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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第946話:仮面のレプリカ

 ――――――――――一七三日目。


「かなりわさわさってなってる」

「わさわさっとしてますねえ」


 あたしとクララの言語中枢が衰えたわけではない。

 あたしん家から灰の民の村に至る道の途中、湧き水のところで魔境クレソンの生育具合をチェックしているのだ。

 まだ冬で寒いのにこんだけ育つって偉いなあ。


 夏になると食べきれないほど増えそうではある。

 けど水辺以外には広がらないみたいだから、問題はないだろ。

 大量移民初年度である今年の食料として大活躍してくれることだろう。

 

「これもう食用にしていいと思いやすぜ?」

「ランチね?」

「少し摘んでいこうか」


 以前フェイさんに作ってもらった、聖風樹の小箱をナップザックから取り出す。

 本来はマンティコアがドロップする凄草の鮮度を落とさないための工夫だが、マンティコアなんてしょっちゅう遭えるものでもないしな。

 クレソンの鮮度を落とさないために使ったっていいじゃないか。


「さて、行こうか」


 灰の民の村へ。


          ◇


「サイナスさーん、こんにちはー」

「いらっしゃい。よく来たね」


 灰の民の村に到着。

 今日はまだサイナスさんがショップの方に出ていなくて家にいた。


「お土産のお肉だよ」

「いつもすまないね。これって焼き肉親睦会や移民肉祭りの時のと、同じ肉なんだよな?」

「うん、コブタマンの肉だよ」

「脂の乗り方が適度で、大変に美味い」

「だよねえ。サイナスさんわかってる!」


 調理法が難しかったり限定されたりするお肉もあるが、コブタ肉は煮ても焼いても美味い万人向けのお肉なのだ。

 クセもないし、誰がどう調理しても大体オーケーとゆー素晴らしさ。

 しっかり脂が乗っているところもいい。


「第二弾の移民が来たら、もう一度肉祭りやろうか。あと六、七日だと思うけど、それまではお肉足りそう?」

「問題なさそうだよ。しかし各村の調理班には問題がある」

「え?」

「結構な作業量で、朝から晩まで半狂乱だったとの話だが」

「知らんがな」


 クララレベルの必殺仕事人が五人もいれば三〇分もかからないのだが。

 まあ望むべくもないことか。

 クララの解体はヤバ過ぎる。


「じゃあこまめに現地へ持っていく方がいいか」

「君はお祭り好きだろうけど、そうしてくれた方が各村の精神衛生のためだな」


 望まれているなら。

 各村の調理班を苦しめるのはエンタメじゃないしな。


「アレク達は図書室にいるかな?」

「ああ」


 スキルスクロール量産についてアレクの意見を聞きたいのだが。


「……先にお面と緑の民の村の用をすますべきだな。行ってくるね」

「ああ、オレも行こう」

「え?」


 何ぞ?

 ただのあたしの注文だぞ?


「オレも仮面を見たいんだ。バアルのお宝なんだろう?」

「お宝だと見たくなっちゃうのか。まったくサイナスさんったら俗物なんだから」

「ひどい言われようだ。見るくらいいいじゃないか」

「悪いとは言ってないけど、物好きだなー」

「ユーラシアは写しを作って被ろうとするくらい物好きだからな?」

「反論の余地がないわ」


 アハハと笑いながら、緩衝地帯へ出発。


          ◇


「フェイさーん、こんにちはー」

「おう、精霊使いユーラシアよ。サイナス族長までいらしてくれたか」


 緩衝地帯の黄の民のショップへ来た。


「お面できてるかな? 取りに来たよ」

「うむ、作らせたのだがな……」


 何だ?

 こんな自信なさそうなフェイさん初めてだな。


「これだ」

「おーありがとう! 上等上等!」

「しかし……オリジナルの生き生きした表現を再現することはムリだった。すまぬ」

「え? 芸術作品を作ってくれって言うんじゃないんだから、構わないよ」


 何だってばよ?

 ただレプリカ作ってくれって頼んだだけなのにな?

 あれ、サイナスさんまでオリジナルの面を食い入るように見つめてるけど。


「……ここまで素晴らしい仮面だったのか」

「皆、何なん? いや、確かにこれ、お宝って触れ込みだけど」


 バアルによればだが。

 由来すら不明のものだからね?


「これは何に使うのだ? 場合によっては作り直させてもらうが」

「大したことじゃないんだけど」

 

 ソロモコという未開の島国へのクエストが出た。

 ソロモコの人達とコミュニケーションを取るためには、仮面が必須であることを話す。


「なるほど、異国で被るのか。この出来の悪いレプリカが衆人の目に晒されてしまうとは、なかなかに耐えがたいことであるな……」

「いや、ユーラシアがオリジナルを、精霊達がレプリカを身に着けるのであれば、主従の関係がわかりやすく、却っていいことだと思いますよ」


 サイナスさんの助け舟に、フェイさんの苦渋の表情が和らぐ。


「そう言ってもらえるとありがたいが」

「いや、フェイさん。これで十分だよ?」


 単に向こうさんに失礼に当たらないようにって、設えただけだからね?

 ソロモコの住民が実際に被ってたお面は、あたしでも荒っぽいとわかるくらいのやつだったわ。

 この仮面レプリカなら全然オーケーだと思うわ。


「このお面、フェイさんやサイナスさんが唸るくらいすごいものなんだ?」

「相当なものだよ」

「この面単体だとわかりづらいが、レプリカと比べると際立った美しさがあるな。どこで手に入れた仮面なのだ?」

「『アトラスの冒険者』のクエストでなんだけど、おそらく漂流物なんだ。ドーラの東の方の人跡未踏の海岸に、革袋に入って打ち上げられてたんだって」


 頷く二人。


「正体不明の面か。しかし少なくとも、この面を装着していて失礼などと思われることはあり得ぬ」

「オレも同感だ。面自体の出来もだが、太陽のような存在感と奥深い慈悲深さを感じさせるよ」

「何それ、あたしに相応しいお面じゃん」


 アハハと笑い合う。

 ともかくこの面を被ってりゃ失礼ではないそーな。

 ようやくソロモコクエストを先に進められそうだな。

 あたしにとっては、ソロモコ人とコンタクトを取ることこそが重要なのだ。


「ありがとう、フェイさん。そーだ、櫛を作って欲しいんだった」

「櫛? どんなやつだ?」


 グリフォンに使いたい、目が粗くて大きさがこれくらいであんまり怖そーに見えないやつをうんぬんかんぬん。


「櫛よりも熊手に近いような大きいものだな。堅くて緻密な木がいいだろう。三日後納期の三〇〇ゴールドでどうだ?」

「うん、お金払っていくね」

「おう、ではさらばだ」


 黄の民のショップをあとにする。

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