第943話:チトー君加入
パーティー全員が『経穴砕き』を習得するべきという意見に、ジーク君とレノアビックリ。
「人形系ハンターユーラシアのパーティーの強欲なセオリーだぜ」
「強欲ってゆーな。塔の村の冒険者の間では当たり前の考え方なんだぞ?」
「複数現れても一ターンで両方倒す、ヒットポイント二の人形系が現れても倒すってことだぜ。人形系はすぐ逃げちまうんだ。倒せる機会があったら貪欲に狙うべき。それだけの見返りはある」
ジーク君の険しい顔とレノアのギラギラした目が対照的だなあ。
いずれ早い段階で、ジーク君とレノアはともに『経穴砕き』を習得すべきだとは思う。
「しかし問題になるのはレノアの『吝嗇』じゃ。最初から『経穴砕き』を二本揃えてレノアの通常火力を大きく落とすよりも、二ダメージ与えねばならぬ稀な機会は捨てて一本だけ買っておくべきと思う」
「あたしも賛成。二人の内どっちが先に習得しても問題はないと思うよ」
よーく考えてください。
「こんにちは」
「よう、チトー。混ざれよ」
「ありがとうございます。失礼します」
以前ボニーが強草の依頼をしくじっちゃった事件の時に、凄草と強草を交換してくれたチトー君でした。
「チトー君はギルドに慣れたみたいだねえ」
「ユーラシアさんに弄っていただいたおかげです」
「おい、弄られたの感謝するやつ初めてじゃねえか?」
「本当だ。チトー君は実に見どころがあるな」
アハハと笑い合う。
「チトーは『長者』持ちなんだろ」
「はい」
魔物を倒した時のドロップ確率と、おそらくレアドロップ率も上がる、非常に羨ましい固有能力だ。
ラルフ君パーティーのアーチャー、ウスマン君と同じやつ。
「ピッタリだと思ってるんだろ?」
「え? あたし達の魔境のお供に?」
「違えよ! ジークレノアのパーティーメンバーとしてだよ!」
「まあ思ってはいるけど」
チトー君の『長者』で魔物からのドロップ率レアドロップ率が上がることは、レノアの『吝嗇』とすげえ相性がいい。
戦力の底上げに繋がる。
でも最近のチトー君の活動状況知らないしな。
それに……。
「チトーは最近どうなのじゃ?」
「はい、あちこちのパーティーに誘って貰っていますが、どうしてもレベルの高いパーティーですと、オレの固有能力だけしか目に入ってないようで」
「おいユーラシア、ドキッとしたろ?」
「何で? あたしがチトー君の固有能力だけしか目に入ってないから?」
「ズバッと言うな!」
「ズバッと言うぬ!」
大笑い。
「チトーは、この二人のパーティーメンバーとしてやっていく気はないか? レベル的にはちょうど良いと思うが」
マウ爺も賛成か。
条件的にはいいんだが。
「おい、あんた反対なのかよ?」
「うーん、揉めちゃうんじゃないかと思って」
「揉める? 何故?」
「取り分でさ」
チトー君の『長者』でドロップレアドロップが増えるなら、レノアのパワーアップに直結するだろう。
また支援型の能力であるジーク君にとっても前衛が増えるのは望ましい。
が、一方で収入の取り分を考えるとどうか?
レノアの取り分を大きくするほどパーティーとして強くなるが、チトー君が面白くないだろう。
ジーク君とレノアの取り分はどんぶりとしても、チトー君の扱いはどうする?
「まーパーティーのケンカ別れって、大体収入のトラブルでしょ? 揉めるの目に見えてるのにパーティー組めとは言えないかな」
「……難しい問題だヨゥ」
「レノアと二人ならジーク君がサイフ握ってりゃいいけど、三人になるとそうもいかないじゃん?」
使用人がメンバーのダンのところやうちのパーティーでは、そもそもリーダーの方針が通らないなんてことが起きない。
でも普通は重要な問題なんだよなー。
「……つくづく難儀だな、『吝嗇』は」
「うーん、取り分の問題は『吝嗇』関係ないと思うけどね」
「キッチリ三等分でいいのではないか?」
「いや、オレは取り分少なくても構わないですよ」
何ですと?
職業冒険者らしくない発言だな。
「パーティーが強くなるためという理由があるじゃないですか。強くなればレベルアップも早いですし、クエストもどんどんこなせますよね? となれば分け前の割合が少なくても、実収入は多くなる理屈じゃないですか」
「おおお? できるやつだなチトー君は! これあげる」
ナップザックから斧を取り出す。
唸るマウ爺。
「ほう、相当な業物じゃな」
「バアルのクエストで得たやつなんだ。攻撃力上昇率も高いけど、会心率もかなり上がる。武器に付与された属性エンチャントマジックの効果が高くなるって。チトー君は身体デカいから似合うでしょ」
「おい、いいのか? バアルのお宝は、高レベルの冒険者に使ってもらう方針じゃなかったのかよ?」
「そーゆー方針だったけど、チトー君はできるやつだから先行投資することにした!」
「い、いいんですか?」
「構わないからもらって」
「遠慮せずもらっとけよ。ユーラシアは気前がいいからな」
「気前『も』の間違いだろ」
おっかなびっくり斧を受け取るチトー君。
「あっ、思ったより軽い?」
「ミスリルの含有量が多いのじゃろうな」
「ありがとうございます!」
「いいんだよ。でも精霊使いユーラシアの目が曇ってたなんて、誰かに言わせたら許さないぞ?」
「はい、頑張ります!」
「よろしく頼むヨゥ!」
「よろしくお願いしますっ!」
「こちらこそ!」
よーしめでたし!
腹も膨れたし、帰ろうかな。
「あっ、師匠! ヴィルちゃんをぎゅーさせてくださいっ!」
「いいよ」
「いいぬよ?」
「ぎゅー!」
「……うーん? まあまあだぬ!」
その反応は珍しいね?
シスター・テレサの時と似てるかな?
「ポジティブなところは評価できるぬ。でもがっつき過ぎだぬ。精進するといいぬ」
「はっ、ありがとうございますっ!」
「おい、御主人。何だよ今のは?」
「悪魔が人物を評するのかヨゥ?」
「ぎゅーするとダイレクトに感情を得られるみたいなんだ。ヴィルは好感情好きだから、一家言あるんだよね」
グルメ評論家みたいだな。
「がっついてるのは御主人も一緒だろ?」
「御主人は心が広いし、愛情も深いんだぬ! 一緒にしてはいかんぬ!」
「よしよし、ヴィルはいい子だな。ぎゅー」
「ふおおおおおおおおお?」
よかったね。
今日は特別に愛情を一杯込めたったぞ。
転移の玉を起動し帰宅する。




