第979話:楽しんでいただけましたか?
お、観光対象として適当な魔物が出ました。
「あれがケルベロスだよ」
「ほう、首が三つもあると恐ろしげだな」
「だよねえ。一ターンに三回攻撃してくるから、レベルの低い内はそれなりに……あっ、背中光ってる!」
「こら、それなりに何なのだ! 背中?」
いや、ウルピウス殿下は知らんだろうけど、背中の光ってるケルベロスは素材持ちなの!
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・改×二! よっしゃ勝った!
『ハヤブサ斬り』でも勝てたと思うけど、一応殿下の安全のために。
「解説続きでーす。それなりに強いことは強いの。もっとも魔境に生息する魔物の中では最弱クラスだけどね」
「背中が光ってるというのは? 確かにテカテカしているが」
「ケルベロスを見るのに重要なポイントが背中なんだ。光ってる個体からは『エナメル皮』って素材が取れるの。ちょっとお高め」
「ふうん、素材か。ケルベロスは食べられないのか?」
「殿下はなかなかやるね。肉食獣は総じて不味いんだよ。ケルベロスを食べなきゃいけないほど、ドーラ人は飢えてないんだ」
「ふむ、理解した」
いや、魔境で悠長に解体できるパーティーがいないってのが一番大きな原因だと思うけどね。
『エナメル皮』をぺりぺり剥がしてワイバーン帯へ。
「あれがドラゴンか?」
「ワイバーンだよ。亜竜の一種」
「ふうむ、結構な迫力ではないか」
「さっきのケルベロスに比べるとね。魔境は魔力濃度の高い中央部付近ほど強い魔物がいるんだ」
「ワイバーンはかなり強い方の魔物なのか?」
「いや、弱い方。最大ヒットポイントはさっきのケルベロスに毛が生えたくらいだな。けど素早いし攻撃はキツい。舐めちゃいけない魔物ではあるよ。まあでも向こうに攻撃ターン回んないから、特に心配はないかな」
レッツファイッ!
さっきと同じで勝利!
「あっ、卵だ! これすごくおいしいんだよ」
「母上も美味い美味いとかぶりついていた」
「最初にお土産に持ってったやつ、皇妃様一人でほとんど食べちゃったって聞いたよ。これ卵焼き二〇人分以上作れるのにな」
「昨日のは母上とリリーが半分ずつ食べてしまったのだ」
「リリーの好物でもあるんだよね。あれ? じゃあ殿下は食べてないんだ?」
「ああ」
「ワイバーンの卵の味を知らないなんて実に不幸だな。あとで食べようよ」
ギルドとイシュトバーンさん家、どっちがいいかな?
爪も回収してさらに北へ。
「ところで殿下も固有能力持ちみたいだけど?」
「予のは『ヒットポイント自動回復四%』だ」
「いーなー。冒険者は皆欲しがるやつだよ」
「ハハッ。まあ予の立場だと、あまり活躍するシーンがなさそうだが」
むしろ活躍しちゃ困る固有能力かもな。
でもおかげで命を拾うシーンもあるかもしれない。
「リリーもプリンスも固有能力持ちなんだよな。皇族の人は多いんだ?」
「市民と比率は変わらないはずだ。事実、父上も母上も違うしな」
「えっ? 皇帝陛下は会ったことないから知らんけど、皇妃様は何かの能力持ちだよ?」
「まことか?」
「うん。でも何の能力かまではあたしじゃわかんない」
「ふむ、調べてみることを進言しよう」
ひょっとすると、呪いで三日間苦しんだ経験から発現したのかもしれないな。
「グリフォンだ。もうドラゴン帯まで来たか」
「鳥の魔物か。大きいな。ガルーダにも似ている」
「あの子は仲良しなんだ」
「えっ?」
グリフォンの胸から腹の辺りに飛び込みもふー。
「よしよし、櫛入れてやろうねえ。周り警戒しててね」
「「「了解!」」」「了解だぬ!」「えっ?」
おお、いい感じ。
バッチリ羽毛が取れるわ。
グリフォンも気持ち良さそう。
警戒役はヴィルと目のいいダンテに任せて、三人で櫛入れるのがいいかもしれないな。
同じ櫛をもう二つ作ってもらおう。
「結構羽毛が抜けたなー」
「くおっ!」
「アハハ。なかなかだった? ちょっと待ってなさい。御飯を狩ってきてあげるからね」
ちょうどデカダンスだ。
一太刀。
「御飯だぞー!」
「くおっ!」
「よしよし、大喜びだねえ」
ウ殿下が言う。
「……色々不思議な現象が起こっている気がする」
「面白かった? ドーラは何にもないところだからさあ。どうしたら殿下に喜んでもらえるか、随分考えたんだよ」
「その羽毛はどうするのだ?」
「洗うとフカフカになるんだって。布団の材料として最高級品だって聞いたから、採取しようかと思ってたんだ。いずれ帝国に輸出したいなと思ってる」
「ふむう」
何か考え込んでますけど、もうちょっと楽しんでください。
「くお?」
「あ、アイスドラゴンだね。やっつけてくるから、あんたは御飯食べてなさい」
「くおっ!」
「話が通じてるのか?」
「ロック鳥とかガルーダもそうだけど、大きい鳥系の魔物は大体こっちの言ってることわかってくれるんだよ」
「ふむう」
何か考え込んでますけど、そんな時間ないんだって。
ドラゴン目の前ですよ?
「今の殿下のレベルなら攻撃食らっても耐えられるからガードしててね。一ターンで倒すよ」
「心得た!」
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! アトムの透明拘束! やるね、殿下がいるから攻撃力を下げにいったか。アイスドラゴンの爪攻撃! アトムが受ける。あたしの雑魚は往ね!
「はーい、終了でーす! リフレッシュ!」
「ドラゴンが一撃なのか……」
「あたしも初めてドラゴン倒した時は、かなり苦戦したよ? ノーマルドラゴンだからってバカにしてると痛い目に遭うかもしれない」
「いや、普通はバカにしないからな?」
レノアにはこの技見せられないな。
自分もやるとかノリノリで言いそう。
しかしクララの敏捷性がドラゴンより上になっちゃったから、回復スキルの『乙女の祈り』が使いづらくなってしまった。
『逃げ足サンダル』を外して敏捷性を落とした方がいいか?
まあいらんことしなくてもいいか。
「魔境ツアーはこれでお終いでーす。もう殿下もレベル三〇近いから、さっきの飛行のパワーカードを使えるよ。あ、でもここでは使わないでね。飛ぶ魔物にパクっと食べられちゃうかもしれない」
「わかった」
「最後のアトラクションでーす。クララ、高速『フライ』でベースキャンプまでお願い」
「はい、フライ!」
びゅーんとベースキャンプへ。
サービスだサービス。




