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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第964話:四、五体に一体

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 ソロモコから帰宅後、灰の民の村で画集の代金を受け取ってから魔境にやって来た。

 一仕事終わった後は魔境だな。


「こんな時間にいらっしゃるのは珍しいですね? そろそろ昼食時ではないですか」

「今クエスト先でお肉をお腹一杯食べてきちゃって、体が重いの。運動がてら来ちゃった」

「ハハハ、今日も北辺で魔宝玉狩りですか?」

「いや、画集が売れたお金が少し入ってきたんだ。今後も定期的に入ってくる予定だから、すこーし懐に余裕ができたな」

「おめでとうございます」


 マジでめでたい。

 何故かあたしは稼いだだけ出ていく運命の下に生まれついてるようだから。

 無常な運命は変えないといけないな。


「今日はね、できればワイバーンの卵が欲しいと思って来たんだよ」

「ほう、明らかな卵狙いは珍しいですね。お土産用ですか?」

「うん。昨日、帝国の皇妃様が呪い殺されそうになったとゆー事件があってさ。ワイバーンの卵は栄養も豊富らしいから、お見舞いに持っていってあげようと思って」


 あれ、オニオンさん微妙な顔ですね?


「……今朝の新聞で、ユーラシアさんが有能な呪術師を帝国本土から連れてきたという記事がありまして」

「あっ、それそれ。呪殺未遂事件の実行犯のグロちゃんだよ」

「ドーラへ連れてきた経緯というのが、どうも記事からは不明で……」

「新聞記者が真偽の明らかでない記事を載せるわけにはいかないって言ってたんだよ。おかしな理屈であやふやな内容になっちゃったんじゃないかな」


 新聞記者ズも、グロちゃんを連れてきた経緯については詳しいこと聞いてこなかったしな。


「実際のところはどうだったんです? 結構フラストレーションの溜まる記事だったんですよ」

「読者にフラストレーションを溜めさせる新聞のあり方ってどーなんだろ?」


 ともかくオニオンさんに説明する。

 実行犯の呪術師を向こうに置いといても、黒幕を利するだけだからどうのこうの。


「ははあ、思惑を外すためにドーラへ、という側面があるわけですね?」

「まあね。カラーズ黒の民の村に置いてきた」

「呪術繋がりということですか」

「問題の呪術師もドクロが好きでさ。黒の民の村で歓迎されてたから、うまくやっていけるんじゃないかな」


 一人にしとくと、目の届かないところで黒幕の手先に害される恐れがなくもない。

 黒の民に紛れていた方が安心だ。


「奇想天外な展開ですねえ」

「まったく世の中不思議に満ちているよ」

「不思議の中心人物が言ってるなら間違いないですねえ」


 アハハと笑い合う。


「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよいい子出撃。


「姐御、今日はどうします?」


 最近魔境での探索すること自体が、うちの子達との貴重なふれあいの機会になっている。


「ヴィルのレベルが一つも上がんないのはつまんないんだよね」

「ウィッカーマンかシルバークラウンね?」

「うん。パラダイスまで飛んで少し人形系を倒して、西のワイバーン帯を急ぎで帰ってこよう」


 クララが首をかしげる。


「急ぎですか?」

「そろそろお肉のストックがないでしょ? 明日はカラーズと皇宮へお見舞い行ってくるから、肉狩りの時間なさそうなんだよね。今日魔境は早めに切り上げて、コブタマン狩ろうよ」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」

「じゃ、クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 びゅーんと飛んで北辺西、人形系レア魔物群生地帯へ。


「レッツ、パーラダーイス!」

「レッツ、パーラダーイスね!」

「レッツ、パーラダーイスぬ!」

「おっ、ダンテヴィル、やる気だね?」


 アハハと笑い合う。

 まあウルトラチャーミングビューティーのパーティーは、各種経験値君どもを目の当たりにすると血が滾るものなのだ。


「……前回来た時と比べて、増えている感じはしませんね」

「このくらいで平衡状態なのかもしれないな」


 何ってシルバークラウンこと謎経験値君の数がだ。

 今日ざっと見渡した感じでも、クレイジーパペット四、五体につき謎君一体の割合は変わらない。


「姐御、狙いはシルバークラウンの方で?」

「まだわかんないことあるからね。さほど意識しなくても戦えるだろうけど」


 具体的にはドロップにスーパーレアがあるか。

 自爆と逃走以外のアクションがあるか。

 そして……。


「自爆の確率ですよね」

「うん、知っとくことは重要」


 正直自爆を食らうの覚悟で特攻するなんて気が進まないのだが、最低でも四つの、レアの透輝玉が出れば五つの魔宝玉を得られることは大きい。

 自爆について調べられるのなんて、うちのパーティーだけだしな。

 知見を得ておくことは他の冒険者の安全に繋がる。


「よし、行こうか。ヴィル、『ド素人』と『デスマッチ』のカード持ち替えはこの前と一緒ね」

「わかったぬ!」

「三〇分くらい戦ったらワイバーン帯通って帰るよ」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


          ◇


 結局謎経験値君は二体を相手にし、自爆もされずに無事経験値と魔宝玉をゲットした。


「うーん、いいことなんだけど」

「物足りませんか?」

「お約束を外された失望感のようなものが、そこはかとなく漂う感じ?」

「マジックリーフをイートすればいいね」

「どこから魔法の葉が出てきた? わけわかんない」

「わけわかんないぬ!」


 アハハと笑い合う。

 苦難を味わいたいわけではないとゆーに。

 とゆーか謎君の自爆食らうより魔法の葉を食べる方が嫌。


「ま、レベルも上がったし、ワイバーン狩って戻ろう」

「姐御、ちょうどワイバーンが迷い込んで来ましたぜ?」

「おっ、珍しいね。ははーん、卵二つ落としてっちゃうフラグだな?」

「どこにフラグがあったね?」

「強引にフラグにしちゃう作戦だとゆーのに」


 ダンテがオペレーションとはって顔してるけど気にしない。

 レッツファイッ!


「やたっ! マジで卵二つドロップだ!」

「力技ですねえ」

「あたしがいい子だからこんなこともあるんだな」

「いい子だぬ!」

「よーし、ヴィルもいい子だぞ。ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 ヴィルの心地よさげな絶叫と笑い声がこだまする中、ワイバーン帯を急ぎ南進する。

 素材も拾っていかないといけないしな。

 忙しい忙しい。

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