(お茶)をすすった。

その琥珀色の瞳は、私という存在を「完全に理解不能な宇宙人」を見るように細められている。

「大将! 私、お皿洗います! それで少しでもお代の足しに……!」

「いや、金はもうそっちの兄ちゃんから銀貨でたっぷり貰ったからいいって……」

「いいえ! 働かざる者食うべからずです! やらせてください!」

私は涙を拭い、屋台の裏手にある洗い場へと突撃した。

半分は罪悪感からだが、もう半分は私の脳内で輝く『善行システム』のためだ。

【善行獲得:皿洗い +1 P】

【善行獲得:皿洗い +1 P】

【善行獲得:皿洗い +1 P】

(ふふふ……借金はできちゃったけど、ポイントは裏切らない! この地道な努力が、明日の私を救うのよ!)

悲壮感を漂わせながらも、内心で「よっしゃポイントゲット!」とほくそ笑む私を、リアスはカウンターに肘をつきながら胡散臭そうに眺めていた。

「……お前、本当に何者なんだ?」

「えっ? お皿洗いが得意な、新人Eランク冒険者ですけど」

「とぼけるな。その腰の白鞘。刃に魔力は一切通っていないのに、俺の目にも止まらぬ神速の踏み込みを見せた。そしてその着ている『紅蓮の鎧』。どう見てもルナミス帝国の高位貴族か、それに連なる騎士団の特注品だ。……にもかかわらず、裏路地でゴロツキに財布の紐を切られるほどのド素人で、無一文」

リアスは目を鋭く光らせ、私の本質を射抜くように見つめた。

「凄腕の暗殺者か、それとも世間知らずの貴族の家出娘か。……まあ、どっちでもいい。俺に関わらないならな」

「家出娘っていうのは、ちょっと当たってるかもしれません」

私は洗い終わったお皿を拭きながら、小さく息を吐いた。

「私、安全なお城の中で、ずっと守られているだけの存在になりたくなかったんです。対等なパートナーになるために、自分の力で生きていけるようになりたくて」

「対等なパートナー? ハッ、愛人か何かの話か。反吐が出るな」

リアスは鼻で笑った。彼の言葉は辛辣だが、その裏には「力のない者が寄りかかること」への強い嫌悪感があるように感じられた。

混血ネフィリムとして、この過酷な世界で一人で生き抜いてきた彼なりの哲学なのだろう。

「愛人じゃありません! 恋人です! ……たぶん、将来的に!」

「どうでもいい。で? その『過剰防衛がどうの』とかいう戯言はなんだ。なぜあそこで刀を抜かなかった」

リアスの問いに、私は少し考えた。

異世界転移して、六法全書という謎のシステムに縛られているなんて言っても信じてもらえないだろう。

「……呪い、みたいなものです。私、神様に対して『絶対に無闇な殺生はしない、日本の……えっと、故郷の厳しい掟(法律)を守って人助けをする』って誓約を立てているんです。それを破ると、私の力が全て失われちゃうんですよ」

半分本当で、半分嘘。ポイントがマイナスになれば現代物資を呼び出すスキルが使えなくなるのだから、あながち間違ってはいない。

「……誓約ギアスか。なるほど、面倒な呪いを背負ったもんだな」

リアスはわずかに納得したように顎を撫でた。異世界特有の「制約と誓約」による力だと解釈してくれたらしい。

「まあいい。お前がどんな掟に縛られていようが、俺には関係ない。だが、俺に『借金』をしたという事実は消えないからな、美月」

リアスが立ち上がり、私を見下ろした。

その顔には、先ほど路地裏で見せた冷酷な笑みとは違う、悪戯を思いついた悪魔のような笑みが浮かんでいた。

「銀貨2枚。お前のような世間知らずがEランクのゴミ拾い依頼で稼ごうと思ったら、一ヶ月はかかるだろうな」

「うっ……それは……」

「だが、俺が直々に稼ぎ方を教えてやらないこともない。ちょうど明日、少し厄介な討伐依頼に行く予定でな。魔物の気を引く『デコイ』が欲しかったところだ。お前のその『絶対に急所を外す神速の打撃』とやらがあれば、良い時間稼ぎになりそうだ」

つまり、一緒にクエストに行って借金を労働で返せ、ということだ。

「や、やります! 囮でもなんでもやります! 魔物相手なら、法律(六法全書)の適用外の野生動物扱いだから、峰打ちじゃなくて思いっきり斬れますし!」

「……は? なんだその都合のいい掟は」

リアスは呆れ顔を見せたが、すぐに「まあいい」と手を振った。

「明日の朝六時、東門の前に来い。遅れたら利子をつけて銀貨3枚にするからな」

「ろ、六時!? は、はいっ、絶対に行きます!」

リアスはそれだけ言い残すと、ひらひらと手を振りながら夜の闇の中へと消えていった。

残された私は、屋台のおじさんに何度もお礼を言い、借りていたエプロンを返した。

「ふぅ……」

夜空を見上げる。

地球では見られない、二つの月が輝く満天の星空だ。

昨日の夜は、お城のふかふかのベッドで、ルークス様からもらった手厚い庇護に思い悩んでいたというのに。

たった一日で、私は無一文になり、冷徹なネフィリムの青年に借金を背負い、明日の早朝から魔物の囮としてこき使われることになってしまった。

でも、不思議と後悔はなかった。

足の裏から伝わる石畳の硬さも、夜風の冷たさも、全部私が「自分の足で歩いている」証拠だ。

「よしっ! 明日は魔物をいっぱい倒して、借金返済! ついでに人助けポイントも荒稼ぎしてやるんだから!」

私はバックパックを背負い直し、気合を入れるために両頬をパンッと叩いた。

安宿を探すお金すらない私は、ランダムボックスで出した寝袋シュラフを持って、安全に野宿できそうな場所を探して歩き出した。

神城美月、20歳。

波乱と借金とポイ活にまみれた私の冒険者生活サバイバルは、今、ここに本格的な幕を開けたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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