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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第949話:モズ君西へ旅立つ

 フイィィーンシュパパパッ。

 お昼を食べてから魔境にやって来た。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 オニオンさんの機嫌がいいなあ。


「おっぱいさんとの進展あったの?」

「進展、というほどでもないですけれども、御家族の皆さんに認めていただいたのは大きいですね。順調です」

「やったね!」

「モズ君にもエールをいただきまして」


 おっぱいさんの弟さんか。


「弟さんはどうしてるのかな?」

「昨日の朝、西の塔の村へ旅立って行きました」

「あれ、もう冒険者活動を始めるの?」

「早い方がいいだろうということで」


 とゆーことは超急ぎ足なら今日の夜にでも到着か。

 まあでもそんなことはないだろうな。

 西域街道を歩く貴重な機会だ。

 数日かけて見聞を広めていくんじゃないかな。

 

「ギルドでパワーカードを買い揃えたんだ?」

「はい」

「オニオンさんがアドバイスしたんでしょ? どんな編成?」


 オニオンさんの考えがわかるのはちょっと楽しみだ。

 わくわく。


「『風の杖』『ホワイトベーシック』『武神の守護』『セイフティローブ』『マジシャンシール』の五枚です」

「うわ、思い切ったねえ」

「マウさんにもアドバイスをいただきまして」


 完全に後衛の編成だ。

 『風の杖』『ホワイトベーシック』の装備で風属性攻撃魔法『プチウインド』、回復魔法『ヒール』、状態異常治癒魔法『キュア』の三種の魔法を使える。

 しかも魔法力補正のあるカードが四枚もある。


 モズ君はレベル二で、魔法力が割と高かった。

 威力の高くない『プチウインド』でも、二、三発も撃てば弱い魔物なら倒せそう。

 つまり入り口フロアならソロでもイケるということだ。

 腕慣らしをしながら少しずつでもレベルを上げ、知り合いを増やしてきゃいい。

 回復魔法を使える後衛職なんだから、いくらでもパーティーに参加してくれっていう引きはあるだろ。


「どう思われます?」

「ビックリした。でもいいと思う」

「ありがとうございます」


 ホッとした表情のオニオンさん。


「『火の杖』じゃなくて『風の杖』のところがいいねえ。スライムに火魔法使うと『スライムスキン』が変質しちゃって取れないんだよ。風魔法なら上手に当てりゃオーケーだな」

「え? ワタクシ素材の視点はなかったですけれども」


 レベルの低い内の収入に関わるからね。

 オニオンさんは序盤に苦労しがちな、飛行魔物に対する有効性を重視したんだろうけれども。


「近い内に塔の村行ってみるよ。タイミング良ければ会えると思うし」

「よろしくお願いします」

「さて、おゼゼ稼がないと。帝国の商人さんに会わせてもらったんだ」

「貿易商ですか?」

「うん。画集の注文二万部受けた。でも版画屋さんに追加発注したらサイフ軽くなっちゃった」

「画集もついに輸出、しかも二万部ですか? それはすごいですね……」

「おっぱいさんが世界的に有名になっちゃうんだよ」

「実に困りますね」


 アハハと笑い合う。

 気持ちいいくらい予定通りなのだ。

 皆が協力してくれるしな。

 きっとあの画集は、世界で一番売れる本になる。


「行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊出撃。


「姐御、ヴィル呼んでませんぜ」

「あ、そーだった。ヴィルカモン!」


 素で忘れてたぞ?

 懐が寒いと余裕がなくなるな。


「今日はどうしますか?」

「おゼゼ稼ぎたいから魔宝玉優先かな。謎君の謎をもう少し解明しておきたいんだ。北辺まで足延ばそう」

「シルバークラウンね」


 ダンテは拘るなあ。

 あ、来た。


「御主人に呼ばれてジャジャジャジャーン! ヴィル参上ぬ!」

「よーし、いい子だね」


 ぎゅっとしたろ。

 一応ヴィルとカード装備の確認をする。


「この前と一緒だよ。ウィッカーマン戦と謎経験値君戦には『デスマッチ』を、それ以外の人形系戦には『ド素人』を装備してね。普通の魔物相手の時は両方装備しないこと」

「はいだぬ!」

「シルバークラウンね」


 ダンテは意外としつこいなあ。


「足並み揃えてしゅっぱーつ!」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


 素材を回収しながら道なき道を北へ行く。

 何にも遭わずにドラゴン帯まで来たぞ。

 珍しいな。


「グリフォンがいるね」

「寄ってきやしたぜ」

「なかなかいい子だね。おーい!」


 挨拶したらくおっと返してくれた。


「ちょっとモフってくる」

「「「「えっ?」」」」


 大丈夫だぞ?

 グリフォンに近寄ってモフー。

 全然嫌がらないな。

 うむ、身体に近いところの羽毛が、でっかい鳥の魔物なのにすごく細かくて柔らかい。

 冬羽だからか?


「暖かいなあ。なるほど、これは布団の素材として珍重されるわ。ありがとうね。人形系を倒したらあげるよ。待ってなさい」

「くおっ!」


 うむ、話が通じると可愛いもんだ。


「ちょうどデカダンスがアピアーしたね」

「よし、魔宝玉で経験値でエサだね」

「魔宝玉で経験値でエサだぬ!」


 アハハと笑いながら倒してグリフォンにやる。

 おいしそうだ。

 和むなあ。


「あたし達は行くよ。じゃあね」

「くおっ!」


 名残惜しそうな鳴き声だなあ。

 グリフォンと別れて北へ。

 パラダイスを目指す。


「普通に意思の疎通ができますねえ」

「可愛いよね。そろそろ羽毛をもらいたいけど、どうしたらいいかな?」

「デカい櫛ができ上がってきてから考えりゃいいんじゃないでやすか?」

「まあね。でもあんまりデカい得物を取り出すと、グリフォンが警戒しちゃうんじゃないかと思うんだ」


 せっかく仲良くなったのに、嫌われるのは避けたい。

 もうちょっと馴らしてからの方がいいかも?


「ビッグサイズ過ぎると、フェザーをナップザックに入れにくいね」

「あるあるだなー。一応フェイさんにこうして使うって説明はしてあるから、試作品を使ってみての判断だな」

「私もそう思います。大きさ肩幅くらいの目の粗い櫛であれば、グリフォンも気持ちいいのではないでしょうか?」

「うーん、あたしも粗い目で注文したけど、今見た感じだと羽毛はえらく繊細なんだよね。細かい目の方がよかったかもと思ってる」

「細かい目だと引っかかりやすいですぜ。グリフォンも嫌がるんじゃねえでやすか?」

「ラフな目でゴッソリフェザーね」

「案外考えることが多くて難しいな。マジで使ってみないとわからん」


 そもそも櫛自体を嫌がるんだとどうにもならんしな。

 さらに北へ。

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