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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第973話:皇妃様呪殺未遂事件についてその後

 ウルピウス殿下がにこやかに声をかけてくる。


「精霊使いユーラシアよ。予の顔が見たくなったか?」

「ずうずうしくね? それもなくはないけど」

「ハハハ。ユーラシア、すまんがちょっと顔を貸してくれ。リモネス、ドルゴス、ヴォルフが来ておるのだ」


 『サトリ』のおっちゃんと宮廷魔道士長と近衛兵長か。

 一昨日の事件についてだな。

 何か判明したか?


「うん、わかった。リリーは皇妃様といてよ。黒服さん借りるね」

「うむ」


 リリーを皇妃様の元に残し、黒服とともにウ殿下について行く。


「精霊使い殿!」

「こんにちはー」


 魔道士長さんが首をかしげる。


「そちらは?」

「皇女リリーの従者だよ。すごく有能。リリーに聞かせられない話でも、黒服さんが知ってってた方がよさそーな話は多いだろうから」

「だからセバスチャンを伴ったのか」


 リモネスさんとウ殿下が頷く。

 皇妃様が狙われたのだ。

 ドーラにいるとはいえ、リリーがターゲットになる可能性だってなくはない。

 黒服が事情を知ってりゃどうにかするだろ。


「事件の続報なんでしょ? 何かあった?」


 近衛兵長さんが説明してくれる。


「証拠に繋がるものは何も出てきません。そして驚くほど何のリアクションもありませぬ。皇妃様がいつも通りということもあるのでしょうが」

「皇妃様、何であんなに元気なの? 全然普通じゃん。まだ体起こすのがやっとかなーくらいに思ってたんだけど」

「元々母上は頑健なのだ。昨日昼頃目を覚まして、腹がすいたとあのワイバーンの卵をほとんど一人で食べてしまった。今朝からはすっかり元通りの健康を取り戻した」

「マジか。さすが殿下とリリーの母ちゃんだけあるなー」

「ワイバーンの卵の滋養効果はすごいと、侍医が驚いてたぞ」


 滋養効果は高いんだろうけど、関係ないんじゃないかな?

 単に皇妃様が丈夫なだけ。

 でもあんまり皇妃様が普通にしてたら、呪術の効果がなかったんじゃないかと思われちゃうか?

 といってこっちから情報をリークし過ぎるのも良くないしな。


 ウ殿下が言う。


「ユーラシアはどうすべきだと思う?」

「いや、放っといていいよ。下手に動いて裏取られるとつまんないから。何もないことが一番だし、こっちが平然としてりゃ相手も気味悪く思うよ、きっと」


 皆が頷く。

 黒幕を特定することが第一義となるのならこっちから何らかのアクションを起こし、向こうのリアクションを期待する手もある。

 でも再び皇妃様を危険に晒すかもしれないしな。

 いや、次のターゲットがまた皇妃様とは限らない。


 魔道士長が聞いてくる。


「あの呪い、『舞踏の呪い』であろうが、正直参考になる資料がほとんどないのです。精霊使い殿が知っている情報があれば、教えていただきたいのだ」


 基本的なことは知ってるだろうから。


「魔道結界では呪いを遮断できないけど、効果の浸透を遅くはできるって。効果には距離、触媒アイテム、対象者関連の品、魔法陣の正確さが重要って聞いた」

「誰に聞いたので?」

「あたしを『舞踏の呪い』で呪った悪魔バアルだよ」

「「「「えっ?」」」」


 リモネスさんを除く四人が驚く。


「なかなか面白い悪魔だから飼ってるんだ。バアルもあたしのことを『吾が主』って言ってくれるの」

「悪魔の言うことなぞ、信用できるのか?」

「信用できない悪魔もいるだろうけど、うちの子達はウソ吐かないから大丈夫」

「ふむ、自分を呪った悪魔を飼うという発想が……」


 魔道士長が唸ってるけど、リモネスのおっちゃん笑ってますよ?


「ちなみにバアルが使ってた、ミッチェルの水晶ドクロのデカいやつがうちにあるんだ。対象者に縁の深い品さえあれば、こっちから呪うことも可能だからね」

「えっ、それは……」

「距離についてはどうなる?」


 おっ、ウ殿下冷静だね。


「ワープの使い手に協力させれば距離は無視できるって」

「なるほど、面白い……」


 バアルは無力だし、ヴィルは嫌がるだろうけどな。

 でもこう言っときゃどっかから話が漏れた時、こっちからの報復を恐れて行動を起こしにくいだろ。


「もちろん証拠もないのに呪う気はないけど、皇妃様がやられた以上に強烈に呪い返せるということは言っちゃっていいからね」

「あっ、そこも情報戦か!」

「どうやら二日経っても何も出てこないほど、敵もさる者みたいだから」


 この話は近衛兵辺りから黒幕側に漏れるんじゃないかな。

 しかし漏れたなら漏れたで構わないのだ。

 呪いの逆襲に脅えるがいい。

 リモネスさんが言う。


「おそらく最初からあの呪術師を使い捨てるつもりだったのでしょうな。首謀者に繋がる糸を全て断っておくことに心を砕き、呪殺が成功しようが失敗しようが呪術師の命で贖わせると」

「では、呪術師が生きて我らの手にある状況は、既に黒幕の思惑を外しているんだな?」

「御意」


 近衛兵長さん魔道士長さん、難しげな顔ですね?


「しかし……精霊使い殿の驚きの手法があってなお、手掛かりすら掴むことができぬのです」

「遺留品からも何もわからぬ」

「何とかならんのか!」

「いやあ、ムリ」

「ユーラシア!」


 ウ殿下怒ってるけど、ムリなもんはムリだぞ?


「リモネスのおっちゃんの言う通りだと思う。最初から証拠残さないことに全力出されてちゃどうにもなんないよ。仮に一段階上まで捜査が進められたとしても、切り捨てられる人が一人増えるだけなんじゃないかな。一番上まではとてもとても」

「くっ……」

「多分リモネスのおっちゃん対策だわ。この件について知ってるのは外部の人間で固めて、もう逃げ散っちゃってるんじゃないの?」


 皆さん残念そうだけど、暗くならなくたっていいと思うよ?


「これ敵さんは安全なところから不意打ちしてるんだよ? ノーダメージで反撃姿勢見せてるだけで大成功だって」

「ふむ、無念ではありますが……」

「……敵に緊張を強いていることで満足せいということか」

「そうそう。忘れちゃってもいいくらいだよ。皇妃様見習って能天気に構えてりゃ、向こうも癪だと思うし」


 黒幕側がやらかさない限り、これ以上追えないだろう。

 じゃあムダなこと考えて顰めっ面してるより、建設的なことする方がよくね?


「怖そーな顔してるより笑ってた方が、殿下には似合うよ」

「そ、そうか?」

「殿下ちょろいな」

「何だとう!」


 アハハと笑い合う。

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