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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第948話:あたしの秘策

「ケスとハヤテを塔の村の皆に紹介するというのは、考えたことがなかったな……」

「必要じゃなかったからね」


 アレクの理屈もわかる。

 カラーズの商売相手として現在重要なのは、一にレイノス、二に移民だろうからな。

 塔の村へは時々デス爺が野菜を買っていくくらいで、大きい商売にはなりようがない。

 向こうで作物が収穫できるようになったり、近隣の自由開拓民集落との交易が活発になったりしたら、用なしになるくらいの規模だ。

 しかしアレクケスハヤテにとって、塔の村はプラスになることが多い。


「エルとの間をハヤテに取り持ってもらえるじゃん?」


 うちの子達がそれは言わない方がって目で一斉に見てくるけど。

 ケスが聞いてくる。


「姐さん、エルって誰だ?」

「塔の村の精霊使いだよ。アレクの思い人でもある」

「「えっ!」」


 驚くケスとハヤテ。

 ハッハッハッ、面白くなってきたぞー。


「アレク、好きな人がいるなら言ってくれよ」

「そうだべ!」

「わざわざ言うほどのことじゃなかっただけだよ」

「今までは言うほどのことじゃなかったかもな。アレク、あんたの恋のライバル、ピンクのモジャ髪の男ケンの存在は知ってる?」

「知ってる。ケンさんだったのか、エルさんにモーションかけてるっていうのは」


 考えるような表情になるアレク。


「ケンってのが邪魔者なのか?」

「おお? ケスがビックリするほど真っ直ぐ来たぞ?」

「ケンさんは塔のダンジョンの案内役みたいなことを進んでやってる人なんだ。お爺様もすごく感謝してた」


 あのモジャ男はパラキアスさんのスパイだけどな。

 デス爺は当然それと知ってるはずだけど、アレクには話してないみたいだ。


「あたしの見たところ、エルとの相性はあのモジャ男とアレクでイーブンなんだ。つまり遠隔地で年少の分だけアレクは不利」

「……」

「なので、アレク君にミッションを授けまーす。ケスもハヤテも協力するんだよ?」

「「おう!」」


 大乗り気だ。

 ラブい話は傍から見てて娯楽だからな。


「スキルスクロールを量産したいんだ」

「「スキルスクロール?」」


 アレクはサイナスさんからある程度聞いてるんだろう、驚きはないようだ。

 しかしどうしてここでスキルスクロールが出てくるんだ、って顔をしている。

 説明しよう。


「……って何だ?」

「そこからかい」


 いや、ケスやハヤテに馴染みのあるもんじゃないか。

 アレクが説明する。


「魔法やバトルスキルが封じられていて、開封することによってスキルを習得できるという、使い切りの巻物だよ」

「魔法を覚えられる!」

「すごいだべ!」


 おー、コーフンしてるねえ。

 わからんでもないが。


「アレク、サイナスさんにどこまで聞いてるかな?」

「ユー姉が帝国に輸出するための魔法を考えている。しかし今のドーラじゃ量産できないから、ボクをこき使おうとしている、と」

「何でサイナスさんはいらんこと言うのかな? アレクとエルを結びつけようとするあたしの姉心が、ちっとも表現されてないじゃないか」

「エルさんどうこうの方が後付けの理由なんだろう?」

「正解」


 大笑い。


「ケスやハヤテは残念かもしれないけど、攻撃魔法みたいなのを量産して売りつけようっていうんじゃないんだ。今帝国から大量に注文受けてるのは、水を作る魔法」

「「「水?」」」


 かくかくしかじか。

 三人に説明する。


「……なるほど、飲み水ばかりでなく旱魃にも有効な可能性か」

「レベルがある程度あるなら、訓練された『プチウォーター』の方が上だけどさ」

「誰でも使える汎用性を重視してるんだね?」

「便利だべ!」

「うん。ただこの魔法を作った魔道士に任せとくと、月に一〇〇本も作れないんだ。しかもその人がスクロール生産にかかりっきりになると、新しい魔法を組み立てるっていう稀有な能力が潰れちゃうから……」

「別なところで量産したいんだな。よくわかったぜ」


 わかっていただけたようだ。


「術式の書き込みは版作っといて刷ればいいじゃん?」

「問題は空のスクロールということだね。でも……」

「質問があれば受け付けようじゃないか」

「これはボクのラブシチュエーションと何の関係が?」

「おお、ケスかアトム辺りが突っ込んでくるかと思ったのに、自分で来たね。要は塔の村に行く用事が増えれば、エルとの絡みも増える理屈でしょ? 空スクロールはデス爺だって絶対に興味があるなんだよ。製作の打ち合わせに行くなり注文を取りに行くなり、アレク達が塔の村に足を運ぶ機会は確実に増える」

「そうか、そうだね」


 アレクの顔にも赤みが差してくる。


「で、もう一つ策があるんだ。これ自分で頼もうかと思ってたけど、アレクに任そうかな」

「何?」

「転移装置が欲しいんだよね」

「「「「「「!」」」」」」


 あたしの秘策を説明しよう。


「アレクの方が詳しいと思うけど、スクロール用紙には世界樹を漉き入れればいいと考えてるんだ。でもあたし、魔境世界樹エリアには飛べないんだよ。そこでエルが使ってるデス爺製の転移の玉と、転移先ビーコンのセットを作ってもらうでしょ?」

「ビーコンを行きたい場所に置いてこなきゃ話にならないじゃないか」

「うちにはヴィルがいるから」

「「「「「「あっ!」」」」」」


 うちの子達まで含めて全員が驚いたあたしの秘策。

 そう、ヴィルにビーコンを運んでもらえばいい。

 つまりヴィルの行けるところならどこへでも転移できるようになる理屈だ。


「姐御、そりゃあすげえ!」

「ファンタスティックね!」

「ハッハッハッ、才能が溢れてノンストップだなー。ちなみに玉やビーコンに使えそうな黒妖石もあるから、必要なら教えて」


 以前掘り出し物屋さんで購入した掌サイズの黒妖石をようやく使える。

 ムダにならないですんだなー。


「ユー姉、ボクも塔の村とここを行き来する転移の玉が欲しい!」

「自分で気付いたかー。じゃ、アレクの分の黒妖石も提供しよう。エルに会いに行くばかりじゃなくて、ケスが使いたい時は貸してあげるんだよ?」

「もちろんだよ」


 塔の村とここ灰の民の村には、デス爺の使ってるビーコンがあるはずだ。

 行き来に問題はない。


「デス爺に頼んで、黒妖石が必要になる段階になったら教えてよ」

「わかった」

「じゃ、あたしは帰るね。諸君の健闘を祈る!」

「「「おう!」」」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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