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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第947話:おゼゼで埋めればいい

「どーしてあたしからはいつもおゼゼが逃げてくんだろうな? まったく謎だぞ?」


 緑の民の版画屋に画集二万部の追加発注と納入先を告げての帰り道だ。

 版画屋さんをはじめ緑の民一同は大喜びしてたけど。

 アトムが言う。


「いつも注文時に先払いしてるからですぜ?」

「ウルトラチャーミングビューティーとしては、そんな当たり前の答えを待ってるんじゃないんだなー」


 サイナスさんが笑う。


「ハハハ、いい女には金がかかるものなんだろう?」

「うーん、一応合格点の回答なんだけど、使い古された表現かな。もうちょっとこう、乙女の心を震わせる何かない?」

「メイビー、ボスはこれからもずっとマネーがアウェイね」

「ダンテのいけず! 別の意味で心が震えるわ!」


 アハハと笑いながら灰の民の村へ。


「画集は絶好調じゃないか」

「大体想定通りの売れ加減だね」

「えっ……いや、君はメチャクチャ売れるって言ってたか」

「過去ないくらいの売れ行きにはなるね。帝国での売れ行きを伸ばすために販促したいけど……」


 もっと積極的に帝国へ行って、商売関係の知り合いを作るべきか。

 これも偉い人に紹介してもらった方が早いんだけどな。

 リリーかプリンスか貿易商ベンノさんの伝手を辿る手はあるが。

 ま、二万部も注文が入ってるのだ。

 焦ることはなかろう。


「最近あの子達はどうしてるかな?」


 あの子達とは当然アレク、ケス、ハヤテを指す。

 前途もやる気も能力もあるいい子達だ。


「文字を覚えるシリーズ第二弾、嵌め込みゲームの試作品の投入時期を計っている段階だろ。この前輸送隊でレイノス行った時に、ヨハン氏に試作品を見せてきたようだから」

「ふーん、やるなあ」

「投入は遅くていいんだろう?」

「うん。第一弾札取りゲームの方、しばらくは輸出分を全力生産だろうからね」


 職人さんの手が足りない時に商品ラインナップを増やそうとまでは思わない。

 需要が落ちてきたら新作を投入すればいいのだ。


「まだ企画段階の計算ゲームも『美少女精霊使いのドラゴンを倒す旅』もあるし、先々楽しみだねえ」

「最初に考えてた双六のことか? タイトルはそれでいいのか?」

「『ウルトラチャーミングビューティーのドラゴンを倒す旅』、略称『ウルドラ』の方がいい気はしてるんだ」


 ドラゴン双六もレノアの持っていた本『輝かしき勇者の冒険』が売れるくらいなら、帝国ではヒットするとは思うのだ。

 ただやっぱ識字率が高いと低いとでは、全然売れ行き違っちゃうからな。

 投入は遅い方が数は売れるだろうけど、ああいうゲームの需要を掘り起こしといた方がいいという考え方もある。

 双六もバリエーションが色々考えられるからだ。

 その辺はアレクも考えてそう。


「オレはショップを見ていくからここで」

「じゃーねー」


 サイナスさんと別れ、灰の民の村の図書室へ。


「こんにちはー。ウルトラチャーミングビューティーがやって来ましたよ!」

「ユー姉!」「姐さん!」「ユーラシアさん!」

「何だあんた達は。そんなにあたしが恋しかったのか」

「集めてた素材がかなりの量になったんだ。買い取っておくれよ」

「理由が現実的だったわ。クララ、査定お願い」

「はい」


 通常の買取価格で購入。

 そのままの価格でアルアさんに売れば、交換ポイント分だけ得できるなあ。

 輸出用のパワーカードを注文してる関係で、素材の数も欲しいところだしな。

 ありがたし。


「輸送隊や商売は順調?」

「順調だ!」

「特に問題はないよ」

「札取りゲームは? 資金足りてる?」

「サイナスさんに出資してもらってるんだ」

「ムリのない程度だでよ」

「いいよいいよ。自分だけ儲けてると嫉妬されるけどね。儲けを分ければ皆が協力してくれるから」

「商売の基本なのか?」

「ウィンウィンってやつだよ」


 アレクは変な子で灰の民でも孤立しがちだし、ケスとハヤテに至っては他所者だ。

 何かと色眼鏡で見られることもあるだろうが、札取りゲームが売れることで自分達が潤うとなれば、悪い気のするはずがない。

 それは灰の民が商売にさほど熱心じゃないとしてもだ。


「人と人との隙間はおゼゼで埋めればいいんだよ」

「ユー姉は偽悪的なことを言わなければいいのに」

「正直だから、つい口に出ちゃうわ」

「姐さん、明け透けに言うことも大事なのか?」

「えっ? 今みたいに真正面から来られると、ウソ吐きたくなっちゃうけれども」


 アハハと笑い合う。

 あたしは腹の探り合いも嫌いではないけど、普段からそんなことばかりしてると腹が減るわ。

 じゃなかった、腹が黒くなるわ。


「ところでアレクとケスが輸送隊の当番でいない時、ハヤテは何やってるの?」


 これは前から聞きたかったことではある。


「森にいるかこの図書室にいるか、どちらかだべ」

「勉強家で偉いね。図書室で知識を得ることも大事だけど……」


 ハヤテは商売に興味があるらしい。

 しかし精霊特有の人見知りは、商人としては割と致命的なんだよな?

 『精霊の友』ばかりの海の王国にはいずれ紹介するとしても、他で活躍できる場面は少ない気がする。


 アレクが聞いてくる。


「ハヤテを魚人やエルフに紹介してやってよ」

「海の王国にはいずれ連れていくね。でもエルフはなー。精霊親和性がノーマル人より全体的に高いことは事実なんだけど、精霊と自由に喋れるほどじゃないんだ」

「そうなんだ? 知らなかったよ」

「森エルフはだよ? 洞窟エルフは、あたし達も会ったことないからわかんないけれども」


 一般的にエルフは精霊親和性が高いと思われてるからな。

 クララが言う。


「塔の村とのコンタクトをハヤテに任せるのはどうでしょうか? 転移できるのはハヤテの優位なポイントです。生かすべきだと思います」

「それだっ! クララ偉い!」

「えへへー」


 独特のフニャっとした笑顔を見せるクララ。


「ハヤテとケスはデス爺知ってるんだっけ? 塔の村の村長」

「ハゲだべ? 知ってるだ」

「知ってる」

「塔の村へ行ったことは?」

「「ない」」

「デス爺に三人で時々塔の村へ連れていってもらいなさい。間違いなく勉強になるし、人脈も増える。ハヤテは自由に塔の村に飛べるようになるなら、メッセンジャーも運び屋も務まるよ。札取りゲームを向こうに卸してもいい」


 販路の住み分けについては、ヨハンさんと確認しなくちゃいけないけれども。

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