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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第967話:悪魔との付き合い方

 塔の村からあたしん家に戻ってきて、ソル君パーティーと話す。

 ソル君達とゆっくり話すのは久しぶりだなあ。

 アンが言う。


「却って悪かったんじゃないか。ユーラシアさんに魔宝玉支払わせちゃって」

「いいんだよ。あたしも魔王を紹介してもらいたいからね。面倒なところばっかり受け持ってもらって、こっちこそごめんね」

「ところで『ウルトラチャーミングビューティー』って何ですか?」

「例の皇宮クエストでさ。帝国の首都メルエルの裏町に、名付け屋ってのがいるんだよ。そこで二つ名として付けてもらったの」

「気に入ってるんですか?」

「大いに」


 アハハと笑い合う。

 ソル君が真面目な目になる。


「……悪魔の扱い方についてなんですが」


 ソル君は悪魔との付き合い方が重要と見たか。

 請けてるのが魔王クエストだしな。

 ヴィルみたいないい子しか知らないと、一般の悪魔にどう接していいかわからないだろう。

 今日あたしがソル君達をウシ子に会わせたのも、他の悪魔に慣れてもらいたいと考えたからでもある。


「悪魔同士の関係って、基本的に上下しかないらしいんだよ」

「つまり屈服するかされるか?」

「そーゆーこと。悪魔は尊敬されたり承認されたりするのが好きなんだけど、悪魔同士は認め合ったりしないから険悪で、大体ソロ活動してる」

「一つの例外が魔王である。高位魔族を配下に持ち、その尊敬を勝ち得ているである」


 バアルの籠を取り出したら、吾を崇めるがよいって言う前に意見言い出したぞ?


「あのウシ子という悪魔も魔王の配下なんですよね? どうしてあんなところに?」

「魔王の近くにいてもメリットがないみたいなこと言ってたよ」

「魔王は人間に恐怖をもたらし、負力を集めて配下に分け与え充足させねばならぬ。しかるに現在の魔王は、そうした活動をしておらぬ。ザガムムのような離反者が出るのは仕方ないである」

「では、魔王とは恐怖の感情を得て配下を繋ぎ留めるために、人間と争わなきゃならない存在?」

「さようである」

「どえらい迷惑だなあ」


 古来何となく人類の敵とされてきた魔王だが、敵である理由があったんだなあ。

 ソル君がさらに聞く。


「でも現在の魔王は何もしてないんですよね。何故でしょう?」

「知らぬである。何かカラクリがあるはずである」

「その辺がクエストの内容なのかもねえ。あれ? ということはソル君達が魔王クエストをクリアすると、魔王が人類に敵対することもあり得るわけか?」


 一斉に顔を顰めるソル君パーティー。

 いや、わかんないからクエスト進めなよ。

 魔王が敵対するなんて一つの可能性に過ぎないし、おっぱいさんが不穏なクエスト寄越すとも思えないしな。

 アンとセリカが言う。


「とりあえずクエストを進めて情報を集め、事情を知るべきだ」

「賛成。知ってることが少ないと行動が縛られちゃうよ」

「ソール様、ユーラシアさん達が使用している飛ぶパワーカードを我らも入手し、魔王の居場所に行きましょう」

「うん、そうだね」

「パワーカードはマジックアイテムの類と干渉することがあるから、飛行カード使用中は注意ね。空中戦とかしない方がいいよ」

「了解です」


 ソル君達のレベルは高いから、仮に飛行中追いかけられたとしても振り切れるだろ。

 セリカが聞いてくる。


「ユーラシアさんがウシ子に最初から魔宝玉を渡して話し始めたのはどうしてですか?」

「正確な情報が欲しかったからかな」

「正確な情報、ですか?」


 ちょっとこの辺はあたしも掴みきれてないところなのだが。


「バアル、悪魔にとってウソは良くないことなんだよね?」

「自らの発言に責任を持たないなど、高位魔族にとって恥ずべきことである」

「うちのヴィルはいい子だし、バアルは誇り高き大悪魔だからウソなんか吐かないけど、全ての悪魔がウソ吐かないわけでもないみたいなんだ」


 これは最初にウシ子と会った時に知ったことだ。

 ウシ子は魔王様からこの塔を預かっていると言ったけれども、事実ではなかった。

 ウシ子は勝手に魔王の元を飛び出して塔に居ついただけだ。

 もっとも魔王配下の悪魔であるウシ子が最上階を占拠していたのだから、完全なウソとは言い切れないのだが。


「だから本当のことを聞き出したかったら、契約なり誓約なりで縛らなきゃいけないと思う」

「つまり対価を渡して情報を得る契約だったと?」

「うん」


 でないとウソではないまでも、曖昧なことを言われたりミスリードされることがあるのではないか?


「ねえバアル。契約や誓約に反したことする悪魔っているの?」


 首をかしげる大悪魔。


「……吾にとって契約や誓約を反故にするなどということは考えられぬであるが、そうした唾棄すべき行いをする高位魔族が絶無であるとは言い切れぬである」

「うん、ありがとう。だってよ? 参考になる?」

「もちろんです。……もしユーラシアさんが悪魔に契約違反のことをされたらどうしますか?」

「そりゃもうありとあらゆる手段を使って世界中に言いふらすわ。この悪魔契約も守らないぞー、こんな汚いことしやがったぞーって」

「身の毛もよだつ報復手段である。さすが吾が主である」


 バアルやウシ子と話していて気付いたことがある。

 人間の使い走りをするなど高位魔族の風上にも置けないという、バアルのセリフ。

 人間の僕に成り下がったという、ウシ子のセリフ。

 基本的に高位魔族は非常にプライドが高く、人間を下に見ているのだろう。


 悪魔は人間から悪感情を搾り取ろうとする。

 または可能ならば承認、賛美、尊敬されたい。

 が、格下の人間に恐れの感情もなく、ただ軽蔑されることにはおそらく耐えられないのではないか?

 図らずもバアルが『身の毛もよだつ報復手段』と評したことで、仮説の根拠が厚みを増した。


 ソル君が立ち上がる。


「ありがとうございました。オレ達は帰ります」

「うん、いい顔になったね。いやもともとソル君はイケメンだけれども。これ、お土産だよ。コブタマンのお肉と骨。骨は煮込むといいダシが出るから、スープにしてね」


 アンセリ大喜び。

 うんうん、お肉は絶対正義だからね。


「失礼します!」

「じゃねー」


 転移の玉を起動したソル君達の姿が掻き消える。

 これで魔王クエストも先へ進むんじゃないかな。

 次にソル君達に会った時、話を聞くのが楽しみだ。

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