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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第980話:ドーラの聖火教徒は

 フイィィーンシュパパパッ。

 ウルピウス殿下を連れて聖火教本部礼拝堂にやって来た。

 ここはいつも清浄な雰囲気だなあ。

 礼拝堂を見ながらウ殿下が呟く。


「聖火教か……」

「ドーラでは最も信徒の多い宗教なんじゃないかな」

「何? 聖火教がドーラの国教なのか?」

「え? 違う違う。ドーラ人は国教なんてもんを決められて従うのは嫌い」


 これはあたしが嫌いなだけじゃなくて、誰も言うこと聞かないと思う。


「聖火教徒以外の人は、あんまり宗教のことなんか気にしてないの」

「ふうむ、何故だ?」

「やっぱ魔物が多いからじゃないかな。協力して生きていかなきゃいけないじゃん?」

「わかる」

「となると地域独自のルールに従ったりとか、土着の信仰が生まれたりとかするんじゃないかな。ドーラでは隣の村とさえも交流がないってことも稀じゃないから、全国規模の宗教が流行らないのかもしれない」


 各村の自治性が薄れて交流が活発になる今後は違うかもしれないな。

 でも当然実利を求めての交流だから、宗教はどーだろ?


「でも帝国ではあんまり聖火教のウケがよくないみたいだねえ」

「汎神教徒が多いからな。どこの世でも少数派は白い目で見られるものだ」

「そーなのかー」


 ドーラには全国規模の宗教が他にないから、争わないのかもな。

 聖火教徒はあんまり出しゃばったりしないし、聖水みたいな有用なものを売ってくれるし。


「ユーラシアは汎神教徒なのだろう?」

「いや、違うよ」

「む? では名前は?」


 『ユーラシア』とは汎神教の大地の女神の名前らしいのだ。


「あたしはどうして『ユーラシア』って名前なんだろ? 考えたことなかったよ」


 身内に汎神教関係の人いないしな?

 旅人だったと聞いてる、父ちゃんがつけたんじゃないかな。

 多分。


「ピッタリの名前だ」

「佇まいが女神っぽいからだな」


 アハハと笑い合う。

 ……山の集落からの移民達は殿下と会わせない方がいいか。

 皇帝家に対して割り切れない感情があるだろうし、あたしもウ殿下に飛空艇落としたことを話すのはまだ早い気がする。


「あたしの神々しさのことは置いといて、飛ぶ練習してみてくれる? ここなら邪魔なものがないから」

「うむ、了解だ」


 『遊歩』を起動するウ殿下。

 あれ、すげえ上手じゃん。

 動きにメリハリがある。

 降りてきた殿下が興奮気味に言う。


「これは大層面白い! 礼を言うぞ」

「操作が上手過ぎて見てる方はつまらん。お笑い精神を発揮して墜落してみるとかすればいいのに」

「ケガするだろうが!」

「大概のことは平気だぞ? ここにはハイプリーストいるし、殿下だってレベル上がって身体強くなってるしね。あたしだって『リフレッシュ』くらいなら使える」

「ユーラシアの言葉には愛が足りない」


 何かブツクサのたまってますけれども。


「あれ、精霊使いさん?」


 あ、修道女が出てきた。


「こんにちはー」

「こんにちは。そちらの方は?」

「カル帝国の第四位皇位継承権保持者ウルピウス皇子殿下だよ」

「ええっ! あ、いや、無作法で申し訳ありませんでした」

「いや、よいのだ。勝手に押しかけたのは予の方だからな」


 説明しとこう。


「殿下はドーラを見物したいってことだったから、あちこち回ってるんだ。殿下の事情とは別に、リモネスさんの件で話があるんだけど、ミスティさんいる?」

「はい、奥の間におられます。案内いたします」


 礼拝堂の中へ。


          ◇


「よくぞいらっしゃいました、殿下」


 にこやかにミスティさんが迎え入れてくれる。


「ドーラの聖火教大祭司ミスティさんだよ」

「予はウルピウスと申す。よろしく」


 握手。


「ミスティさん。殿下に媚売っとくと、帝国での聖火教徒の扱いが良くなるかもしれないよ」

「そうですね」


 和やかな笑い。


「ミスティさんは帝国本土出身なんだよ」

「何? そうであったか」

「ええ、父が『アトラスの冒険者』でありまして……」


 ミスティさんの身の上話。

 お父さんはハルトさんと言ったか。

 最後の帝国本土出身の『アトラスの冒険者』だったのかもな。


「ふむ、ミスティ殿も苦労されたのだな。立派だ」


 殿下は物言いがストレートだなあ。


「いえいえ、移民は皆それなりに苦労を経験するものなのです。今が幸せなのが一番です」

「帝国で虐められるから、ドーラに来る聖火教徒が多いのかな?」

「おそらくは。ドーラの汎神教徒は、レイノスの中町住人くらいだろうと思います」

「なるほど、やはりドーラに汎神教徒は少ない……」


 難しい顔をするウ殿下。

 いらん差別は優秀な人材が流出する危険がある、ということに気付いたんだろう。


「ユーラシアは聖火教徒なのか?」

「えっ? ユーラシアさんは汎神教徒だと思っていましたが」

「いや、それさっきも殿下に言われたんだけど違くて。あたしはコブタミート教の敬虔な信者だよ」


 ミスティさんの後ろに控えているワッフーが噴き出しそうになる。

 ワッフーはあたしがコブタミート教徒であること知ってたっけ。


「コブタ、ミート?」

「コブタ肉はすごくおいしいんだよ。殿下にも食べさせてあげるから改宗しなよ。食べ終わったら汎神教徒に戻りゃいいから」


 大笑い。

 ようやく冗談であることがわかっていただけたようだ。


「リモネス氏がドーラに視察にいらっしゃる件で話があるとか?」

「三日後にドーラの様子を見にね。あたしが連れてくる」

「三日後ですね。楽しみにしております」


 ミスティさんの意味ありげな表情。

 御想像の通りです。

 ウ殿下は能天気であらせられますので、リモネスさんの身が将来危ないかもなどということは御存じないのです。


「二人おまけがいるんだ」

「おまけ、ですか?」

「うん、ドルゴス宮廷魔道士長とヴォルフ近衛兵長だよ。この二人はそれぞれ違う理由でドーラを訪れたいんだけど」

「わかりました。もちろんこちらは全然構いませんので」


 再びミスティさんの意味ありげな表情。

 魔道士長と近衛兵長の二人は、ある程度リモネスさんの危うさを知っててもらって構わない人だよ。


「あたしの方からの連絡はお終いでーす。あとでレイノス港へ、今月の移民の様子見に行くんだ。もしあっちで聖火教に関わるトラブルあったら知らせに来るからね」

「助かります。ありがとうございます」

「じゃねー」

「ミスティ殿、さらばだ」

「お気をつけて」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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